アレオパゴスの祈り
アレオパゴスの祈り 2016年 8月 6日
日本のカトリック教会は、「主のご変容」を祝った今日から、8月15日の「聖母の被昇天」の祝日まで、平和のために祈り、学び、行動する期間として、「平和旬間」を過ごします。この間、広島、長崎への原爆投下、そして太平洋戦争敗戦を思い、亡くなった方々の永遠のご安息と、今もなお、戦争での悲惨な体験によって苦しんでおられる方々のために祈ります。今、新聞やテレビなどで、世界の平和がおびやかされ、海外だけではなく、日本でも弱い人々の命がないがしろにされている事件が、報道されています。
聖ヨハネ・パウロ二世は、使徒的書簡『おとめマリアのロザリオ』の中で、ロザリオの祈りの大切さとともに、ルルドとファティマで聖母がご出現されたとき、世界の人々の回心と世界の平和のため、ロザリオの祈りを唱えるよう勧められたことを強調しておられます(使徒的書簡『おとめマリアのロザリオ』No.7参照)。 今日は、8月15日に祝う「聖母の被昇天」を思いめぐらしながら、世界の平和のために祈りましょう。
わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人々を父である神の御手にゆだねて、しばらく思い起こしましょう。
(沈黙)
お祈りしたい意向を心の中にたずさえて、ローソクをささげましょう。後ろでローソクを受け取り、祭壇にささげ、席にお戻りください。
ここに集まったわたしたちが、この祈りの時間をよく過ごすことができますように主の恵みを求めて、歌いましょう。
『カトリック聖歌』No.225「せいれいくだりませ」① ②
「聖母の被昇天」とは、「原罪から守られて生涯を送った聖母マリアが、その人生の終わりに、肉体も魂もともに天国にあげられた」という教義です。1950年に、ピオ12世によって正式に宣言されました。聖書にはその記述はありませんが、教会が何世紀にもわたって大切にしてきた伝承です。
聖母の被昇天を黙想するために、ロザリオの祈りによって救われたルワンダ人の女性、イマキュレー・イリバギザ氏の言葉をご紹介しましょう。1994年、多数派のフツ族によるツチ族の大虐殺が起こったとき、彼女は大学生でした。隣人や友人だったフツ族から襲われ、彼女の家族も惨殺されてしまいます。100日間で100万人のツチ族が虐殺されました。大鉈やナイフを持った殺戮者(さつりくしゃ)が「皆殺し」を叫び、生き残りを探す中、プロテスタントの牧師の家にある狭いトイレに7人の女性と身を隠し、彼女は奇跡的に生き延びました。迫り来る恐怖と空腹に耐え、彼女を支えたのは、父親から教えられたロザリオの祈りでした。彼女は、著書『薔薇の祈り ルワンダ虐殺、ロザリオの祈りに救われて』(2015年、女子パウロ会)の中で、以下のように述べています。
わたしは牧師のおかげで生き残ることができ、殺されずにすみましたが、わたしの命と魂を救ったのは、ロザリオの祈りでした。殺人者たちから追われ、恐怖と絶望の中、自殺が頭から離れず、悪魔が耳元でささやいていたようなときです。「父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。」この完璧な短い祈りによって、悪魔の声は、一瞬にして払いのけられました。
ロザリオを手に、神の前に謙虚にたたずむと、心の中でトイレの扉が開かれ、神とともにいることができました。心はもはや牧師の家にも、ルワンダにもありませんでした。聖なる地で主イエスと聖母マリアとともにありました。
隠れていた間、受けつつある試練と苦難から来る不安を和らげる確実な方法は、栄えの神秘の中の第4の黙想を行うことでした。聖母の被昇天は、マリア様が、母として耐え難い苦しみと悲しみを経験なさった後に、最も甘美な方法で報われ、愛に包まれる場面を描いているからです。主イエスがこの世を去られてからの、マリア様のご生涯が、断続的に目に浮かんできました。
やがて年を重ねられ動作がゆっくりになり、疲れから臥せっておられましたが、美しさも信仰も衰えてはいませんでした。使徒たちはマリア様のそばにひざまずき、慰め、そして別れを告げました。イエス様は、御自ら母を迎えに来られました。マリア様の体と魂は、全く損なわれることなく天国へと運ばれ、天の住人たちは上位の席を整えるよう、指示を受けました。
『薔薇の祈り』
↑ タイトルをクリックするとオンラインショップにリンクします。
マリアが天に上げられた光景を思いめぐらしながら、しばらく沈黙のうちに祈りましょう。
(沈黙)
いつくしみ深いマリアのまなざしを感じながら、恵みを求めて祈りましょう。
『パウロ家族の祈り』を唱えましょう。
やさしい御母マリア、天の門、平和と喜びの源、キリスト者の助け、
臨終のときのよりどころ、希望のないときの希望である御母マリア、
あなたが世を離れて、イエスのもとに行かれた幸いなときを思います。
美しく、永遠に生きる者として、あなたを天に引き上げられたのは、
全能の神の特別な愛のわざでした。
天使、聖人、証聖者、おとめ、使徒、殉教者、預言者、
太祖の上にあげられたあなたを仰ぎ見、
わたしも、罪深い者ながら、ゆるしを求める罪びととして、
かれらと声を合わせてあなたを賛美します。
マリアよ、いまこそわたしを回心させてください。
わたしが罪を悔い、償いの生活を送り、聖なる死を遂げ、
いつの日か天の国で、諸聖人と声を合わせ、あなたをたたえることができますように。
わたし自身をあなたにささげ、あなたをとおしてイエスにささげます。
今、天のすべての聖人の前で、深い自覚のうちに洗礼の約束を新たにします。
自愛心と戦い、しばしば罪の機会となった主欠点と
絶えず戦う決心を新たにし、これをあなたのみ心に託します。
罪びとのよりどころ、明けの星、悩む人を慰める方マリア、
この罪深い者を偉大な聖人に変え、あなたの大きな栄光とならせてください。
使徒の女王聖マリア、わたしたちのために祈ってください。
イマキュレー氏は、著書の中で、続けて次のように述べています。
ロザリオの祈りをとおして、虐殺の間、信仰を失うことなく、わたしは毎日聖母のおそばに行くことができました。悪魔の仕業によって周りで死んでいく人々が大勢いる中、穏やかな死に恵まれたマリア様を見て、希望が持てました。わたしの番が来たときには、わたしの天の母であり、最もお慕いするマリア様の美しく輝いているお顔に浮かんだ同じ笑みを浮かべて、死を迎えよう、と。しかし、わたしは救われました。
聖母は何か月もわたしのそばに留まり、神様を探し求めるように、耳ではなく心で、み言葉を聞くように励ましてくださいました。どのように愛し、ゆるせばよいのかを、示してくださいました。神様、殺戮を免れさせてくださって、また憎しみと怒りでいっぱいだった心を、愛とゆるしで満たす方法を教えてくださって、感謝いたします。絶望の闇の中、悪魔がわたしたちを陥れようとしているそんな暗い日々の中にあっても、主イエスを発見し、神の愛に結ばれました。
しばらく沈黙のうちに祈りましょう。
(沈黙)
世界の平和のため、また苦しみの中にあって、恵みを必要としている人々、わたしたちの必要を聖母にゆだね、ロザリオを一連ささげましょう。先唱者が前半を祈りますので、皆さまは後半を唱えてください。栄えの第4の神秘、聖母の被昇天を黙想しながら、取り次ぎを願って、祈りましょう。
主の祈り(1回)、アヴェ・マリアの祈り(10回)、栄唱(1回)
『カトリック聖歌』No.374「野ばらのにおう」① ②
祈りましょう。
いつくしみ深い、全能永遠の神よ、
あなたは、御ひとり子の母、汚れのないおとめマリアを、
体も魂も、ともに天の栄光に上げられました。
信じる民がいつも天の国を求め、聖母とともに永遠の喜びに入ることができますように。
わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。
+ 父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。
これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。
「アレオパゴスの祈り 年間スケジュールと祈りの紹介」に戻る