アレオパゴスの祈り
アレオパゴスの祈り 2018年 3月 2日
時は刻々と過ぎ去っていきます。人生にはいろいろな出来事が起こりますが、社会が目まぐるしいスピードで変わっていく中で、時間とともに人びとから忘れられていくこともあります。2011年3月11日に東北の地を襲った東日本大震災は、日本を始め、世界に大きな衝撃を与えました。7年の時が過ぎ去りましたが、今も8万人近い方々が、避難生活を余儀なくされています。また、東京電力福島第一原発事故で全域避難した7つの町や村では、2015年9月の解除から2年半たっても、住民は32%しか帰還しておらず、3月末には町外にある仮設住宅の提供が打ち切られ、全員が退去せざるを得ない状況になっています。今日は、被災し、苦しい状況の中で生活しておられる方々のために祈りましょう。
わたしたち一人ひとりが心に抱いている意向、祈りを必要としている人びとを神様の御手にゆだねて、しばらく思い起こしましょう。
(沈黙)
お祈りしたい意向を心の中にたずさえて、ローソクをささげましょう。ローソクを受け取り、祭壇にささげ、席にお戻りください
『祈りの歌を風にのせ』p.20「キリストの平和」
詩編143(143.1~11)を聞きましょう。
神よ、わたしの祈りを聞き、願いの声に耳を傾けてください。
あなたは正しく誠実な方。わたしの祈りに応えてください。
生きている者で、あなたの前にとがのない者はいない。わたしを裁かないでください。
はむかう者がわたしを追いつめ、地に打ち倒し、
死の国にいる人のように、わたしは闇に捨て置かれた。
わたしは弱り果て、心は荒れすさぶ。
わたしは過ぎ去った日々をしのび、あなたが行われたすべてのことを思い、
あなたの業を思いめぐらす。
あなたに向かって手を伸ばし、乾いた土地のように、わたしはあなたを慕う。
神よ、急いで応えてください。
わたしのいのちは衰え、あなたが顔を隠されるなら、死の国に下る者になり果てる。
あなたに信頼する者の上に、朝ごとにあなたのいつくしみを現してください。
心を込めてあなたを仰ぐ者の上に、行くべき道を示してください。
神よ、はむかう力から助けてください。あなたのもとにわたしは逃れる。
あなたはわたしの神、み旨を行うことを教えてください。
あなたのいつくしみによって、正しい道に導いてください。
神よ、あなたのためにわたしのいのちを新たにし、
恵みによって苦悩から救ってください。
東日本大震災は、2011年3月11日午後2時46分に発生しました。海底の奥底で起きた強く激しい震動は、そのままプレートを伝ってまもなく日本の東半分を大きく揺さぶりました。巨大な地震とそれに伴う津波……。東日本大震災は多くのいのちと家を奪いました。死者・行方不明者を合わせて1万9,504人(2011年11月17日現在)、建物は全壊が120,142戸、半壊が188,570戸に及びました。また、震災直後の避難者数は、38万人を超えました。
震災の翌日、そして3日後には福島県の福島第一原子力発電所で格納容器の水素爆発が起き、福島では地震と津波のみならず、放射線という目に見えない恐怖からも避難しなければならなくなりました。その後、岩手、宮城、福島の東北3県では、5万の仮設住宅が建設されましたが、同3県から83,000人が県外へ転出しました。
被害はそれだけに留まらず、地震による被害で各種工業の生産が止まり、世界に輸出する企業は大きな損失を計上し、水産業の要である大規模漁港とその周辺施設が甚大な被害を受けました。震災は産業や経済のあり方自体を見直すことをも強いたのです。
日本という国そのものが変わってしまった……。震災以後、いつしかそんな見方も広く一般的になりました。変化は、この国の政治、経済から、国民の日々の生活に至るまで及んでいました。東北では、そこにあった何千、何万人の日々の暮らしが根こそぎ奪われ、まるで爆撃された後の廃墟のような光景が広がってしまったのです。
(森健著、『「つなみ」の子どもたち』文藝春秋刊 より)
しばらく沈黙のうちに、祈りましょう。
石巻市 日和山公園から見た海岸 2011年11月
(沈黙)
『パウロ家族の祈り』p.233、詩編130を唱えましょう。
神よ、深いふちからあなたに叫び、嘆き祈るわたしの声を聞いてください。
あなたが悪に目をとめられるなら、主よ、だれがあなたの前に立てよう。
しかし、あなたのゆるしのために、人はあなたを おそれとうとぶ。
神はわたしの希望、わたしの望み、わたしはそのことばに寄り頼む。
夜明けを待ちわびる夜回りにもまして、わたしの心は主を待ち望む。
イスラエルよ、神に寄り頼め、神は豊かなあがないに満ち、いつくしみ深い。
神はすべての罪から、イスラエルを救われる。
被災して亡くなったすべての方のために祈りましょう。
主よ、永遠の安息をかれらに与え、不滅の光で、かれらを照らしてください。
かれらが安らかに憩いますように。アーメン。
被災した方たちは、慣れない場所で、また故郷に戻っても今までとは違った、安全が脅かされている環境の中で、生活の糧のために働いておられます。かれらのために祈りましょう。
『パウロ家族の祈り』p.299、「働く人の祈り」を唱えましょう。
神の子イエス、あなたは労働にいそしみ、働く人の友となられました。
いつくしみのまなざしを労働の世界に注いでください。
知的、精神的、肉体的労働にたずさわる人びとの必要に心をとめてください。
あなたは多くの労苦と苦しみ、困難な日々を過ごしているわたしたちをご存じです。
心身の苦しみに御目をとめ、「わたしはこの人びとをあわれに思う」と言われた、
み心の叫びを今も新たにしておられます。
勤労者、職人の模範聖ヨセフの功徳と取り次ぎに信頼するわたしたちを
励まし力づけてください。
労働の日々にあなたを支えた知恵と徳と愛を、わたしたちにも与えてください。
信仰と平和、節度と節約の精神を注ぎ、
日ごとの糧とともに霊的善と天の国を求める心を与えてください。
真理を歪め、摂理への信仰と信頼を奪う者から、わたしたちを救ってください。
人間の権利と尊厳を無視して搾取する者から、わたしたちを解放してください。
社会の法が福音の光に照らされますように。
愛と正義が共存し、すべての人が誠実に協力し、ともに育っていく社会にしてください。
アーメン。
主がどんなときもともにいてくださることを、苦しんでおられる方たちが感じることができますようにと願って歌いましょう。
『祈りの歌を風にのせ』p.36「主と共に」
祈りましょう。
父である神よ、
すべての人に限りないいつくしみを注いでくださるあなたに、
希望と信頼を込めて祈ります。
東日本大震災によって今もなお苦しい生活を送り、
原発事故によって不安な日々を過ごす人びとの心を照らし、
希望を失うことがないよう支えてください。
また、亡くなられた人びとには、永遠の安らぎをお与えください。
すべての人の苦しみを担われたキリストがいつもともにいてくださることを、
わたしたちがあかしできますように。
わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン。
父と子と聖霊のみ名によって。アーメン。
これで今晩の「アレオパゴスの祈り」を終わります。
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