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祈りのひととき

十字架の道行(1) 奥村一郎著『主とともに』-1

ここでご紹介するのは、カルメル会の奥村一郎神父がお書きになった『主とともに』-十字架の道行と黙想-から、一般向きで、一人でする黙想になれない人たちに助けとなる第一の形式(同書p.17~31)の14留の祈りです。

初めの祈り

主よ、あなたは「わたしの弟子になりたい者は日々自分の十字架をとって、わたしに従いなさい」と言われました。

▼苦しみの道は、愛と忍耐と謙そんの学舎である。主よ、苦しみこそあなたを見いだし、あなたの愛のうちに生きるカルワリオとなることを悟らせてください。

第1留 イエス死刑の宣告をうける

イエスは裁きの庭に立たされる。正義が不義に裁かれ、愛が憎しみによって報いられるという矛盾と汚辱に、このとき人類の歴史は黒く塗りつぶされた。

 沈黙

主よ、あなたは、わたしたちの日々歩むべき道がどのようなものか、また、どのようにその道を歩むべきかを身をもって示すために、今、死の裁きの前に立たれる。

▼「裁くな、裁かれないために」と言われた主イエス、なんとしばしば、わたしたちは兄弟の目にあるちりを見て、自分の目にあるうつばりを見ないでいることか。兄弟の欠点やあやまちよりも、それを責め、それを口にすることのほうが、はるかに醜いものであり、あなたに裁かれるべきものであることを悟らせてください。

第2留 イエス十字架を担わされる

判決は下された。イエスはひと言も発せず、これを聞かれる。

 沈黙

何も困難のないとき、「わたしは神のみ旨を果たす覚悟がある」と言うのと、十字架が来るとき、真にこれをうけとる覚悟があるのとは別である。

▼そのようなとき、たびたび心は臆し恐れる。そして、あらゆるよい覚悟が消えうせる。主よ、しかしそのときにこそ、わたしはあなたのもとにいなくてはならない。勝利者であるよりも敗北者であればこそ、あなたの愛だけがわたしの支え、わたしの力であることを悟らせてください。避けがたい困難や苦しみを前にして、むやみに嘆いたり、片意地になったりしないように。

第3留 イエスはじめて倒れる

緊張と疲労とはその極に達し、十字架の重荷はイエスを圧しつぶす。

 沈黙

あるときには、あらゆる十字架が、自分の力を超えたものと見える。苦しみと疲れに、「もうだめだ」という重いひと言がもれるときが、いつかは必ず来る。

▼主よ、あなたの忍耐と愛により、このようなとき失望してしまわぬよう、わたしを助けてください。

第4留 イエスみ母に会われる

最愛の母と子、互いの目と目、心と心が通うその刹那、そのときどのような愛、どのような苦しみが、二人の心を波立たせたことだろう。このまなざしの間に何があるのか? 神のみ、それを知る。

 沈黙

別離は一つの死である。

▼しかし、今ここにおける母と子の別離は死以上の死である。主よ、このみ母の胸を貫く悲しみの涙がわたしのうちに注がれ、あなたの愛をさらに深く生きるようにさせてください。

第5留 イエス、クレネのシモンの助力をうける

 沈黙

わたしがたった一人で苦しまねばならぬ日が来たら、クレネのシモンのことを考えよう。

▼もしもいつか、わたしが結局、各人は自分自身の苦しみとともに孤独であり、各人は自分で解決をつけねばならず、なんぴとも他の人を助けることができないのだということを知るときが来るならば、そのとき、わたしの傍らにあなたのいますことを感じさせてください。

第6留 イエス、ヴェロニカより布をうけとる

十字架の重荷にあえぎつつ歩みながらも、深い愛に目ざめたイエスの心は、このヴェロニカのつつましく、率直な愛を喜び、み顔をぬぐって聖い面影の写し出されたその布を彼女に与えられる。

 沈黙

ああ主よ、なんとあなたは強く、やさしくあることか!

▼もしも自分の苦しみのために、まわりの人に対しかたくなに心を閉じ、冷淡になる誘惑を感じるようなことがあれば、主よ、そのようなとき、苦しみに伴いやすいこの利己主義からわたしを解き放ってください。わたしは気むずかしくなってはならない。他人に八つ当たりしたり、自分が苦しい状態にあることを口実にして彼らの喜びをそいではならない。他の人がしてくれる細かい心づかいをよく見知ることを教えてください。そして、それらを尊重し、感謝することを。

第7留 イエス再び倒れる

 沈黙

主よ、あなたが望まれるのは、わたしが倒れないことではなくて、倒れても倒れても起き上がり、あなたに最後まで従うことです。

▼あなたの愛の忍耐に倣い、十字架のあとに来るべき復活の希望に生きさせてください。

第8留 イエス、エルサレムの婦人らを慰める

自身のうちのすべてが、苦しみにふるえているときでさえも、イエスは婦人らに静かに語り、その聖なる死の道を歩みいかれる。

 沈黙

すべての人間にとって、苦しみがあまりにも重く、身も心もすべてが苦しみの烈しさのために自分自身に反抗するようなときが来る。

▼主よ、もしもわたしがこのような状態になることがあるなら、あなたの深い落ち着きを与えてください。疲れのうちにも、苦しみのうちにも、今なすべき仕事を静かに果たしつづける、あなたの愛の力と忍耐とを与えてください。

第9留 イエス三度倒れる

全く力尽きはてた主。しかし、今一度起き上がり、最後まで十字架を担いゆくイエス。希望のない暗黒の前進が続けられる。

 沈黙

主よ、あなたは今また立ち上がられる。

▼しかし、それは救われるためでも、生きるためでもなく、死の滅びに自らをゆだねるために。主よ、復活は苦しみの暗黒にすべてをゆだねきったのちにのみ訪れる喜びであり、光栄であることを悟らせてください。

第10留 イエス衣をはがれる

彼らは主よりすべてを奪った。友も、その最愛の御母も、弟子たちも。屠所に引かれてゆく羊のように、主はすべてなされるがままに任せられる。

 沈黙

主よ、いかなる場合にも、忍耐だけが真の愛のあかしであり、

▼その愛の忍耐だけが、すべてを、すなわちあなたご自身をかち得るものであることを悟らせてください。されたことに、その仕返しをしたり、悪口を言い返したり、陰口などで気を晴らそうとしたりしないように。

第11留 イエス十字架にくぎ付けにされる

すべてが終わってしまった。主はもはや何もできない。十字架にかかったままとどまり、沈黙のうちに苦しむほかには……。

 沈黙

主の苦しみがわたしのために無益とならないように! 主の力、主の忍耐がわたしにおいて生命と化すように!

▼すべてがなんの力にも支えにもならぬときが来る。名誉も、才能も、財産も、友情も。わたしに死が近づき、医師はもはや何もなしえぬことを告げたとき、このようになる。そのとき、わたしは死の床にくぎ付けられたままでいる。しかし、そのときにはじめてわたしは、わたしが何であるかを、すなわち全くの無にすぎないことを、そして、何が人間にとって最高のものであるかを悟るであろう。あなたに向ける愛のまなざし、それだけがあなたをとらえ、あなたにとらえられる永遠の生命の明るいきざしであることを。そして今日のこの日を、すでにその愛の輝きを包む十字架の死によって生かされるものとしてください。

第12留 イエス十字架に死す

「わたしの神、わたしの神、どうしでわたしを見すてられたのか」と、主はそのとき叫ばれる。神の子がどのようにして神にすてられたのかというこの神秘を、なんぴとも説明しえない。今や、全き暗黒と孤独のうちに、主はすべてよりすてられた。なんぴともこの神秘を把握することができない。御父のみ旨に対するたゆみない忠実さと、わたしたちに対する悟りがたい愛、これが主を支えるすべてである。

 沈黙

あなたはどのように苦しむべきか、また、最後まで耐え忍ぶ唯一の方法、すなわち愛によって苦しむことをわたしに示された。

▼それのみが、いかなる哲学、いかなる力、地上のいかなる財宝も与ええない永遠の愛を獲得させるものであることを深く悟らせてください。

第13留 イエス十字架より下ろされる

神は死んだ。
キリストの死、それは一人の人間、一人の英雄の死ではない。死によって死を滅ぼすまことの神の死なのである。

 沈黙

人間的知恵は恥じ入って黙する。ただ十字架のみが答えをもたらす。

▼「一粒の麦がもし地に落ちて死ななければ、ただ一つにとどまるものを、死ねば多くの実を結ぶ。」苦しみ、犠牲、死はすべて天にまかれる種である。神の愛にそのすべてをささげるならば、わたしたちのためにも、他人のためにも、そこから生命が生まれるであろう。わたしは信ずる。わたしはあなたに信頼する。わたしの生命、わたしの苦しみ、そしてわたしの死が永遠の実を結ぶように、主よ、わたしは最後まであなたを愛する。……主よ、あなたに狂うまでの愛を与えてください。

第14留 イエス墓に葬られる

すべては沈黙している。墓はすべての希望を閉じ込めてしまった。しかし、この沈黙の廃虚にやがて春の復活が、緑を呼ぶのである。死のとげは今いずこにかある。死はすでに勝利にのまれたのである。

 沈黙

み母マリアよ、

▼槍で貫かれたあなたの胸の痛みを、わたしたちの心に深くしみとおらせてください。

終わりの祈り

主よ、あなたは、苦しみも、そして死さえも、あなたの愛のるつぼの中で黄金に化することをわたしに教えられた。
主よ、あなたに信頼し、あなたへの愛に満ちて十字架を担いゆくことをわたしに教えてください。また隣人のために、愛をこめてその苦しみをささげつつ、忍ぶことを教えてください。「自分の命を保つ者はそれを失い、わたしのために、わたしの愛のために、自分の命を失う者はそれを得る」ことを。

主の祈り・マリアの祈り・ヨセフの祈り・天使の祈り・栄唱。


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