第25回:経済(5)
<第7章 経済生活、5 経済における「新しい課題」>
わたしたちが「仕事上の付き合い」とか「仕事を超えた付き合い」とかいうとき、明らかに「仕事を超えた付き合い」のほうがより深い人間関係を表現しているといえます。しかし、損得が付きまとう「仕事上の付き合い」も大変重要です。特に、相手の損得が自分にも降りかかってくるような場合、自分は相手の損得に無関心ではいられません。たとえば、取引先の会社が資金繰りに窮して存続の危機にある場合、わたしたちは何とかしようと身を粉にして関係者との交渉に乗り出すに違いありません。そして、その損得のための行動が、仕事を超えた信頼関係を築くこともあります。同じように、損得の関係が戦争回避に貢献することもあります。情勢が安定していなければ、商売ができないからです。商売による交流は、人間の交流へと発展し平和を促します。このような意味で、経済のグローバル化は人類の平和に貢献することができます。
しかし現実には、グローバル化によって貧富の格差の増大と、利害の対立を引き起こし、紛争の要因となっていることも否定できません。誰かの儲けが別の誰かの損の上に成り立っているために、このような現象を引き起こしているのです。わたしたちは、共通善を目指すことで、「連帯におけるグローバルゼーション、疎外することのないグローバリゼーションを確実にしていく課題」(363)に挑まなければなりません。