homeこんなとこ行った!>第8回世界宗教者平和会議世界大会 (5)

こんなとこ行った!

バックナンバー

第8回世界宗教者平和会議世界大会(5)

2006/11/28

4日目:8月29日(火)

いよいよ最終日となりました。11時からの「全体会議Ⅴ」の後、閉会式が行われ、平和を求めて世界各地から宗教指導者が集まった大きな国際会議が終了しました。全体会議に先立ち、正式代表者会議が開かれましたが、その間、プレスは、イラクの代表者たちの記者会見に参加しました。閉会式の後、最後の記者会見が開かれました。

 
朝の記者会見

イラクの代表者13人が日本のプレスに向かってメッセージを発表したいたという希望があり、朝の記者会見が開かれました。女性3人を含む13人は、いろいろな宗教の代表者たちで、自爆テロや攻撃で破壊された家や傷ついた人々を映し出すテレビニュースの映像でしか接することにない遠い国の人々と彼らの抱える現実が、一気に目の前に来たという感じです。

集まった13人の代表者 メッセージを述べるイラクの代表
集まった13人の代表者 メッセージを述べるイラクの代表

 
“希望と善の扉を開き、悪と失望の扉を閉じる。”世界から来ている宗教指導者と会い、暴力を乗り越えて平和を築くために来ました。わたしたちは、民族や宗教を代表して来ている。日本政府と日本の人々に、心から感謝します。イラクは古い歴史を持っていて、世界で初めて「法」を確立した国、初めて文明が発祥した地です。兄弟姉妹を愛し、国のために生涯をささげたいと思っています。

 現在、イラクで起こっていることは、受け入れがたい悲しいできごとです。あらゆる国でいろいろな変化が起こっています。矛盾もあり、矛盾から軽蔑が起きています。傷つく人々は、非常に厳しい状況下に置かれています。混沌とした状況です。現在の占領は、早く終わるべきです。

 テロが続いています。ロンドン、エジプトでも多くの会議が開かれましたが、テロは終わっていません。平和のためのはじまりとしての歩みを踏みはじめました。イラクの人々は安全のために取り組んできました。WCRPは、さまざまなアイデアを出して話し合ってきました。すべての宗教者が心のわだかまりなく解決に向けて具体的な行動を起こすことを希望しています。声なき人々の声を代表して、解決することを願っています。
  
全体会議Ⅴ

「全体会議Ⅴ」のテーマは、「共にすべてのいのちを守る行動を起こすために」でした。ジョン・オナイエケン大司教を議長に迎え、“紛争解決研究部会”、“平和構築研究部会”、“持続可能な開発研究部会”の3つの研究部会からの報告が行われました。

オナイエケン大司教
オナイエケン大司教

今、実際に紛争を抱えている地域の宗教代表者たちも、この会議に参加していました。世界大会で集まっているこの機会をとらえて、彼らの間で会合がもたれました。現地では絶対に成立しない出会いです。パレスチナ、スーダン、スリランカ、イラクから報告があり、また北朝鮮についても報告がありました。

 

■イスラエルのラビ ヨナ・メツガー師の話

ヨナ・メツガー師
イスラエルのラビ ヨナ・メツガー師

 
モーゼは燃える柴を見たとき、柴が燃え尽きないので不思議に思って近づくと、声が聞こえた。「靴を脱ぎなさい。ここは聖なる地だ」 なぜ、神は「靴を脱げ」と言ったのか。裸足になって地に足をつける。足の裏に、小石や砂を感じる。靴を履くなら何も感じないだろう。「あなたはこれから宗教指導者として、あつい砂を感じなさい。つまり、人々の痛みを感じなさい」と、神はモーゼに伝えたのだ。宗教指導者たちは、世界の苦しみを感じなければならない。国と国の間に外交関係がないとき、わたしたちは出会うことができない。しかし、わたしたちは、今ここに集まってきた。死ぬことよりも、生きることを望む人のために働かなくてはならない。

  イスラエル、パレスチナの両方が捕虜を解放することを強く望む。600万人という同胞がユダヤ人であるために殺された。わたしたちは同じ父・アブラハムを共有している。私の心は痛む。
 

■パレスチナ パレスチナ政府主席判事シュレク・ハミーミ師

シュレク・ハミーミ師
シュレク・ハミーミ師

WCRPはすばらしい機会を与えてくれた。いろいろな人と出会うことができた。エルサレムの町はイスラエルの当局者によって囲まれアクセスができない状態である。今、イスラエルで行われていることは、国際条約違反である。分断の壁で隔てられてしまった。モスリムとキリスト教の遺跡が、ユダヤ人の町が変貌してしまった。ユダヤ人の利益のためだけに……。パレスチナの共同体は、大きな刑務所のようになってしまった。まさに地獄だ。女性、子ども、高齢者が攻撃の対象となっている。1万人のパレスチナ人が逮捕され、400人が女性と子どもである。

シリアも同じである。アラブ人は侮蔑されている。これが聖なる地で起きている。国連は、世界の正義と平和を確立するためにある。この紛争が宗教間の紛争にならないように。そうしないと、破壊はもっとひどいものになる。

 

■韓国 キム司教

キム司教
キム司教

今回、日本政府から入国を拒否され、この会議に参加することができなかった北朝鮮について今後どのようにかかわっていくかについて、6か国協議の参加国である、ロシア、中国、日本、米国、韓国の代表者が集まりました。韓国のキム司教が報告してくださいました。

全ての宗教は、一般的な会合には差別なく参加できる。宗教と政治の果たすべき役割は区別すべきである。宗教をあるがままの姿で受け入れてほしい。ということを確認した。
 

5か国での話し合いは、韓国をとおして北朝鮮に伝えられ、これからも韓国がパイプ役を果たしていくということです。

 

■エルサレム マイケル総大司教

マイケル総大司
マイケル総大司

 

マイケル師は、捕虜の問題から入り、捕虜の解放を求めて祈りました。

互いが理解し合えるところまで、痛みも理解し合えるところまで語らないといけない。なぜ、わたしたちを殺すのか。なぜ、これらの暴力が起こっているのか。中東の不安定な状態は、すべての人を不安定にする。イスラエル人にとっての正義とは何か。正義、平等、独立を、すべての人が望んでいる。イスラエルの安定は、地域全体の安定にかかっている。すべての人が大きな信頼をもって、イエスの脇腹の傷に指をあてなくてはいけない。つまり、人の痛みを心でとらえ、人の痛みを分かるということ。
 

大司教は、捕虜となっている人々に渡してほしいと、ヴェンドレー事務局長に小型のコーランと聖書を託しました。ヴェンドレー事務局長は、WCRPがその任に選ばれたことを感謝し、彼らの渡することを約束しました。

 
閉会式

まず、ヴェンドレー事務局長から、今回の会議でまとめられた“京都宣言”についての説明がありました。

ヴェンドレー事務局長
ヴェンドレー事務局長

 
「京都宣言」より抜粋
 戦争、貧困、病気並びに環境破壊は、直接的であれ、間接的であれ、私たちすべてに影響を及ぼす。……宗教共同体が協働することによって、宗教共同体は、暴力が起きる前に予防し、紛争のさなかにある武装集団間を仲裁し、戦争に引き裂かれた社会を再建するための協力な推進力となれる。……地図上の境界や、国籍、民族、宗教の違いを乗り越えなければならない。「共にいのちを守る」ということは、人類の責任においてその能力を発揮するということである。……「共にいのちを守る」ことに専念するとき、地球規模のWCRPネットワークのような諸宗教ネットワークが、紛争を解決し、平和を構築し、正義のために戦い、持続可能な開発を進めることを可能にする。
 宗教指導者として、啓発・教育その他諸宗教間活動を通じて、自らの属する宗教共同体の中でこの「京都宣言」を共有しつつ、私たちは共にすべてのいのちを守ることを推進するために、尽力することを誓う。

そして全員が起立し、京都宣言から出されたコミットメントを自国の言葉で唱えました。

「私の信じる宗教伝統の深い真理に立脚して、互いの宗教の違いを尊重しつつ、すべての人にとって善なるものを実現するため、諸宗教者と共に行動することを誓います。私は、宗教の違いを超えて、我々の共通の関心事である、戦争を終結させ、貧困に苦しむ人々を 救い、かけがえのない私たちの地球環境を守るために、他の宗教を奉ずる人々と協力して行動することを誓います。」

その後、開会式で登場した、各宗教を代表する子どもたちが登壇しました。その後、美しい海の国・沖縄から、歌と子どもたちの沖縄太鼓の演奏が行われました。

沖縄の太鼓演奏
沖縄の太鼓演奏

最後に、主催者国である日本WCRPの大会事務責任者から、会議の運営についての報告があり、会議中、縁の下の力持ちとして、参加者と会議のお世話をしてくださったボランティアの青年たちがステージに上がり、参加者から感謝の拍手を送りました。

ボランティア
ステージに上ったボランティアの青年たち

会議を終えた参加者たちは、ボランティアの青年たちに見送られて、4日間の熱心に討議が行われた京都国際会館を後にし、それぞれのホテルに向かうバスに乗りました。

参加者を見送るスタッフ バスに乗り込む参加者
参加者を見送るスタッフ バスに乗り込む参加者

  
午後の記者会見

閉会式の後、最後となる記者会見が行われました。記者会見にヴェンドレー事務局長、日本WCRPの庭野会長と杉谷師が並びました。プレスからは、会議を終えて、WCRP日本委員会は今後どのような活動を続けていくのか、パレスチナの宗教代表者から共同声明が出るかもしれないということだったが、実際には出なかった。これはどうしてか? などの質問が出されました。これに対し、日本委員会に対して、スリランカの和平のために協力してほしいと要請があったので、手伝っていく。共同声明ではなく別々の宣言となったが、席を同じくしたということ自体が大きな成果で声明である、と答えました。

杉谷師、ヴェンドレー事務局長、庭野会長 スーダンの代表の2人
左から、杉谷師、ヴェンドレー事務局長、
庭野会長
スーダンの代表の
ティビ神父(左)とアビディム師

朝、イラクの代表者たちが記者会見を行ったということを聞いたスリランカからの代表が、私たちも記者会見をしたいということで、急きょ、その場が持たれました。スーダンからは、8人の宗教代表者がこの会議に参加しています。会見に臨んだのは、全体会議でも報告した、スーダンの諸宗教評議会のダイブ・ダイヌール・アビディム師と諸教会評議会のピーター・ティビ神父です。

スーダンが経験している厳しい道が、他の国にもあることを知った。解決の道はそれぞれ違うが、平和協力のために、できるかぎりのことをしようとしている。しかし、南北での違いがありすぎる。この会議中、わたしたちは、何度も話し合いの機会を持った。私たち2人は、人生ではじめて、2人で対話することができた。それぞれが自分たちの執行機関に戻って、進めようと思っている。

 

イラクで、パレスチナでテロや爆撃が続いているこのときに、宗教の違いを乗り越えて同じテーブルに着くことができたWCRP会議の役割は、非常に大きいものがあります。信仰を持つ者として、目指すことは同じはずなのに、そこに過激的な思いや武力が入ってくると、複雑になって話し合うこともできなくなります。どの宗教も、いのちと人権の尊重、平和への希求、人々の愛の交わりを求めているのです。現地では絶対に実現しない話し合いが、この日本という地、京都という地でだからこそ、実現することができたと思います。

ここで目指されたことが、会議を終わっても、各国で意識され、努力されていきますようにと願います。この大会に参加できたことを感謝します。いろいろな宗教の人が、自国では敵対関係にある人々が、同じ会場で、前の席に、後ろの席に、となりに並び、ロビーで行き交いました。準備したWCRPの事務局、開催国となった日本の委員会、そしてたくさんのボランティアスタッフ、大勢の人の努力によって、世界の要人も参加したこの4日間が、無事終了しました。戦争を放棄している日本が、世界に対する役割は、こういう場を提供し、和平のために力になることだと思います。日本のWCRPのこれからの活躍を期待します。

▲ページのトップへ