こんなとこ行った!
9条アジア宗教者会議(3)
2007/12/28
「9条アジア宗教者会議」の2日目、11月30日(金)は、韓国キリスト教協議会のコン・オースン師と、マレーシアキリスト教協議会のトーマス・フィリップス師、新間智照師(立正校正会)からあいさつから始まりました。その後、パネル討論に入りました。
![]() オースン師 |
![]() フィリップス師 |
![]() 新間師 |
11月30日(金) パネル討論「軍事化する世界と9条…わたしたちにできること」
パネリスト:
マシュー・ジョージ・チュナカラ(Dr.Mathews George Chunakara)氏
……インド、マルトマ・シリア教会信徒、世界教会協議会(WCC・在ジュネーブ)アジア・人権担当幹事
高橋哲哉氏
……東京大学大学院総合文化研究科教授、哲学者
チャンドラ・ムザファール(Dr.Chandra Muzaffar)
……マレーシア、イスラム教徒、公正な世界を実現するたえの国際運動会長、政治学者
法輪和尚(ポンニュン スニム)
……韓国、平和財団理事長、浄土会指導者法師
左から、ストークンさん、法輪和尚、チュナカラ氏、ムザファール氏、高橋氏
高橋氏:
「もう、戦争はこりごりだ」という思いから、憲法9条を歓迎した。しかしそれは、被害者の意識からであって、加害者の意識からではない。戦前は戦争反対をしたが、戦中は言論弾圧から、日記にその思いを書きつづっていた清沢清(きよさわ きよし)は、1945年1月1日に、次のように書いている。「日本国民は、今はじめて戦争を体験している。日本国民はそれまで戦場を経験しなかった。はじめて戦場を経験した。」わたしは、次のことを言いたい。
1.加害者としての意識、責任の意識を強調したい。
2.日本の戦後60年は、必ずしも平和だとは言えない。「日本安全保障条約」という名
の軍事同盟が結ばれ、間接的に戦争に関わってきた。
沖縄には、日本の75%の米軍基地が置かれている。基地があるというだけで、日常生活が安寧されてきた。沖縄基地から、ベトナム戦争、イラク戦争へと戦闘機が飛んでいった。この条約を結んできた政府を認めている日本国民は、こうして戦争に関わってきた。「9条を守ればよい」に満足することはできない。9条を、平和の内に活かしていくことが必要だ。
東アジアに平和の秩序を構築していくため、平和を実現していくために働きたい。
宗教者の責任は大きい。デンマークのフィリッツ・ホルムという人が「戦争受け入れ法案」というのを作った。戦争が始まったとき、一兵士として送り込まれる順番を定めたものだ。それによると、以下のような順番で出兵する。
1.国家の元首
2.国家元首の男性親族
3.政府トップ
4.戦争に賛成した国会議員
このように定めれば、国家は戦争をすることはできないだろうというものだが、残念ながら、実際の法廷化はされてはいない。追加として、5番目は「戦争に反対しなかった宗教界の支援者」となっている。
高橋氏
ムザファール氏:
日本の武力化が進まないようにしなくていはいけない。
日本でも、テロに備え強化するという考えになっている。日本の中では、中国と対抗する思いが強くなっている。日本が再軍備したら、中国の発展を妨げるかもしれない。そういうことで日本に軍備してほしくない。日本は、この地域のために貢献すべきである。日本の9条を、日本だけが守るのではなく、地域で守るべきである。9条のグローバル化を進めよう! そして全ての宗教者がこれに関わるべきである。
この会議の中で、ムスリムはわたし一人である。今の世の中で、ムスリムは戦争、テロと結びつけられている。わたしたちも平和を求めているのに、どうしてこうなるのか。世界の覇権者が、イスラムをそういう宗教だと思わせている。
今、世界の中で一番大切なのは、石油である。石油はイスラム教国にある。その国の石油を、世界の覇権者は欲しいので、イスラムと暴力を結びつけた。平和と石油はリンクしているのに。
モハメドも、非暴力を退けていた。非同盟運動が必要なのではないか。戦争に同盟しないという非同盟である。戦争、武器にかかわらないと定義する必要がある。
わたしたちは奴隷制を撤廃できた。だから、戦争も廃止できるはずだ。戦争は罪だ。戦争は犯罪だという規範を作ろう。
ムザファール氏:
法輪和尚:
中国のチャンスン博物館を訪れたとき、韓国も中国も日本から苦しみを受けたことを知り、日本に対する憎しみを覚えた。広島に来たとき、わたしたちだけでなく、日本人も苦しんだのだと知った。どの国にも、痛みの歴史がある。
加害者はだれか。犠牲者はこんなに大きいのに、加害者が見えてこない。見えないところで、わたしは加害者になって人を苦しめているのではないか。仏教は平和の宗教である。仏教に戦いはないはずだ。しかし、ミャンマー、スリランカを見ると、仏教がどうして……と思ってしまう。
法輪和尚
ジーン・ストークンさん:
パックス・クリスティは、カトリックの世界的な平和のための国連のNGOである。2007年3月、米国に来たシスター弘田と高見大司教の話を聞いた。4月、安倍首相が来たときは、ホワイトハウスの外で、「9条は世界への贈り物、9条を守ろう!」という横断幕を掲げて集まった。
米国には、平和な明日を作る9.11家族の会、発言する兵士家族の会、オルタナティブなメディアの会など、さまざまなグループがある。2002年9月、USA安全保障戦略ができた。自分たちの生活様式を守るためだ。驚異である。恐ろしい思いを広めている。ブッシュ大統領にとって、自分たちの的確な防衛は攻撃である。拷問も必要とされている。南の国境では、メキシコ人の侵入を防ぐために壁が設けられている。
イラクでは、400万人のイラク人が国内外の難民となっている。3,000人の米兵が亡くなった。イラクの下にある石油のために、これだけの人が犠牲になっている。わたしたちの平和運動は、ウソを暴こうとしている。非暴力の道を示すこと。「もう一つの世界は可能だ」から「もう一つの世界は必要だ」へと変えていかなくてはならない。
マシンデール神父は「“シャローム”という言葉は“平和”と訳されているが、もっと深い意味のもので、社会的全体的ビジョンを示し、全ての人に福祉が及んでいる状態を示す。このビジョンは、9条に受肉している。
「蝶の羽ばたきが世界を変える」という言葉がある。昨年までわたしたちの活動に「9条」は入っていなかった。しかし、日本カトリック教会の「正義と平和協議会」からの一つのメールが、わたしたちを変えた。
ストークンさん
質問:9条についての宗教者の役割は?
ムザファール氏
この会議が具体的な働きである。日本中から、海外から人々が集まった。時間はかかるかもしれないが一つの動きである。トークンさん
主流メディアに対しての記者会見など、オルタナティブ・メディアを使うのも一つの手段だと思う。質問:兵器製造者は罪か?
高橋
兵器産業も罪の加担者だと思う。軍事産業がなければ、戦争は起きない。日本は軍事的分野で伸びてきた。軍事に依存しない経済が必要だ。
質問:東アジアの危機は、中国と台湾との緊張関係にあるのでは?
法輪和尚
中国の急激な成長と再軍備は、周辺国には驚異である。
高橋
日本が東アジアに残した傷が、いまだに癒えていない。日本は、あるゆる形でサポートしていく必要がある。
パネル討論の後、滞日のミャンマー(ビルマ)女性から、ミャンマーについての説明があり、会場の人々に理解と援助を求めました。
ミャンマーは少数民族の国で、カチン族の98%、カレン族の35%がキリスト教徒である。1948年1月4日に独立したが、迫害、内戦などの問題が残り、1962年から民族浄化が始まった。少数民族は迫害され、森の中に逃げた。軍人は、地雷を試すために労働者たちを先頭に立たせて歩かせた。
国民は刑務所に住んでいるかのようだ。軍事費は国家予算の4~5割で、教育のためには1割ほどしかない。1998年に民主化のデモが行われ、そのとき、武器を持っていない人々が弾圧された。軍事独裁政権はアウンサン・スーチーさんを軟禁している。僧侶たちは立ち上がった。信者たちは教会の中で祈っている。軍事政府は、自分たちを守るために権力を強いている。日本との関係では、日本は、1942年から3年ほどビルマを占領していた。
ビルマの軍事国家を民主化するために、祈りをお願いする。
前日に続き、各国の人々の発言は直接的で、アジアの人々を近くに感じました。アジ
アという地域の中で、同じ思いの宗教者たちが集まるというこの集会が持たれたことは、意義あることだと思います。こういう交わりをとおしてお互いが理解しあっていくのだと思います。今後、2回、3回と続いて、もっと多くの人々が集まることを期待します。