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こんなとこ行った!
WCRP日本委員会新春学習会“G8に向けて”
2008/02/14
今年の夏、北海道洞爺湖でG8サミット「主要国首脳会議」が開催されます。関連して「ユースサミット」「子どもサミット」など、いろいろな集いが開催されます。WCRP(世界宗教者平和会議)でも札幌で「G8諸宗教サミット」を開催することになり、そのための国際準備委員会が1月30日、31日に東京で開かれました。WCRP日本委員会は、1月30日(水)の午後、準備委員会のメンバーを招いて新春学習会を開きました。
新春学習会は、東京都杉並区にある立正佼成会法輪閣第5会議室で行われました。山田経三師(上智大学名誉教授、WCRP平和研究所)が開会のあいさつをされ、2006年夏に京都で開催されたWCRPの成果とその後の歩みについて話してくださいました。その後、レオニド・キシコフスキー師からあいさつがありました。
法輪閣 | 会場 |
山田経三師
あいさつ:レオニド・キシコフスキー師
(WCRP国際委員会事務議長、米国)●京都会議のその後
2006年の京都会議では2,000人が集まり、800人がビジネスミーティングに参加し、70以上のいろいろな委員会ができました。この会議をとおして、連帯感と共感を持つことができ、対話から行動へと変わっていきました。また、WCRPの信頼性が高まりました。各国のWCRPのメンバーは、紛争緩和のために紛争の当事者と出会っています。手軽な解決ではなく、解決の糸口を見つけるために赴いています。相手を信頼してこそ招かれて行くことができます。WCRPが高く評価されている結果です。
●WCRPの信頼性が高まった
京都会議にハッサン王子が来てくださいました。彼が来たことによって、WCRPの信頼性がより高まりました。宗教の代表者が、危険なことを乗り越えて同じテーブルにつけたということが大切です。
スリランカでは、先週、暴力がますます増加しているというニュースがありました。紛争を、暴力を用いずに多くの人を苦しめることなく解決できるということの証人となるべく、スリランカに行きました。オランダ、フィンランド、ノルウェーなどは、WCRPに補助金を出すなどして助けてくれています。日本政府もそうです。諸宗教観の対話を重ね、日本政府とも関わりを勧めています。
これらのことをとおして、ことばに新たな意味が考えられるようになりました。たとえば、「安全保障」ということばですが。安全保障は、1970年の会議のときは軍事的意味が強かったのですが、2006年の会議では共有の安全保障ということで、精神、倫理的意味合いを持つようになりました。人間の尊厳を認めるということです。信仰に基づいて、国籍は関係なく自分だけでなく、他者の安全を求め共有することを意味しています。
WCRPには、女性の会議もでき、青年の参加もありました。
●WCRPの使命の精神的霊的意味を深めた
わたしたちには使命があり、ともに働かなくてはいけないと思います。諸宗教間の協力が求められています。それは自分たちの信仰心に基づくものです。他の信仰に触れるとき、自分の信仰は強くなるのです。
その後、WCRP青年部会の活動が、DVD映像で報告されました。
青年たちの活動
「持続的な平和を築くには、平和な心が必要だ」 1994年の第6回WCRPでは、世界の青年を一つに集めるという動きが始まりました。2005年からは、2006年開催の京都会議に向けて、事前会議が開かれました。エルサレムで行われた事前会議では、パレスチナの青年とイスラエルの青年がともに集まりました。これは大きなチャレンジでした。3日間の出会いと祈りの日々で、彼らは一つの家族になっていきました。「自分の話に耳を傾けてくれた」「相手の印象が変わった」という感想がありました。
そして、2006年8月、広島で「WCRP青年世界大会」が開かれました。ここでは、WCRP日本青年部会のメンバーが活躍してくれました。“紛争は、相手を知らないから起きるのだ。しかし、今、ぼくたちは相手を知っている。だから、平和のために一つになれる”と彼らは悟りました。
そこでIYCの新しいメンバーが選出されました。2007年2月、ニューヨークで今後の計画の確認が明記されました。青年たちは、「異なるがゆえの美がある」ことを知ったのです。
パネルディスカッション「G8サミットに向かって」
「G8諸宗教サミット」国際準備委員会のメンバーによる、パネルディスカッションが行われました。
コーディネーター:
杉野恭一(WCRP国際委員会事務総長補)
パネリスト:
レオニド・キシコフスキー(WCRP国際委員会事務議長、米国)
シェイク・シャバン・ムバジェ
(ウガンダ・イスラーム最高協議会最高指導者 アフリカ宗教指導者協議会副議長、ウガンダ)
メーレジア・ラビディ・マイザ(女性の向上と代表協会事務局、フランス)
ヴァクタンク・キプシジェ(ロシア正教会モスクワ総大司教外務部、ロシア)
マーティン・フォルデルバッハ(ドイツ福音派教会司教代理、ドイツ)
三鍋 裕
(みなべ ゆう WCRP日本委員会非武装・和解委員会副委員長、日本聖公会総主事、日本)
コーディネーターの杉野氏 | 左から杉野氏、キシコフスキー師、 ムバジェ師、ラビディ氏、 キプシジェ師、フォルデルバッハ師、 三鍋師 ★画像をクリックすると大きくなります。 |
ムバジェ:
ウガンダでの解決は、オダマ大司教の活躍によります。反政府側の代表者と対話しました。ウガンダ北部を武力解決しようとしましたができませんでした。
宗教者は、平和に対しての役割があります。政治指導者が、宗教者の声を無視していくならば、道を間違うでしょう。宗教者の声を聞いていくならば、平和への道を歩むことでしょう。
ケニアの選挙では、どちらが勝ったかわかりませんでした。なぜでしょうか? そこには正義がなかったからです。
ケルンで、宗教者のミーティングがありました。環境問題、人口問題、核不拡散問題など、たくさんの問題がありました、その中から、2つだけ取り上げましょう。
①環境問題
男性と女性は、手を取り合って協力していくべきです。女性は最前線で手を上げていろいろな問題と取り組んできました。「地球を守ろう」と。未来の世代に対して共通の責任があります。環境問題に対して、敏感な心を持っているのが女性です。生態系を傷つけず、癒やすべきだと訴えました。女性の声は、ますます重要になってきています。女性が求めてきたのは地球を守るということでした。
②貧困問題
女性を巻き込むことが必要です。女性を単に参加させるということだけではありません。いろいろなプログラムの中に、最初から女性を加えてほしいのです。G8が開催される都会でも、都会の貧困層が拡大しています。どうやって貧しい人々を助けるのか、その人たちの人権を守りながら……。
その他、教育、ジェンダー、子どもたちの教育問題などがあります。
キプシジェ師:
2006年のモスクワ宗教者サミットを準備しました。モスクワ宗教者サミットは、2006年に開催された大きなイベントでした。宗教者がいかに活躍するかでも大きな意味がありました。イスラム教、ユダヤ教、仏教、キリスト教から支援を受けることができました。目標は、グローバルの政策決定する人々に、わたしたちの声が届くようにすることです。日本は「政教分離だから協力できない」と言われました。国際関係で宗教の面が無視されるなら、問題解決はできないで終わる可能性があります。壊れていくことを解決してくためには、宗教的アプローチをとって進めていくことが大切です。
フォルデルバッハ師:
ドイツで行われた宗教者サミットを準備しました。ドイツは70%がキリスト教で、プロテスタントとカトリックです。25%が、どのような宗教にも属していません。これは、東ドイツが共産圏だったことによります。後はイスラム教とユダヤ教です。諸宗教対話は近年始まったばかりですが、提言をするということの歴史は長いのです。平和のための、正義の提言です。ロシアでの会議に感激し、わたしたちもやろうと声をかけました。G8には豊かな国だけが来ているのではないか……ということから、だれを呼ぶか考えました。G8の国の代表者4~5人の他に、G8以外の国、アフリカの代表者も招きました。
ケルンでは2,000以上の個別のイベントが開かれました。“ケルンからの呼びかけ”という名のもとに、提言をまとめました。
左から、キプシジェ師、フォルデルバッハ師、三鍋氏
三鍋氏
ドイツで行われた会議で核不拡散条約が出たとき、奇妙な条約だなと傍聴しながら思いました。すでに核兵器を持っている国は核を持ってよいが、これからは作ってはいけないというのです。これはおかしいと思います。ある国は公に、ある国はこっそりと作り、核は確実に増えています。WCRPは2020年までに核兵器を廃絶するという広島・長崎の市長の声を支持するものです。
世界にものすごい数の核兵器がありながら、広島・長崎以後、核兵器が使われていないということは、広島・長崎がメッセージを発信し続けたからだと思います。
わたしの父、兄、母、姉もみな被爆者で、父はあかつき部隊の嘱託職員でした。被害者の立場からだけでなく、加害者の立場も含めてすべてを見つめ直し、それからはじめて平和を作りだそうとしていこうということこそが、核廃絶への道だと思います。
わたしたちはG8に集まる人々にメッセージを送ろうとしています。宗教者としての立場から、いのちの大切さと回復しましょうとメッセージを送りたいと思います。わたしたちにしかできないメッセージを発信しましょう。
時間が短く、ディスカッションまでにはならなかったのですが、終わりにG8サミットNGOフォーラム貧困開発ユニットリーダーの秦辰也氏から、アピールがありました。
「G8サミットNGOフォーラム貧困開発ユニットには、107団体が登録していて、世界100か国以上にプラットフォームを置いています。一人ひとりがアクションを起こさないと、世界は変わりません。世界の85%は何らかの宗教の信者です。これはすごく強いことです」と、G8諸宗教サミットを開催することに励ましをくださいました。
最後に、WCRP国際委員会事務総長ヴェンドレー氏の閉会のあいさつがあり、集いは終了しました。
秦辰也氏 | ヴェンドレー氏 |
学習会の後で開かれたレセプション | レセプションであいさつする WCRP日本委員会理事長の 庭野日鑛氏(立正校正会会長) |
今まであまりピンと来ていなかったのですが、G8サミットが開催されるということは、とても大きなことなのだということがわかりました。G8サミットが開催されるときのテレビニュースを思い出します。警察が警戒し、NGOなど大勢の人々が集まって、デモなどで大きな騒ぎになっているというニュースがありました。
G8サミットは狭義では首脳会議を指し、7月7日~9日に洞爺湖で開催されますが、その前に日本各地で会議が持たれます。3月には、千葉で気候変動などに関する閣僚級対話が、5月には神戸で環境大臣会合、青森でエネルギー大臣会合、新潟で労働大臣会合が、6月には京都で外務大臣会合、沖縄で科学技術大臣会合、大阪で財務大臣会合などがあり、広義にはそれらも含めてG8サミットと言われるそうです。大きな会議の集合体です。ここに集まる各国の首脳・リーダーたちに訴えるために、世界中から大勢の人が集まってきます。
先日は、カトリック教会の司教たちも集まりG8サミットについての勉強会が開かれました。環境、核、貧困、教育など、いろいろの問題を地球レベルで考える大切な会議に、わたしたちも関心を持ち、国と国の協力によってよりよい世界になるよう、また、会議が無事終了することを願いながら、祈りと行動で支えなくてはと思います。
「G8諸宗教サミット」は、2008年7月1日(火)~4日(金)、札幌コンベンションセンターで開催されます。全体会議や分科会をとおしてG8関連議題の討議を行い、提言書を作成し、G8開催国議長である日本国総理大臣をとおして、G8各国首脳に提出します。さらに、国内外のメディアをとおして、国際社会に向けて発表します。
「北海道洞爺湖サミット」公式サイト http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/toyako08/index.html