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9条世界会議 (4)

2008/06/16

チラシ

「9条世界会議」の2日目、5月5日(月)は会場を国際会議場に移動して、22の会場で6つのシンポジウム、2との特別フォーラム、ワークショップ、パネル討論、ミニライブ、シネマ、ライブハウスなど40以上の分科会が行われました。シンポジウム2「アジアのなかの9条」に参加しましたので、簡単にその様子をご紹介します。





2部 戦争のない世界を創る Creating a world without war

シンポジウム2 アジアの中の9条 -歴史認識と米軍再編を踏まえて -前半-
 
コーディネーター シンポジスト
コーディネーターの権氏(右)と
リスクティンさん
  

コーディネーター:権 赫泰 Kwon Heok Tae
  韓国 聖公会大学

昨日の全体会議では、いかに9条がすばらしいか、その精神がいかに人類の宝物たりうるのか、戦争を世の中からなくすのに憲法9条がいかに有効であるか……について聞いてきた。それは、平和憲法を世界遺産にとか、憲法9条を死守せよ、という言葉に表れている。わたしも賛成するが、それは憲法9条の光の部分だ。それによってわたしたちは希望を見出し、励まされる。しかし、だからこそ、その影、ねじれ、矛盾などについてもしっかりと目を向けなくてはいけない。

たとえば、日本は憲法9条を持っているにもかかわらず、日本を含めて東北アジアは、世界で最も戦争になる可能性が高い地域の一つである。地域としても、平和実現の共通認識どころか、対立・葛藤が頻発している地域でもある。それはなぜか? 日本帝国主義の侵略についての歴史認識の葛藤は、平和憲法が作られて60年以上たった今、ますます悪化している。なぜか?

憲法9条というすばらしい平和精神を持っているにもかかわらず、自衛隊という世界に誇る軍事力を持っていることを、どう解釈するのか。憲法9条の形骸化にし、ないがしろにしてきた日本の社会を、どう理解すればよいのか? 武装を禁じている憲法があるにもかかわらず、日米同盟という名の下で米軍の基地が多く存在している日本現実を、どう理解すればいいのか?

軍事力は、国籍の問題ではないと思う。米軍基地が日本列島に存在している以上、それは日本列島の軍事力となるわけだ。憲法9条があるのに、日本列島はなぜ銃武装を許しているのか。

わたしたちは、憲法9条の“ねじれ”の部分に答えなければいけない。3つの点が手がかりとなる。
1.理念としての憲法9条
2.歴史認識としての憲法9条
植民地化と侵略戦争の問題は、未だに尾を引いていることからも明らかだ。
3.平和憲法周辺地域との関係
周辺地域の犠牲の上に成り立っている。なんらかの形で周辺地域と日本列島の不幸な関係に終止符を打たないかぎり、平和は来ないのではないかと思う。

そのあたりを、5人の方々からご意見を伺いたい。

 

コーディネーター:ニコラ・リスクティン Nicola Liscutin
  ドイツ ロンドン大学・バークベックカレッジ日本学科プログラムディレクター

 

パネリスト:ガス・ミクラット Gus Miclat
  フィリピン 国際対話イニシアティブ

1940年に松岡が日本の憲法を変えていたなら、世界は全く変わっていただろうと思う。1940年のこと。日本のリーダーは、日本国内でもアジアの中でも、大日本共栄圏というものが、欧米の列強国からアジアの国々を守る目的で進められていった。このプロパガンダと現実には大きな乖離があった。日本の行軍は41年12月8日にパールハーバーを攻撃し戦争が始まった。1,800何人の民間人が殺された。日本人の他、欧米人、アジア人がいた。アジア太平洋で2400万人の女性と子ども、多数の犠牲が出た。

ガスさん

日本の場合は、200万人の負傷者が出た。広島・長崎でもたくさんの犠牲者が出た。帝国主義的軍国主義が日本によって進められ、8/6、8/9の原爆投下が行われた。皮肉にも、原爆投下は日本の一般市民に平和を愛する心に火をつけた。その中から生まれたのが平和憲法、第9条である。

これは歴史的な条項であると思う。すべての人間が平和と調和の中で生きなくてはいけない。また、過ちを2度とくり返してはいけないという思いが、そこには込められている。第9条により、日本は発展をとげることができた。経済力を高めることができ、日本の国民は戦争の方へ目を向けず、自分たちの生活の方へ目を向けるようになった。第9条が、日本の繁栄の原動力の一つになったと思う。

大東亜共栄圏では、アメリカの力がおよぶ前にこの地域を独占しようという思いがあった。しかし、日本はもはや戦争によって、他のアジアの国々の領地を取るという必要がなくなった。第1の大きな理由は、第9条があったからと言える。他のアジアの国々にも、平和運動が広まった。フィリピンでも、1997年、市民の力によって、フィリピンにあったアメリカ軍の最大の基地を追い出すことに成功した。その一つの拠り所は、「日本には第9条があるではないか」ということだった。そして、わたしたちの平和憲法を作ろうという運動が起こってきた。

9条は、わたしたちの平和への意志をつなげる一つのシンボルである。第9条が、地域全体の安全保障に直接に関わるのであれば、世界は大きく変わるだろう。すべての国が戦争という手段ではなく、別の手段で、新しい戦争を始めるのではなく、安全保障を勝ち取っていくことができるだろう。

中国、インド、韓国、東南アジアなど多くの国では軍隊を持っているが、自国の国益を守ることのみを考え、軍備化を強化する状況になっている。それが現在の安全保障の基準になっている。

 

ジョセフ・ガーソン Joseph Gerson, U.S.
  アメリカ アメリカンフレンズ奉仕委員会

昨年の夏、安倍首相と改憲の動きに対する反対の参議院議員選挙が行われた。日本の政治が大きく変わったことは、日本のエリートが倒れたことにあると思う。

日本の国民は、最も大きな教訓を15年戦争から学んでいる。軍国主義、超国家主義、国粋主義にある。そのことから平和憲法を守らなければならないことを学んだ。安倍首相と自民党を倒したことは、一つのハードルを倒したことになるが、これは、ただのはじまりにしかすぎない。改憲に対する国民投票をどのようにするかという法律を作ったので、わたしたちは、まだたくさんの危険を持っている。安倍首相と自民党は、彼が退陣した後も、改憲をするという基礎を残した。

ジョセフさん

安倍首相の短い任期の後、福田首相がなったが、かれも改憲の路線にある。改憲は自民党の路線から出ているが、自民党の中でも49%の人が改憲に賛成している。米国のエリート階級は、日本の軍国主義の勃興を支援している。小沢一郎は、日本の自衛隊が国連の平和維持軍に参加すべきだという考えを持っている。ゆっくりとしかし着実に、日本の軍隊の勃興を望んでいる。

冷戦の後、日本は米国の戦略的要塞となった。こうして、元戦犯が権力の座に戻った。現在の米国のアジア対策は、第9条を改定し、または再解釈することを狙っている。

クリントン時代、中国は一つの成長する大国と見られた。日米の状況の中では、世界戦略の中で成長する大国として捉えられた。96年、安保は再提起されガイドラインが作られた。このガイドラインは、日本のアメリカに対しての戦争協力、特にアフガニスタンとイラクに対する協力に寄与した。ブッシュの2期目では、中国を戦略的な競争相手と見ている。北朝鮮の話題も出ている。また、米軍再編成が進み、これによって中国の成長を抑えていこうという政策がとられている。

このような米国の戦略は新しいものではない。1950年代、世界の覇権、とりわけアジアの支配を目ざした。ペリー提督の黒船が日本を開国させ、同時に、米国は朝鮮における米国の理解を主張した。1898年、米国は、米西戦争によって、フィリピン、キューバを手に入れ、50年後の1948年、日本を第2次世界大戦で破り、太平洋を重要な地域と見なした。太平洋は米国の湖となった。そして、日本は米国の最大の同盟者となった。

1952年に安保条約が結ばれ、1960年には改定され、1869年、ニクソン・佐藤会談によって沖縄が返還され、日本の軍事力の台頭は非常に大きくなった。レーガン・鈴木、レーガン・中曽根会談によって、日本の経済的・技術的力を再編成する内容になった。1996年には、クリントン・橋本会議によって、安保再定義が行われた。

9.11以後は、9条を骨抜きにすることを行ってきた。新しいアーミテージレポートでは、日本と米国の貿易協定で日本の安定をはかると言っている。

日本の中には、3つの競合する原則がある。
1.平和憲法
2.日米同盟
3.天皇制の維持、帝国主義・軍国主義の維持

ジョセフさん

日本は、新しい核能力を持つことになった。中国への脅威が、アジアへの軍核競争をあおっている。米国・日本・中国の共同統治を作ることを目ざし、アメリカ主導による、アジア・太平洋支配をこの共同統治機構によって行おうとしている。中国を、米国のMD(ミサイル防衛)網によって包囲し、中国のミサイル無力化を目ざしている。これがブッシュ政権であり、北朝鮮とイランの核ミサイル計画を口実に、また理論的根拠として、アメリカの中東政策に反対する国を阻止しようとしている。

9条とMDの関係について見たいと思う。

日本を、核攻撃の基地にすることが考えられた。6か国協議は、新しい北東アジア地域における、安全保障を作り、日米安保にかわる構想を持っている。日本国民は、もっと強い運動で政府をプッシュしてほしい。米国は、日本にある米軍基地を中国包囲網にあうように、分散多様化している。沖縄では、軍事占領に対する反対が行われてきたが、ワシントンと東京は普天間基地を辺野古に利用しようとしている。こうして米国の軍事力を高めようとしている。沖縄にいる16,000人の海兵隊の8,000人をグアムに移動させたいとしており、ここがより強化されている。グアムは、米国の重要な軍事拠点にされているが、この費用は日本の納税者たちが持っている。これは大きな問題である。

もう一つの対中政策は、フィリピン、インドネシア、オーストラリアを味方につけたことである。オーストラリアを南太平洋の保安官と見ている。引き続き、米国は中国封じ込め政策をとっている。中国は平和的成長を望んでおり、軍事的大国になることは望んでいない。しかし、中国は資本主義にますます移行している。中国の経済がのびればのびるほど、中国共産党は安定していく。

日本と米国のエリートは、日本の国粋主義を感化している。日米同盟は進化、拡大を続けてる。日本の裁判所は、度重なる9条違反に、司法権の行使を避けてきたが、この間、軍事費では、世界第5位に入る軍事大国になった。北朝鮮のミサイル攻撃といいながら、日本は、ロケットを使って中国、朝鮮を狙っている。日本の海軍は、最新の駆逐艦隊を持っており、日本は先制攻撃の能力を持っている。日本は核保有国になることができる。行使していない段階にあるにしか過ぎない。

岸首相は、元戦犯でCIAだったが、60年に日米安保条約を改定した。このとき、アメリカは「旗を見せろ!」ということで日本を動かした。日本の15年戦争は、侵略ではなく進出であると述べ、南京虐殺はなかった、沖縄の島民に軍による強制集団自決がなかったということを教科書に載せている。

9条は、ますます北東アジア、太平洋でますます重要になっている。

文頭の飾り次回に続く。


  「9条世界会議」のサイト http://whynot9.jp

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