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どうしてシスターに?

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シスター マリア・クレメンティーナ

見えない糸に引かれて

シスター マリア・クレメンティーナ


父が4月に92歳でこの世を去りました。母の死後一人暮らしを余儀なくされた父でしたが、庭の花や盆栽の手入れ、そして部屋では書き物をしたり有意義な毎日をすごしていたようです。日記帳、そして2冊のノートにはびっしりと自分の生涯が記されていました。きっと一人暮らしの中で、人生のひとこまをふり返っていたのだと思います。そんな父の書き物を読みながら、わたしも生涯の節目、節目を思いめぐらしています。修道院に入って40年近い歳月が流れました。

ある日職場に2人の修道女が突然入ってこられました。修道女の姿を初めて見たわたしは驚きと好奇心でいっぱいだったことを、今もはっきりと覚えています。大きな黒いカバンの中には本が入っていました。

わたしはこうして、聖パウロ女子修道会と出会い、聖書とも出会いカトリックの信仰、そして修道生活へと導かれたのです。驚きは敬意と変わり、好奇心はわたしを未知の世界へと招き入れてくれたのです。不思議な出会いだったと思わずにはいられません。

「信者として家に留まることを勧めたが、娘の決意は固かった」と、父は胸の内を記しています。教会で話を聞き修道院を訪問したりするうちに、洗礼を受けたい、わたしもあの修道女のようになりたい……。
 たくさんの友達、恵まれた職場、楽しい毎日でした。両親、親戚、友達はみな口をそろえて、なぜ?と猛反対でした。けれどもあの出会いが、わたしを変えたのです。自分の生き方について考えるように、わたしを促したのです。他の生き方もあるんだよ……と。

「娘の決意は固かった」と父が記していますが、多くの反対や困難にもかかわらず、わたしの思いは変わりませんでした。今ふり返って思うことは、神さまが見えない糸で引っ張ってくださったからだと……。40年の流れの中で挫折がまったく無かったわけではありません。「あなたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたを選んだ。」(ヨハネ 15.16 参照)主の言葉に信頼して今日も歩みつづけています。神さまの不思議なわざをたたえつつ……。


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