home修道生活を考えている方へどうしてシスターに?>シスター マリア・テレジア 赤波江滿子

どうしてシスターに?

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シスター マリア・グラツィア 永田かよ子

「主の霊に導かれて」

Sr.永田


1. 幸せを求めて

仏教の家庭で育ったわたしは、父の勧めで旧制女学校に通っていた。その後、洋裁を身に付けるために、2年間学校に通った。卒業後、洋裁店を開くために、友人のお店で見習いとして働かせてもらっていた。

そのときいっしょに働いていた友人から誘われて、初めてカトリック教会に行き、ミサにあずかった。ミサ後、友人が他の人と話していたので、教会の書棚にある1冊の本を手にして、開いてみた。『求道者の要理研究』(ウゴリン・ノル著)。文語体で少し硬い表現だったが、あることばがわたしの心をつかんだ。「人は歓楽を求めるが、必ずその後に悲哀を感じる。それを埋めてくれるものが教会にはある」。休みには映画を見て、ダンスをして帰るのが常であったわたしには、そのことばになぜか魅かれた。そして、「教会に行ってみよう!」とわたしの好奇心は動いた。遠方であるために、「1ヵ月間、毎日来ますので、教えてください」と外国人の神父様にお願いし、公教要理を学んだ。神父様は犠牲をささげつつも、信者さんにはたびたびプレゼントをさしあげておられ、その愛に満ちた生き方に接した。こうして、すべてがわたしに作用して、その年のクリスマスにルチアの霊名で洗礼を受けた。

2. 神の招き

信者の友人とわたしは、元大学教授だった熱心な信者さんから、聖書を学ぶ機会があった。その方が、ある日こんなことをおっしゃった。「女性には三つの生き方があります。1つは社会の中で、独身で働く人。2つ目は、結婚して、家庭を築く人。3つ目は、生涯を神にささげ、修道院に入る生き方です」。シスターを見たことがないわたしは、あまりピンと来なかった。その後、わたしの代母となってくれた信者の友人が修道院に入った。戦中、戦後しばらくは、まだ統制されていて、あまり社会のことは分かっていなかったが、だんだん社会の中の悪というものに気づかされてもいた。

そのころ、わたしは初金曜日に、「十字架の道行」の祈りをしていた。あるとき、第9留の「イエス、三度十字架の下に倒れる」のところで、わたしはハッとさせられた。わたしの心がイエス様の方に向き、お倒れになる様子を思い浮かべながら、心の中でこう祈った。「イエス様、わたしが修道院に入って、もっとたくさんお祈りすることで、あなたの重い十字架をいっしょに担がせてください」。後に、この思いは日ごとに強くなっていくのを感じた。

ある初金曜日に教会に行った際、神父様に「新しい修道会ができたが、行ってみるか?」と言われた。興味があったわたしは、「はい」と答え、その足で修道院に向かった。

修道院というところは、何から何まで黒ずくめで、キビシイ生活をしていると想像していた。しかし、わたしを迎えてくれたイタリア人のシスターが、あずき色のエプロンをしていらして、とても驚いた。また、初めて修道院を訪れたわたしが退屈しないようにと、シスターたちが紙芝居をしてくれた。何だか心が温かくなるのを感じながら、「ここだったら、わたしでも生きていけるかもしれない!」と思った。

「シスターたちといっしょに祈り、働き、イエス様を少しでもお助けしたい」・・・・・・という望みが、大きくなっていった。しかし、この思いをどうやって両親に話そうか、心配になってきた。とうとう話さないわけにはいかなくなり、ある日、母に一生懸命説明して、お願いした。その日以来、母はわたしを見ては泣き、父も「西洋の尼さんになるなんて、許さん!」と言って聞かなかった。後日、親族会議が開かれた。叔父が、「若いし、失敗して帰ってきたら、うちから嫁に出すから。兄さん、ひとまず行かせてやってはどうか・・・・・・」と言ってくれた。そこで、父が折れて、わたしは入会の許可をもらった。

「修道院は寒いでしょうから、ふとんは2枚持って行きなさい」と、母が言ってくれた。縫ったふとんにわたしが綿を入れていると、母も手伝ってくれた。親のありがたさに感動しながら準備をし、こうして、24歳のときにわたしは入会した。

3. 母のように育てくれた修道会

祈ることも十分にできないわたしを育ててくれたのは、修道会、特に宣教女としてやって来た初期のイタリア人のシスターたちだった。あれから、いろいろな使徒職に携わり、「恵みのドラマ」を生きさせていただいた。出会った人々からたくさんのことを学び、今の「わたし」があることに、ただ、ただ、「感謝」ということばしかない。

若い頃、十字架のイエス様に約束したことを思い出しながら、「いつくしみ深い神よ、あなたが愛をもって創られた世界中の人々が、あなたを知り、喜びと幸せを感じますように」と祈りつつ、日々をささげている。


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