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山本神父入門講座

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6. 最初の弟子たちと不思議な大漁

イエスは一人で宣教を始めたが、間もなくイエスの周りにはたくさんの人々が集まるようになった。

「イエスがゲネサレト湖畔に立っておられると、神の言葉を聞こうとして、群衆がその周りに押し寄せて来た。イエスは、二そうの舟が岸にあるのを御覧になった。漁師たちは、舟から上がって網を洗っていた。そこでイエスは、そのうちの一そうであるシモンの持ち舟に乗り、岸から少し漕(こ)ぎ出すようにお頼みになった。そして、腰を下ろして舟から群衆に教え始められた」(ルカ5章1~3節)。

湖
Photo by Hiroko Abe

話を聞く人の数があまり多く、イエス一人ではさばき切れなくなった。そこで、イエスは、始めて宣教活動のために他人の手助けを求めた。シモンの舟に乗せてもらって、群衆と話しやすい距離を置いて、半円形劇場のような形で教え始めた。


話が終わると、イエスはシモンに、沖に漕ぎだして、網を降ろして、漁をするように頼んだ。イエスは漁には素人である。プロの漁師であるシモンは答えた。

「先生、わたしたちは、夜通し苦労しましたが、何もとれませんでした。しかし、お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」。師に対する尊敬に満ちた答である。

「漁師たちがそのとおりにすると、おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった。そこで、もう一そうの舟にいる仲間に合図して、来て手を貸してくれるように頼んだ。彼らは来て、二そうの舟を魚でいっぱいにしたので、舟は沈みそうになった」(ルカ5章5~7節参照))。


これは本当に感動的な場面である。これまで見てきた、イエスの権威といやしの力とをさらに超えて、イエスの存在と言動全体に神の力がみなぎっていることが感じられる。シモンは、神に触れる思いだったに違いない。

「これを見たシモン・ペトロは、イエスの足もとにひれ伏して、『主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者なのです』と言った。……すると、イエスはシモンに言われた。『恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師になる』」(ルカ5章8~10節)。


イエスは回心して、福音を信じるように呼びかけて、人々を神の国へと招いていた。罪を認めたシモン・ペトロから、イエスが離れていくはずはない。神の国に人々を招く宣教活動を、イエスは漁にたとえた。そして、シモンがこれまでの漁師の職業を捨てて、イエスとともにその神の国の漁に加わるように命じたのである。

あまりの大漁に驚いていたシモンの仲間、ゼベダイの子のヤコボもヨハネもともに、「舟を陸に引き上げ、すべてを捨ててイエスに従った」(ルカ5章11節)。

こうして、イエスの宣教は、イエス個人ではなく、イエスを頭とするグループの活動となった。この小さな集団が、後に教会へと発展するのである。


シモン・ペトロは、福音書と使徒言行録を通じて、イエスの一番弟子として描かれている。ゼベダイの子のヤコボ、ヨハネの兄弟も、シモン・ペトロとともに、大切な場面に登場する。この3人が、後に十二使徒と呼ばれるイエスの弟子たちの中心的人物となるのである。

Laudate
注:最後の段落の「使徒言行録」は、新約聖書の一つで、ルカ福音書の著者が、イエス・キリストの復活と昇天後誕生した、初代教会の活躍を記したものです。


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