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 ガイサンシー《蓋山西》とその姉妹たち

2007年3月

ガイサンシー《蓋山西》とその姉妹たち

  • 監督・撮影:班忠義
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  • 製作:山上徹二郎、班忠義
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  • 音楽演奏:盂県民間楽隊
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  • 出演:陳 林桃、侯 巧蓮、李 秀梅
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  • 配給:シグロ

2007年 日本映画 80分


監督の班さんは、1987年に留学生として日本に来たとき、中国で習った歴史と、何もなかったかのように過ごしている日本の状態がまったく違っていることから、中国残留婦人の存在を知り『曽おばさんの海』(朝日新聞社刊)を書き、第7回ノンフィクション朝日ジャーナル大賞を受賞しました。その後、中国人の従軍慰安婦たちに出会い、長編ドキュメンタリー映画「ガイサンシーとその姉妹たち」が完成しました。班監督は、映画の完成披露上映会で開かれた記念シンポジウムで次のように語っています

班忠義監督
班忠義監督

「1992年、東京で開かれた集会で、日中戦争当時、日本軍兵士から性的暴力を受けた中国人女性たちの証言と身体の傷を見て衝撃を受けた。山西省の高原に広がる貧しい農村に10年間通い続けました。現地では日本人への怒りが大きくなっています。しかし、日本の若い人はそれを知りません。中国の人がどうしてそんなに怒るのか、分からないのです。この現実を、若い人々に知らせたいと思い映画を作りました。

1995年、日本人の男性と一緒に現地に入りました。日本軍兵士から性的暴力を受けた女性たちは、「日本人」と聞いただけでたばこを持つ手が震え、その灰が落ちても分からない状態でした。女性たちとの信頼関係を作っていくことを第一に心がけました。辛さをかみしめないと未来は変わりません。辛さを乗り越え、この歴史を鏡にして未来を築いていくのだと思います。」

「蓋山西(ガイサンシー)」とは、山西省一番の美人を言います。蓋山西と呼ばれた侯冬娥(コウ トウガ)さんは、美人というだけでなく、同じ状況に置かれた自分よりも年下の女性たちのために兵士に訴え、時には身代わりとなって守りました。彼女の母のような美しい心に対しても付けられた名です。彼女の存在を知り、彼女に会うために現地に入りますが、すでに彼女は自らの命を断ち、会うことはかないませんでした。班さんは、彼女によって助けられた女性たちや村の人々にインタビューしながら、彼女たちから慕われている蓋山西の姿を浮き上がらせていきます。と同時に、日本軍の横暴な実体があらわになってきます。兵士たちの欲望を満たすために、人生を奪われてしまった若い女性たち。二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、その後も今に至るまで彼女たちに負わさてきた現実を、しっかりと受け止める必要があると思います。

穏やかな班監督が話を聞き出すことによって、彼女たちの傷ついた心が少しでも癒されたのなら、それはせめてもの救いです。


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