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第28回 イエスの公生活の神秘 –(1)
イエス・キリストについて、ご一緒に学んでいますが、今日から、公生活に入りましょう。
3 イエスの公生活の神秘
◆イエスの洗礼
イエスの公生活は、ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられたときから始まりました。イエスが悔い改める必要のある罪人の中に入り、洗礼を受けたのは、「世の罪を取り除く神の小羊」として、十字架上での死の「洗礼」を受け入れられたことを示しています。このイエスに父なる神は、「これはわたしの愛する子である。彼に聞け」という天からの声をもって、答えられました。
洗礼を受けたイエスの上に、聖霊が降り、とどまります。こうして、アダムが罪によって閉ざした天の門が、今、イエスに向かって開かれたのです。
私たちも、洗礼によってキリストとともに水に下り、イエスとともに水から上がり、神から愛される子となり、新しいいのちに生きるものとなるのです。
◆イエスの誘惑
ヨハネから洗礼を受けられたイエスは、聖霊に導かれ、荒れ野に導かれ、40日間断食した後、サタンの試みを受けられました。この誘惑は、人祖アダムが受けた誘惑と、荒れ野を旅したイスラエルの民が受けたすべての誘惑を凝縮したものでした。しかし、不従順なアダムの罪と、荒れ野でのイスラエルの民の不従順に対し、イエスは従順な神のしもべであることを表されました。神へのまったき信頼と従順によって、悪魔からの誘惑を、すべて退けられたのです。私たちは、毎年、四旬節の40日間、イエスのこの荒れ野での出来事に思いをはせるのです。
◆「神の国は近づいた」
宣教生活を始める時がきたことを知ったイエスは、ガリラヤに行き、「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」と第一声をあげることによって、神の国がすでにこの地上で始まったことを宣言されました。キリストは、神の国の到来を、特に、十字架上の死と復活という過越の神秘によって実現されました。この神の国は、イエスを中心に集まる人々によって実現されます。この集まりが「教会」であり、教会は、この地上における「神の国」の萌芽なのです。私たち、そしてすべての人は、キリストとひとつになり、神の国に入るように招かれています。
◆神の国の告知
神の国は、まずイスラエルの民に知らされました。それには、イエスのことばを受け入れなければなりませんでした。神の国は、謙遜な心で迎え入れる「貧しい人々」「小さい人々」のものです。イエスはベツレヘムでお生まれになったときから、十字架上での死まで、ご自分の体験すべてが、貧しい人の生活でした。さらに、イエスはご自分が貧しい人々とともに生活されるだけではなく、貧しい人々が神のみを求めて生きるという生き方を、神の国に入る条件となさったのです。
イエスは、「わたしが来たのは、正しい人々を招くためではなく、罪びとを招くためである」とおっしゃいました。イエスの生涯は、私たちすべての人の罪がゆるされ、神の国に入ることができるように、罪人の回心を求めるものでした。そのために、最後には、ご自分のいのちをおささげになったのです。
イエスは、神の国について、多くの話をなさいました。それは、ほとんどが「たとえ話」という形で語られています。特に、マタイ13章には「天の国のたとえ話」がたくさん書かれています。マタイは、「神の国」を「天の国」と表現します。
この「たとえ話」は、読む私たちに、「神の国」に入るようにイエスが促しておられるように感じます。と同時に、私たちに「神の国」に入る決断をするように迫っておられます。「神の国」に入るために、あなたは何を捨てることができますか。「神の国」に入るためにいただいた能力などすべてのものを、どのように使っていますか。これらのたとえ話の核心に隠されている「天の国の秘密」を悟るために、私たちはキリストの弟子になることが求められているのです。
◆神の国のしるし
聖書を読むと、イエスが多くの奇跡を行われたことがわかります。これらの奇跡は、神の国がイエスのうちに到来していることを示すものです。この奇跡は、ある人には神への信仰を表明する機会となりますが、ある人にとってはつまずきのもととなりました。
イエスは、パンを増やして人々を飢えから救い、病気や死からさえも解放することによって、救い主・メシアとしてのしるしを表されました。しかし、イエスがこの奇跡をおこなわれたのは、この世のすべての不幸をなくすためではなく、罪の奴隷となっている私たちを解放するためでした。イエスが悪魔を追い払われた奇跡は、悪霊に支配されている人々を解放するためでした。これは、この世の支配者に対するイエスの決定的勝利を先取りしているものです。神の国は、キリストの十字架によって打ち立てられ、キリストは、悪の支配に打ち勝たれたのです。
次回もイエスの公生活の続きをご一緒に見ることにいたしましょう。