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第157回 人間の尊重
第3項 社会正義
社会正義とは何でしょうか。
社会正義は、共通善と権威の行使に密接にかかわりを持っています。
では、社会が社会正義を実現するのは、いつでしょうか。
それは、各団体や個人が、それぞれの本性やその人特有の使命をまっとうするために必要な条件を満たすときです。
その条件とは、第1に人間の尊厳が尊重されること。
第2に人間間の平等と相違が認められていること。
第3にさまざまな分野における人間の連帯があること、です。
1 人間の尊重
社会正義は、人間の尊厳を尊重することなしには得られないものです。なぜなら、社会が目指すべき究極の目的は、人間だからです。
人間を尊重することのいちばんの土台にあるものは、私たち人間を創造されたのは神なのだ、ということにあります。ですから、人間の尊重には、神の創造に基づく種々の権利を尊重することが、当然含まれているのです。これらの権利は、社会より前に存在し、社会より上位にあるものです。さらにこれらの権利は、あらゆる権利の倫理的正当性の土台となる重要なものです。
多くの善意の人々に、これらの権利を思い起こさせ、過度な要求、誤った要求と、これらの権利との相違を明らかにすることは、教会に委ねられている務めです。
人間の尊重の原理は、私たち一人ひとりが隣人を例外なく「もうひとりの自分」と考えることにあります。さらに、隣人の生活を人間にふさわしいものに保つために、必要な手段を講じなければなりません。
真に兄弟的な社会を築くために障害となる恐れ、偏見、傲慢、利己主義などをなくすことはできません。このような態度は、私たち一人ひとりが、一人ひとりの人を「隣人」、兄弟姉妹としてみなす愛がなければ、なくなることはありません。
わたしたちが他人の隣人となり、積極的に奉仕する義務は、その人が貧しい状態に陥ったときには、いっそうの義務となります。
この義務は、同じ仲間にだけ果たされる、というものではありません。キリストが私たちに生きるようにと、与えてくださった福音・特に新しいおきては、私たちに害を及ぼす敵にまで及ぶ義務なのです。