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 陰陽師

2001年10月

陰陽師

  • 監督:滝田洋二郎
  • 原作:夢枕 獏(文藝春秋刊)
  • 脚本:福田 靖、夢枕 獏、江良 至
  • 音楽:梅林 茂
  • 出演:野村萬斎、伊藤英明、真田広之、小泉今日子、夏川結衣

2001年 日本映画 116分


カッコイイ! キレイ! と、アッという間の2時間で、引き込まれて見てしまいました。この映画のメッセージは、これです。「人は心一つで、オニにもホトケにもなる。」

数年前から、「陰陽師」の人気が続いていますね。今年の春には、NHKがドラマ化しました。それも、毎週しっかり見ました。NHKの方では、阿倍清明は稲垣吾郎、源博雅が杉本哲太が演じ、映画とはだいぶイメージが違いますが、一話一話の展開が工夫されていておもしろく、人間の思いとか霊についていろいろと考えてしまいました。

納得できない死に方をした人の思い(霊)が、この世に残っている。悲しみを抱えて亡くなった人が、気づいてくれない相手を求めて、毎夜さまよう。昔人間は、そういう霊のようなものに対して敏感だったのではないでしょうか。現代は、あまりにも科学的になってしまい、時間的にも余裕がなくてゆとりがなく、人間のそういう能力が鈍くなってしまったように思います。また、現代人には他人への思い、慰めの心が欠けてきてしまったようにも思います。霊に気づくということは、本来は人間だれにでも備わっている能力ではないかと……。

            *     *     *     *    *

映画の「陰陽師」は、その思いを裏切りませんでした。プラス「呪(しゅ)」がありました。相手への恨みが「呪」となります。その恨みがさらにひどくなって押さえきれなくなると「鬼」となり、相手を滅ぼそうとする。安倍清明と道尊との陰陽師同志の「呪」の対決。いわば、祈りの力の対決です。

150年前、兄の帝への恨みを抱いて亡くなった弟親王の祟りを恐れて祀った「将軍塚」が、道尊によって破られ、親王の恨みが塚からあふれ出て平安京の空を覆い、その恨みは、次々と兵士たちに乗り移っていきます。恨みの力というのは、こんなにも大きなものなのかと考えさせられます。

そして、映画「陰陽師」では、それぞれの役者さんのよさを見させてもらいました。陰陽師の野村萬斎は、立ち居姿が美しく、舞う姿も優雅でした。3Gが、その美しさをさらに高めます。祈る姿も、一心で真剣さがすごい! 源博雅の伊藤英明は、清純な青年の美しさ、人間の持っている優しさを出していました。清明が「博雅は、よい男だなぁ~」と何度も言いますが、素直にそう思わせてくれます。道尊の真田広之は、存在感がありその演技の深さを感じました。すっかり“大俳優”ですね。青音(あおね)の小泉今日子は、若い時のキョンキョンのかわいらしさではなく、大人の落ち着いた美しさが出ていました。150年も生きて過ぎゆく世の中を見てきたことからくる、すべてを包み込む人間の大きさを感じる演技でした。そして、酒を交わしながら味わう、清明と博雅の友情。2人の顔のアップで、友情のすばらしさを十分感じました。

流れていく“時”を味わう心、人と人との関わりを味わう心、人の心の中にあるいろいろな思いを見つめる心。 現代人はそれらを失っていますね。人間のすばらしさ、優しさを取り戻せたらと思います。

博雅が吹く笛の音とともに、なんともうれしい気持ちになる「陰陽師」でした。

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