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 約束 ラ・プロミッセ

2001年12月

LE MONDE DE MARTY

僕の

  • 監督:ドニ・バルディオ
  • 出演:ミシェル・セロー、ジョナサン・ドゥマルジェ
  • 脚本:アレクサンドル・ジャフレイ、ドニ・バルディオ
  • 音楽:アレクサンドル・ジャフレイ

2000年度 フランス映画 89分


人と人との関係が希薄になってきている現代社会ですが、人から思われているということは、こんなにもうれしいことなのか……、ということをしみじみと感じ、希望を持たせてくれる映画です

物語

アントワーヌ・ベラン(ミシェル・セロー)の病室。ベランは、脳内出血のためアルツハイマー型痴呆症になり、目を開けたり閉じたりすること以外、 体のどの部分も自分で動かすことができない長期入院患者で、話すこともできません。

朝目覚めると、介護士たちが来てベットからイスに体を移動させてくれますが、介護士らは、ベランは何も感じないのだと思い、乱暴に扱います。 日中は彼の奥さんがやってきます。奥さんは、編み物をしながらベランに話かけますが、彼が理解しているとは思っていません。ただ一人、若い看護婦のミリアムだけはベランに話しかけ、やさしく接してくれます。ミリアムが病室に来るとベランの心は躍ります。

集中治療室のベッドにいる10歳のマルタン(ジョナサン・ドゥマルジェ)。みんなは彼のことをマーティーと呼んでいます。集中治療室のガラス窓からは、担当医とママが話しているのが見えます。医師の唇の動きから、マーティーは自分の病気が楽観視できないことを知ります。彼は小児癌でした。

集中治療室から普通の病室に移ったマーティーは、誰もいない病室に忍びこんでは、有料テレビ用の小銭を盗んだりして、子どもの有り余っているエネルギーを、病院の中で吐き出していました。

ある日、マーティーは407号室に忍び込みます。そこはベランの部屋でした。ベランが動けないことを知ったマーティーは、引き出しを開けて古い家族写真を持ち出したり、有料テレビを見るための小銭が入っている小ビンの中から、お金を盗み出したりします。編み物をしていた奥さんは、すっかり眠り込んでしまい、マーティーが入って来たことに気づきません。ベランは大声で奥さんを呼びます。「シュザンヌ、シュザンヌ、悪ガキだ! はやく目を覚ませ!」しかし唇も動かないし、声も出せません。ただ、目をパチパチさせるだけで、マーティーが部屋から出ていくのを黙って見ているしかありません。「クソッ、このガキ!」

マーティーは、ベランの部屋に通うようになります。マーティーにとって、何も言わないベランは、スーパーマンのようにカッコいい存在なのです。しかしベランは、勝手に自分に話しかけ、いろいろなおもちゃやぬいぐるみを運んでくるマーティーを、うるさい存在と感じています。「オイオイまた来たか。少し静かにさせてくれ。」

自分で動かないベランは、マーティーにとって格好の遊び相手です。自分の思い通りにベランを扱うことができるからです。ある日は、ベランの腕をひもで吊って動かし、看護士たちを驚かせ、とうとう407号室への出入りを禁止されてしまいます。しかし、夜中に忍び込み、ベランの横のベットで安心して眠るマーティーを見て、ママは寂しいマーティーにとって、ベランが必要な存在であることを感じ、彼と同室してほしいと担当医に懇願します。

僕の

マーティーはベランを遊び相手にし、病院中の患者も巻き込んで病院の中庭でサッカーをしたり、遊びはさらにエスカレートしていきます。最初はうっとうしく思っていたベランも、自分とかかわってくれる少年の無邪気さに、マーティーをいとおしく思うようになります。マーティーは、ベランのまばたきから「イエス」「ノー」を見分ける方法を見つけ、会話ができるようになります。 2人の心は近づいていきます。

マーティーは、体が動かなくても皆と一緒に生きることができることをベラン自身や病院の人たちに教え、誰も思いつかないような大きな大きなプレゼントをベランにします。

死と孤独を目の前にした老人と少年。ベランは言います。「約束しておくれ、いつまでもいつまでも生き続けると……。」言葉がなくても通じ合い、互いの心を分かり合えるようになったとき、2人に悲しい分かれがやってきます。

 

主役の、身動きひとつできない老人を演じたミシェル・セローという俳優さん、すごいですね。本当に表情ひとつ変えることなく、ズーッと同じなのです。しかし、マーティーと心が通じ合うようになってから、マーティーの心憎いプレゼントに驚いたり、死を間近にしたマーティーを膝に抱きながら、悲しい表情を出すようになります。

人との関わりって、スゴイですね。そして、ステキですね。大切に思う人がいる、自分を思ってくれる人がいる。この関わりが「愛」ですし、人間なのでしょう。

最後に、自分の意志を伝えることができず、孤独の中にいたベランにとって、マーティーは天使だったのでしょうネ。

人間の心の深い部分を描いたこの映画は、30歳という若さの監督の最初の作品です。

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