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 プロミス

2002年7月

Promises

プロミス

  • 監督・プロデューサー:ジャスティーン・シャピロ、B.Z.ゴールドバーグ
  • 共同監督・編集:カルロス・ボラド

2001年 アメリカ 104分

  • 文部科学賞推薦


  • 第74回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー部門ノミネート
  • 2001年ロッテルダム国際映画祭 観客賞
  • 2001年ロカルノ国際映画祭 世界教会運動特別審査員賞
  • 2001年バンクーバー国際映画祭 観客賞、多様性スピリット賞
  • 2001年サンフランシスコ国際映画祭 ベスト・ドキュメンタリー賞、観客賞
  • 2001年ミュンヘン国際映画祭 表現の自由賞
  • 2001年エルサレム国際映画祭 映画祭特別賞
  • 2001年ハンプトン国際映画祭 ベスト・ドキュメンタリー賞
  • 2001年ヴァラドリド国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞
  • 2001年サンパウロ国際映画祭 観客賞、ベスト・ドキュメンタリー賞

幾度となく平和への道を歩もうとしながら、自爆テロなどにより、いっこうに解決の道がみえないパレスチナ情勢ですが、この映画は、現在の緊張状態になる以前の、1997年~2000年にかけて撮影されました。

共同監督のゴールドバーグは、ボストンの生まれですが、子ども時代をイスラエルで過ごしました。嘆きの壁にいろいろなことを祈りに行ったそうです。ニューヨーク大学で映像を学び、ジャーナリストとして再びパレスチナに戻りました。彼が生まれる前から、イスラエルとパレスチナの対立は続いています。爆弾が家族や友達の命を奪っていくという日常の中で、小さな子どもたちはどのようにくらしているのか、平和についてどう考えているのか、互いをどう思っているのか。「紛争と和平の狭間にいる子どもたちの声が聞きたい」と、ゴールドバーグたちは、彼らの中に入っていきました。

この映画には、テレビのニュースでは知ることのできない子どもたちの生活や考えが、しっかりと映し出されています。イスラエルに住んでいたゴールドバーグ氏を親しく感じて、子どもたちは心を開いて自分の思いを語っています。

登場するのは、男の子6人、女の子1人の計7人です。彼らは、距離にしてたった20分という近いところに住んでいるのですが、エルサレムに入るためには検問所があり、交流は全くありません。

しかし、ゴールドバーグたちの努力により、難民キャンプにいる子どもたちが検問所を通り、エルサレムにいる子どもたちと会う機会が作られました。そこで、一緒に遊び、語り合い楽しいひとときを過ごしました。分かれた後、また一緒に遊びたい……と感想をもらします。希望の光が見えたのですが、その後、悲しいことに、現在の厳しい状況になってしまったのです。

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■子どもたち

ファラジ
デヘイジャ難民キャンプに住む。 イスラエル兵に殺された友達の敵討ちをしたいと思っている。「いつか必ず、この土地を取り戻してやる。」
ヤルコとダニエル
西エルサレム(イスラエル人地区)に住む。
双子の兄弟。祖父はドイツのユダヤ人強制収容所の体験者。
「仲良く暮らせばいいのに。」「殺し合ってバカみたいだ。」

サナベル(女の子)
デヘイジャ難民キャンプに住む。
ジャーナリストの父親は、2年間、刑務所に抑留されている。
「エルサレムへはたった10分だけれど、一度も行ったことがない。検問所のせい。」

シュロモ
旧市街の中のユダヤ人地区に住む。
超正統派ユダヤ教徒なので兵役免除。国からの給付金で神学校に通い、1日12時間、トーラー(モーゼ五書)を勉強している。
彼らの気持は分かる。しかし、アラブ人と友達にはなれない。

マハムード
東エルサレム(パレスチナ人地区)に住む。
ハマス(イスラム抵抗運動)を支持。父親は、旧市街のイスラム人地区で三代に渡り香辛料とコーヒーの店を開いている。
「ここは絶対アラブ人の土地だ。ここで生まれ育ったのは、ぼくらだ。」

モイセ

ベイト・エル入植地に住む。
将来はイスラエル軍の最高司令官になり、アラブ人をエルサレムから追い出したい。
「ここは、ユダヤ人の地だ。」


 

どの子も、信じられないほどしっかりとした考えを持っています。生まれた時から厳しい環境の中にいるからなのでしょうか、すごいなと思ってしまいます。

マハムードの会堂で祈る姿は、迫力があります。小さな大人という感じで、その考えはみじんもゆるぎません。彼の考えを変えることはできないのでしょうか。

サナベルは、おばちゃんが昔住んでいた場所を、おばあちゃんと一緒に尋ねます。廃墟になっている家の跡で祈るおばあちゃんの祈りは、信仰者の強さを感じさせられました。

子どもたちは、これからも相手を憎しみの対象としてしか見ないのでしょうか、それとも、共に生きる仲間として見ることができるのでしょうか?

彼らをいつくしむように見る、ゴールドバーグの子どもたちへの温かいまなざしが 印象的です。未来を生きる子どもたちのことを考えるために、多くの方々に見ていただきたい映画です。

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