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 白い船

2002年7月

白い船

  • 監督・監督:錦織良成
  • 音楽:角松敏生
  • 出演:中村麻美、濱田岳、中村嘉葎雄、大滝秀治、
          尾実としのり、竜雷太

2002年 日本映画 108分


これは、実際にあったお話です。

物語

舞台は、島根県の平田市塩津小学校。海と山に囲まれた小さな漁村の小学校です。日本海を見下ろす山の斜面に建てられた塩津小学校は、全校生徒わずか17名。この春から赴任した静香(中村麻美)は、電車とバスを乗り継いで通っています。

静香のクラスは、5、6年生の合同クラス。放課後、「子ども神楽」の練習をしている 6年生の好平(濱田岳)は、海が大好き。休みの日には 祖父の貫平(中村嘉葎雄)の漁船に乗り、最近は船の操縦が上手になったとほめられました。しかしこのところ、好平は授業中にボーっと 窓の外ばかり見ています。来年は中学ですが、6年生が一人だけなので競争心に欠けているのではないかと、静香は心配しています。

好平は、水平線の上を動く白い物体が気になっていたのです。「あれは、何だろう……、船だろうか? 」その物体は、2日に一度、決まった時刻に表れます。好平の話を聞いて、他のクラスの児童も、先生たちも海の向こうを見つめます。校長先生が調べてくれて、博多と直江津の間を行き来する フェリー「れいんぼうらぶ」の定期船だとわかりました。双眼鏡でもよく見えません。望遠鏡を持ち込んで、フェリーの姿が見えるようになりました。

静香の提案で、子どもたちは船長さんに手紙を書きました。船長(竜雷太)さんから、キーホルダーのお土産が入った手紙が届きました。この時から、子どもたちとフェリーの文通が始まりました。フェリーの客室ロビーには、塩津小学校の掲示コーナーができました。

校長先生は、もっと近くで「れいんぼうらぶ」の姿を見せてあげたいと、船長に漁港への寄港をお願いしますが、お客さんを無事に運ぶのが使命ですからと断られてしまいます。しかし、ある日、船長さんから電話が入りました。「れいんぼうらぶ」が航路を変えて、これから学校の近くを通るというのです。「私たちの船をよく見てください」と、船長さんは言いました。

「大きいな!」、「きれいだな!」子どもたちの歓声が響きます。授業そっちのけで先生たちも窓に駆け寄って手を振ります。フェリーは「ボー」っと、汽笛で応えてくれました。今まで、見たこともない大きな船でした。真っ白な船体が、波にまぶしく輝いています。「乗ってみたいな。」好平の夢はふくらみます。好平の家では、「れいんぼうらぶ」の話で持ちきりです。曾祖父の林太郎(大滝秀治)が「おれも乗りて~な~」と言うと、サラリーマンのお父さんはじめ、次々に「乗りてえ」と言い出しました。

「れいんぼうらぶ」に乗りたいという 好平の思いは、日ごとに強くなります。ある朝、好平は授業をさぼり、5年生の司と暁をさそって、貫平の船で沖に出ていきます。しかし、台風が近づいていました。激しくなる雨風の中、不安になった好平たちの前に 突然白い壁が現れました。「れいんぼうらぶ」の船体です。その大きさに好平たちは驚きます。助けにきてくれた貫平おじいちゃんや漁師たちのお陰で、好平たちは、無事港に戻ることができました。父を海で亡くした林太郎は、好平の体を抱いて生還を喜びます。

この事件があってから、先生と親たちは、子どもたちを「れいんぼうらぶ」に乗せてあげたいと相談し始めます。しかし、教育委員会の許可はでませんでした。この動きを知った新聞記者の森脇(尾実としのり)も、子どもたちの夢をかなえてあげたいと、「れいんぼうらぶ」と子どもたちの交流を新聞記事に取り上げます。

そして夏休みのある日、夢は実現しました。

 

1ストーリーは単純なのですが、その背景に描かれている子どもたちの夢、夢をかなえてあげたいと動く大人たちの思い、互いの心を、山と海との自然の中で、監督は丁寧に描いています。代々続いている漁師の町、伝統芸能も、長老たちから若い世代へと受け継がれています。親子3代が(主人公の好平の家は 4代です)暮らしている大家族。みな漁師ですから、地域の人々と助け合って暮らしています。地域が一つになっているという感じです。

子どもたちが憧れの「れいんぼうらぶ」に乗り、自分たちの学校を見るため、甲板に出たとき、思いがけない光景を目にします。港中の漁船が大漁旗をはためかせて「れいんぼうらぶ」に近づいてきたのです。思いがけない歓迎。子どもたちは、漁船から手を振る親たちに向かって「お~~~~い!」「お~~~~い!」と手を振ります。木々の間に見える校舎からも、留守番の教頭先生が旗を振っています。港の岸壁には、林太郎はじめ、母親たちの姿がありました。

 「ただ、船から手を振るだけなのに、どうして、涙がでるんだろう。」

静香も、必死で手を振ります。この場面は感動的で、私たちも涙、涙です。子どもたちをどうやって教えていったらいいのかという問題をかかえていた静香は、塩津の暖かい人たちの中で、次第に自信を取り戻していきます。

こんな自然の美しい所で、こういう暖かい人々の間で過ごせたらいいな~~~なんて、思ってしまいます。

親が子を思う、先生が生徒を思う、地域の大人が子どもたちを思う……、人が人を思う心というものがジワジワと伝わってきて、ジーンときます。また、大勢の人が心を一つにしてある事に向かうという姿が、涙腺を刺激します。

映画の終了後に流れるクレジットを見ていると、「協力」のところで、「子ども神楽 塩津っ子クラブ」の次に、たくさんの「船頭部」という名前が出てきました。塩津、美保、河下、釜浦などなど。そしてそれぞれに船頭さんの名前と「○○丸」という船の名前が載っていました。たくさんの地域の方々の協力でできた映画だということが伝わってきます。映画の中のことは、映画作りでも実際に行われたのだと思うと、人と人の結びつきの暖かさに、またまたジ~ンと来てしまいました。きっと、この映画の監督はじめスタッフ、キャストの方々は、平田市のたくさんの方々との交流に励まされて、幸せな映画作りを体験したことでしょう。

人間のひたむきな思い、ピュアな心を描いたすばらしい映画です。心がきれいになっていく感じです。

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