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 旅立ちの汽笛

2002年9月

The CHIMP

旅立ちの汽笛

  • 監督:アクタン・アブディカリコフ
  • 出演:ミルラン・アブディカリコフ、ズィリキシー・ザキボフ

2001年 フランス=キルギス=日本共同製作 90分

  • 2002年フェストロイア国際映画祭“銀のいるか”賞受賞
  • 2001年カンヌ国際映画祭<ある視点>部門正式出品
  • 2001年東京国際映画祭コンペティション部門正式出品

めずらしいキルギス(現キルギス共和国)の映画です。この地域は、アジアとヨーロッパを結ぶシルクロードにあたり、昔から、さまざまな国の人々が行き交っていました。映画の中でも、日本人かと思うようなアジア系の人、東欧系の人など、さまざまな人種が登場します。それらの人々が、日常の生活の中で、ごく自然につきあっている姿が驚きでした。日本でも、ブラジルやフィリピンの子どもたちが、中学生、高校生と成長しています。日本人の中に他の国の子どもたちがいるという姿から、クラス の中に、いろいろな人種の人たちがいるという姿に変わってくるんだろうな……、そんな未来の若者たちの姿を想像しながら見ていました。

旅立ちの汽笛

物語

キルギスには、兵役があります。映画は、兵役前の身体検査から、兵役に入るために列車に乗って旅立つまでの、ある少年の青春のひとこまを追っています。

17歳のチンプ(ミルラン・アブディカリコフ)は、身体検査を終えて家に戻ってきました。夜、寝ているチンプは、母親から起こされます。酔って帰ってきた父親(ズィリキシー・ザキボフ)が、また、バイクをどこかへ置き忘れてきたようです。チンプは、眠たい目をこすりながら、バイクを探しに街へ出ます。

バイクを見つけて家に戻ってみると、父と母は猛ケンカをしていました。妹は涙を浮かべて、両親のケンカを見ています。

兵役を前にした男の子たちの興味は、なんといっても異性です。靴の上に、小さな鏡を乗せて女の子のスカートの中をのぞいたり、夜のダンスパーティーで、女の子の前でかっこつけてみたり……。チンプにも好きな子がいますが、なかなか思いがつうじません。彼らは、グループとして集まり楽しんでいます。

旅立ちの汽笛

チンプは、鉄道の整備を手伝っています。リーダーと他の男性2人とチンプの4人で、いつも整備に向かいます。しかし、他の男性はふまじめで、なかなか仕事にとりかかろうとはしません。

ある晩、チンプは妹とじゃれながら、母親の夕食のしたくを手伝っていました。3人で笑いながら楽しい時を過ごしていると、めずらしくお酒の入っていない父親が帰ってきました。仲のよい3人の姿を見て、「うるさい!」と不機嫌です。

父親の酒癖の悪さに耐えられなくなった母親は、子どもたちを連れて家を出ることにしました。3人はバスに乗り込みましたが、出発する直前、チンプは「職場に仕事をやめることを言ってくる」とバスから降ります。

母親と妹がいなくなり、がらんとした家の中に、肩を落とした父親がいます。妻の突然の家出に、あぜんとする父親。その横にチンプはそっと座わります。

チンプは列車に乗り、兵役へと向かうのでした。

 

はじめて見る広大なキルギスの自然は、ちょっと渇いていて土っぽい感じです。列車が一日数本しか通らない路線の整備の仕事も、いったい何をしているのか……というほど少ししか働いていません。時間の流れがゆっくりとしたキルギス。友達との関わりの中で、職場の大人たちの中で、両親の不和をとおして、チンプはいろいろなことを感じていきます。男女のこと、親子のこと、仕事のこと、そして人生……。

少年から大人になろうとしていく少年の姿を、淡々と描いているのが印象的です。

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