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 阿弥陀堂だより

2002年10月

阿弥陀堂だより

  • 監督・脚本:小泉堯史
  • 原作:南木 佳士(文藝春秋刊)
  • 音楽:加古隆
  • 出演:寺尾聰、樋口可南子、北林 谷栄、小西真奈美

2002年 日本映画 128分


東京で暮らしていた夫婦が、美しい自然に囲まれた信州で暮らしはじめるところから、映画ははじまります。どうして、引っ越してきたの? 都会の生活に慣れた人がここで一生を暮らせるの? そんな疑問をいだきながら見はじめました。

最先端医療に携わっていた医師・美智子を、樋口可南子がさわやかに演じています。心の病にかかった妻をやさしく見守る夫は寺尾聰で、彼の味わいが出ています。91歳を越えた北林谷栄も、地ではないかと思うくらい自然です。

2人を迎える村の人々の温かい心に接しながら、美智子は今までの生き方を振り返ります。美智子の姿に、がんばって走ってきてちょっと息切れがしている日本の姿が重なります。

物語

東京の大学病院で、最先端医療の医師として忙しくも充実した日々を送っていた美智子は、流産がきっかけでパニック障害という原因不明の心の病気になりました。夫の孝夫は、新人賞は取ったものの、なかなか売れない小説家。美智子の治療を考え、2人は、孝夫の故郷・信州で暮らすことにしました。

無医村で、美智子は週に数日ということで、診療所を開きます。

ゆったりとした村の人々の生活、美しい緑、元気な子どもたち、町を見下ろす山の中腹にある阿弥陀堂を守っている老婆のおうめ(北林谷栄)ばあさん、ガンと闘っている孝夫の中学校の恩師・幸田とその妻(田村高広、香川京子)、これらの人々と接しながら、美智子は少しづつ、自分の生き方を取り戻していきます。

阿弥陀堂だより

2人が 96歳のおうめばあさんを訪ねたとき、話すことのできない難病を患っている小百合(小西真奈美)と出会います。小百合は、おうめばあさんが日々思うことを書き留め、村の広報誌「阿弥陀堂だより」のコラムに連載していました。その小百合の状態が悪化し、町の大きな病院に入院しましたが、手術をしなければ危なくなりました。その手術を、美智子は東京で幾度か経験していますが、病院の医師には、はじめての手術でした。美智子は、小百合のために再びメスを握る決意をします。

 

夜、いろりを囲んだ夕食の場面をはじめ、2人で過ごすシーンが美しい自然の中で印象的です。樋口・寺尾夫婦が、大人の夫婦のいい味わいを出しています。仕事も生活も充実して、自分を出し切って忙しく過ごしてきたけれど、長い人生の途中でちょっと立ち止まって、周囲を見たり考えたりする時が必要じゃないの? そんな呼びかけを感じました。

長野県の飯山で、四季をとおして撮影した美しい映像です。診療所や、阿弥陀堂でのお祈りの場面には、現地の人々が出演して、そのシーンはドキュメンタリータッチな場面となっていて、ほのぼのとした映画になりました。南木 佳士の作品の雰囲気を、映画でもそのまま感じました。

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