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 1票のラブレター

2003年1月

Secret Ballat

1票のラブレター

  • 出演:監督・脚本:ババク・パヤミ
  • 出演:ナシム・アブディ、シラス・アビディ、その他キシュ島の住民たち

2001年 イラン=イタリア合作映画 100分

  • 2001年東京フィルメックス映画祭正式出品作品(上映題「票の重み」)
  • 2001年ヴェネチア国際映画祭5部門受賞
  • 2001年ロンドン映画祭FIPRESCI賞受賞
  • 2001年サンプロ国際映画祭特別審査委員賞受賞
  • 2001年プロビンスタウン映画祭観客賞受賞
  • 2001年ヴァリャドリッド国際映画祭最優秀新人監督賞受賞
  • 2002年ロッテルダム国際映画祭NETAPAC賞特別賞受賞

ババク・パヤミ監督は、イラクのテヘラン出身の、1966年生まれという若手の監督です。カナダのトロント大学で映画を学び、98年、イランに帰国しました。2000年に「ワン・モア・デイ」という長編映画でデビュー。次に制作された本作品の「1票のラブレター」で、見事、ヴェネチア映画祭監督賞を受賞し、イランの次の世代を担う国際的映画監督として期待されています。

この映画は、マフバルマフ監督の着想を二人で話し合っている中で煮詰められ、バミヤ監督がメガホンを取りました。民主主義を求めて、住民の投票のために島中を駆けめぐる選挙管理委員の女の子と、彼女を乗せたジープの運転手である島の警備兵の、朝から夕方までのできごとを追ったドラマです。主演している2人は、まったくの素人とか。

物語

飛行機から、落下傘をつけた木箱が落ちてきた。その箱を所定の場所に運んだ警備兵は、砂浜に直接置かれている2段ベッドで仮眠中の兵士と勤務を交代する。

美しい水平線の青い海と白い砂浜。ここは、ペルシャ湾にあるキシュ島。交代した警備兵は、木箱を見て、今日が選挙の日だったと思い出す。それは、投票箱だった。そこへ、船に乗って、選挙管理委員の女の子が砂浜に上がってくる。船は、夕方の5時に迎えに来る。その時間までに、彼女は、この島の住民の票を集めるのだ。

警備兵は、女の子をジープに乗せて島を回る役目だが、選挙管理委員がなぜ男性でないのか、この役目をなぜ自分がしなくてはならないのか、不満だ。そんな彼を横目に、女の子は、出会う人出会う人に声をかけては候補者のリストを見せ、住民票のようなものにゴム印を押し、投票させることに一所懸命だ。彼女は、選挙によって民主主義の社会がやってくると信じ、新しい社会に期待している。彼女の熱心さに触れながら、警備兵も、次第に力を貸すようになる。

しかし、島民の選挙認識と意識は低い。トラックの荷台に乗って、大勢の女性たちが投票にやってきた。しかし、字が書けないからと、連れてきた男性が代表で投票しようとする。船の上に人を見つけて追いかけると、そこには、外国に嫁いで違法で出国しようとしている小さな女の子がいた。二人は、彼女を助けるために走る。出産を手伝っている女性たちからは、自分では決められない、男性に聞かないと書けないと言われる。ある集落の人々を投票させるために、女地主を説得しようとするが、簡単に断られる。ここでは彼女が仕切っているから、議員を選ぶ必要がないのだ。投票を勧めることは、大変な仕事だ。

やがて、帰る時間が近づき、帰路を急ぐ。警備兵は、砂漠の真ん中のある赤信号で車を止まらせた。しかし、女の子は、車が来ないこんな場所にある信号機は無意味だから従う必要はないと出発を急がせる。「法を守るために投票活動をやってきたのに、ここでは、法を破るのか」と、警備兵は責める。信号機は、故障していたのだ。

海辺に戻り船を待つが、やってこない。どうやら、船は行ってしまったようだ。警備兵は、自分も投票すると言ってペンを取る。彼は、用紙に女の子の名前を書く。「きみの他には、だれも知らない。」と、そのとき、爆音が聞こえ、砂浜の向こうに巨大なジェット機が姿を表す。女の子は、迎えの飛行機に乗るために、砂地を走っていく。

警備の交代の時間だが、警備兵は眠れないからと続けて見張りに立ち、じっと海を見つめる。

 

女の子は、文明を象徴するようなジェット機に乗って帰っていってしまいました。警備兵の淡い恋心は、実るのでしょうか……。この映画では、女性の方が、社会を考えて活発に活動しています。健気な彼女。

水平線の青い海と真っ白い砂浜。映画「カンダハール」で見た砂地が広がる世界より、もっともっと簡素な構図とゆったりとしたテンポが印象的です。砂地にポツンと建っている家と井戸。砂漠と海だけの世界だから見える、人間の心。人間社会の大切な部分は、すごく単純だよ……と言っているようです。そして、男女の恋も。不思議なさわやかさを感じる映画です。

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