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 バティニョールおじさん

2003年1月

Monsieur Batignole

バティニョールおじさん

  • 監督・脚本:ジェラール・ジュニョ
  • 出演:ジェラール・ジュニョ、ジュール・シトリュック、
          ミシェル・ガルシア

2002年 フランス映画 103分

  • 第10回フランス映画祭横浜正式出品作品
  • 2002年モントリオール映画祭正式出品作品
  • 文部科学省推薦

「ぼくの神様」は、1942年のポーランドで、ナチス支配下で信条を偽ってでも生きることを選んだユダヤ人の少年のお話でした。「バティニョールおじさん」も、同じ1942年が設定されています。フランスで、同じくナチスの支配に苦しむユダヤ人の子どもたちをスイスに避難させる、気のいい肉屋のおじさんのお話です。

自分の命を危険にさらしても、差別されている人たちに対して助けの手を差し伸べることができるのだろうか……。それをさりげなく行ってしまうフランスの田舎の人々を見ていると、私にもできるかもしれないと、勇気がわいてくる映画です。

昨年公開された「ぼくの神様」(ポーランド)、「この素晴らしき世界」(チェコ)、そして今年公開の「バティニョールおじさん」(フランス)と、ナチス軍からユダヤ人を救った、勇気ある市民を描いた作品が続きますね。

物語

1942年、ナチスに占領されたパリ。小さな肉屋のバティニョール(ジェラール・ジュニョ)は、妻のマリグリット(ミシェル・ガルシア)、娘のミショリーヌ、そして、将来の娘婿で劇作家のピエールと、つつましく暮らしていた。

ある朝、肉屋の地下から、ソーセージが盗まれた。バティニョールは、隣に住む外科医のバーンスタインの息子が犯人ではないかと思い、バーンスタインのドアをノックする。バーンスタイン一家はユダヤ人で、偽装の住民票や洗礼証明書を手に入れ、スイスへ逃亡しようと車に乗ったが、息子のシモン(ジュール・シトリュック)が忘れたヴァイオリンを取りに、バーンスタインはちょうど部屋へ戻ったところだった。

バティニョールがバーンスタインと論争している間に、娘婿のピエールはナチスに密告し、バーンスタイン一家は検挙されてしまう。ナチス軍に協力でき誇らしげなピエール。一方、自分のやったことがナチスの検挙に荷担していたことを知り、唖然とするバティニョール。

ナチス軍の支持者であるピエールは、上手にナチス軍の将校らに取り入り、バティニョール一家は、バーンスタイン一家が住んでいた豪華な部屋を手に入れ、また、将校たちのパーティーの御用達となり、生活は豊かになっていく。

ドイツ軍のパーティーの日、逃げてきたシモンをドアの外に見つけたバティニョールは、家族に隠れて女中部屋へシモンをかくまう。シモンは、列車に乗せられるとき、父親から「走れ!」と言われ、ひたすら走って逃げてきたのだった。バティニョールは、「外に出てはいけない」ときつく言いつけるが、シモンは天窓から屋根に出て、近所の子どもたちと遊んだりする。そこへ、シモンの従妹2人も合流することになった。

もはや隠しきれなくなってきたと悟ったバティニョールは、彼らをスイスへ逃がそうとするが、そのためには大金が必要だ。彼は、バーンスタインが逃げる前に、家具の中にルノワールの絵を隠したことを思い出す。その家具は、今は大佐のオフィスにある。バティニョールは、オフィスに忍び込み絵を手に入れるが、大佐の秘書に目撃されてしまう。怪しんだ大佐が、家に電話をかけてきた。

バティニョールは、地下室に子どもたちを隠すが、電話で事情を知ったピエールに見つかってしまう。子どもたちをナチス軍に突き出そうとするピエールから逃れることができないとわかったバティニョールは……、彼を殺す。

ルノワールの絵を現金に換えたバティニョールは、その中からいくらかをミショリーヌに渡し、マリグリットを連れて兄弟の農場へ逃げるよう促す。そして自らは、3人の子どもたちをスイスに送り届けようと決心する。

列車に乗って、バティニョールと子どもたちの旅がはじまった。列車を降り、山道を歩き続ける。国境近くの農場では、夫を戦地で亡くした親切な母と子に助けられ、山越えを手伝ってくれる司祭を紹介してもらう。こうやって、いく人ものユダヤ人が国境を越えたのだった。

3人は、司祭の助けを得て山を越え、自由が待っているスイスが見えるところまでやってきた。

 

ナチス軍に連行されるユダヤ人たちを助けた人は、フランスにもいました。この映画では、ほんの小さな行動で、検挙されるユダヤ人たちを助け、ナチス軍の行いに抵抗する庶民の姿が、随所に出てきます。こういう人たちの勇気ある行動によって、どのくらいのユダヤ人たちが救われたのでしょう。スイスとの国境へ向かって山道を登る3人の姿には、「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ家族の山越えが重なります。

うだつの上がらない、人のいいバティニョールおじさん。バティニョールおじさんより、ちょっと賢いシモン。2人のやり取りが、また見ものです。シモン役のジュール・シトリュック君のあの目で見つめられたら、誰でも、助けずにはいられないでしょう。

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