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 SWEET SIXTEEN

2003年2月

SWEET SIXTEEN

  • 監督:ケン・ローチ
  • 脚本:ポール・ラヴァティ
  • 音楽:ジョージ・フェントン
  • 出演:マーティン・コムストン、ウィリアム・ルアン、
        ゲイリー・マコーマック、アンマリー・フルトン、
        ミッシェル・クルター

2002年 イギリス・ドイツ・スペイン映画 106分

  • 2002年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞受賞

見終わった後、「すごい映画だ!」の一言でした。日本でも、少年犯罪で「15歳」という年齢が問題になっていますが、この映画の主人公も、わずか15歳の少年です。

映画の舞台はスコットランドですが、麻薬が日本より日常的になっているという背景があります。

物語

天体望遠鏡で、小さな子どもたちに土星を見せてあげている15歳のリアム(マーティン・コムストン)と親友のピンボール(ウィリアム・ルアン)。なんてやさしい地域のお兄ちゃん……うと思う面もあるが、子どもたちからしっかりと料金をとって星を見せるというしたたかさも持っていた。昼間は、パブの客めあてにたばこを売って小銭をかせいでいる。二人とも、学校へは行っていない。

リアムの母親ジーン(ミッシェル・クルター)は、彼女の恋人のスタン(ゲイリー・マコーマック)の身代わりで、刑務所に入っているが、リアムが16歳になる誕生日の前の日に、出所の予定だ。その日まで、後2か月。

面会のため刑務所へやってきたリアムは、スタンから、ドラッグを歯の裏に隠すよう要求される。母親に渡して、刑務所で売らせるためだ。しかしリアムは、それを断る。ばれたら、ジーンの出所が延びるからだ。刑務所からの帰り道、スタンからひどく殴られる。スタンは、ドラッグの売人である。

怒ったスタンから家を出されたリアムは、姉のシャンテル(アンマリー・フルトン)の所へ行く。シャンテルは未婚の母として、小さなカルムを育てながら、夜学に通って生活を立て直そうとしていた。リアムの傷の手当をするシャンテルは、すぐケンカをするリアムが心配でならない。シャンテルは、リアムが今の生活から抜け出すよう切望している。

シャンテルは母親をゆるしていない。しかし、リアムは、ジーンが出所してきたら、ジーンとシャンテルとカルムと4人で一緒に暮らしたいと思っている。

シャンテルとリアム姉弟、親友のピンボールは、養護施設で育ったようだ。シャンテルと母親との間には、何かあったようだ。リアムの父親はどうしたのだろう。ピンボールの家族は……? 登場人物たちは、みな哀しい過去を持っているようだ。

ピンボールが盗んだ車に乗って走っているとき、湖畔に建つ小さな家が売りに出されているのを見つける。リアムは、この家で4人が暮らすことを思い描く。スタンから逃れるためにも、リアムはこの家がどうしても必要だった。リアムの思いを知ったシャンテルは、母親はリアムが思っているような人ではないと諭す。

お金を得るために、リアムは、スタンの麻薬を盗み、売りさばく。少しお金がたまり、手付け金を払って湖畔の家の鍵を手に入れる。しかし、まだまだお金は足りない。大金を得るため、麻薬販売の元締めビッグ・ジェイの客を横取りしようとする。危険すぎるとピンボールは必死に止めるが、反対にリアムは、ビッグ・ジェイから認められ、仕事を任せられるようになる。しかし、そのために、ピンボールと手を切るよう、ビッグ・ジェイから求められる。

ピンボールにとってリアムは、たった一人の身内だった。無二の親友を裏切って大物からの信頼を受けて麻薬の世界の大道を上っていくか、それともお金をあきらめて友情を選ぶか。リアムは、ビッグ・ジェイの要求に苦しむ。

悩むリアムがピンボールを訪ねると、ビッグ・ジェイが自分を排除しようと感じているピンボールは、たまたま持っていたリアムのナイフで、自らを傷つけてしまう。ピンボールは、救急車で運ばれていく。

リアムは、ビッグ・ジェイの申し出を受け、表向きはピザを配達しながら、裏ではドラッグを売るというピザ屋の経営をはじめる。順調に大金を手にし、さらに、ビッグ・ジェイの高級な部屋を提供されるまでになる。

待ちかねたジーンの出所の日がやってきた。リアムはバッチリとスーツに身を固めて、ジーンを出迎え、新しい自分たちの家にジーンを連れていく。その夜は、出所祝いのパーティーが開かれた。母親に会うことを拒んでいたシャンテルも、カルムを連れてやってきた。リアムは、夢がかなって満足だ。

翌朝、リアムが目ざめるとジーンの姿が見あたらない。シャンテルが追い出したと思ったリアムは、姉をののしる。シャンテルには、こうなることははじめからわかっていたのだ。

スタンの家に行ったリアムは、そこでジーンを見つける。「どうして、ここにいるんだ」と問いつめるリアムに、ジーンには答えることができない。家を手に入れるまで、辛いこともじっと絶え冷静に判断してきたリアムだったが、スタンの誇らしげな顔に怒りを爆発させ、彼を刺してしまう。

浜を歩くリアムは、シャンテルから携帯電話を受ける。「警察があなたを捜しているわ……。今日はあなたの16歳の誕生日よ。愛しているわ。」

 

母親を慕う子どもを、暖かく抱き締めることができたら、どんなに幸せでしょう。しかし、彼の前には、子どもには理解できない大人の世界が横たわっていました。「人間って、苦しいね……。」なんとも切ない映画です。

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