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 朋の時間 ~母たちの季節~

2003年3月

朋の時間

  • 監督・撮影・編集:西山正啓
  • 音楽:ウォン・ウィンツァン
  • 語り:上田早苗

2003年 日本映画 123分


芝桜が大好きなクンちゃんは、お天気がいいので、公園にやってきました。じゅうたんを敷き詰めたように咲いている芝桜が、赤紫のきれいな色を輝かせています。あたりには、い~い香がただよっています。お母さんが、うれしそうに語りかけます。


「クンちゃん、いい匂いだね。ね、いい匂いでしょ。」

お母さんは、クンちゃんの小さな体を抱き上げて、一面に咲いている芝桜の花の中に寝かせました。「うううう~ん」 クンちゃんは顔をくしゃくしゃにして、喜びを表現しています。真横に向いた顔は、小さな芝桜の花びらに埋もれていました。

30歳の誕生日を迎えるクンちゃんことサカタクニオさんとお母さんは、進行性の難病による重度障害者の通所施設“訪問の家「朋」”に通っています。「朋」には、心身に重い障害のある人たちが、横浜市全域から通ってきます。クンちゃんのお母さんは焼鳥屋をしていましたが、クンちゃんのために焼鳥屋をやめ、クンちゃんの世話に専念しています。

“訪問の家「朋」”は、どんなに重い障害があっても、一人の若者として暮らし、楽しい青春時代を送らせたいという親たちの大きな願いから生まれました。この映画は、社会法人“訪問の家「朋」”の母親たちの17年間の心の軌跡を追ったドキュメンタリー映画です。

 

この映画を見ていると、「朋」に通っている子どもたちは、親やスタッフから十分に愛されているので、その愛が、子どもたちにかかわる人々に、次々と伝わっていき、子どもたちのまわりには、愛がたちこめているというイメージが浮かんできます。親から愛されている重度障害の子どもたちは、どの人の心にも必ずある「愛する」という心を呼び起こしていくようです。

クンちゃんのお母さんは言います。
 「周りの人に『大変ね』『大変だね』と言われる。しかし、何が大変なんだろうと思う。他の子どもたちは、大人になったら親から離れていく。しかし、クニは私から離れていくことはない。いつまでも、私と一緒にいる。こんなに幸せなことはない。」

一緒に死んでくれる人をネットで探す若者がいる一方で、「共に生きる」すばらしさの真っ直中にいる人々を、この映画は示していきます。なんて幸せな子どもたち、そして、なんて幸せな親たち。
 「生きるって、すばらしいね」と、温かく肩をたたいてもらったような気がしました。


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