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 CAPA in Love & War

2003年6月

キャパ イン・ラブ・アンド・ウォー

CAPA

  • 監督・製作・脚本:アン・メークピース
  •   
  • 出演:イザベラ・ロッセリーニ、スティーブン・スピルバーグ、
         フランソワーズ・ジロー、アンリ・カルティエ・ブレッソン
  •   
  • 音響:ジュディ・カープ

2002年 アメリカ映画 90分

  • 2003年サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門ノミネート作品

ロバート・キャパと言えばえば、銃弾を受けた共和国軍兵士が倒れる瞬間を撮影した写真で有名です。この映画は、キャパの愛と仕事に賭ける情熱を描いたもので、彼が撮影した多くの写真と、当時のニュース映像、彼の友人たちの証言によって構成されたドキュメンタリー作品です。彫りの深い顔だちと映画俳優のような格好良さ、そして、ドラマのような人生でした。

キャパは、ハンガリー生まれのユダヤ人で、本名はアンドレ・フリードマン。国を追われて難民となり、ハンガリーからベルリンへ、そしてパリにたどり着きます。パリでの生活は苦しかったのですが、恋人のゲルダ・タローと一緒に考えた写真家としての名前「ロバート・キャパ」を名乗ってから、活躍するようになります。

40年の短い人生の間に、3つの大陸で5つの大戦争を撮影しました。戦地では、自ら軍服を着、飛行機から飛び降り、前線にいる兵士たちの側から、戦争を見据え、死と隣り合わせの戦地での体験から、平和を訴え続けました。

私生活でも、ドラマが展開されます。イングリット・バーグマンの娘、イザベラ・ロッセリーニは、バーグマンとキャパの関係を語ります。バーグマンは、キャパとの結婚を望んでいましたが、戦争写真家はいつ何がおきるかわからないと語るキャパの言葉に、バーグマンは深く傷つきました。この時の二人の苦しみが、アルフレッド・ヒッチコック監督の「裏窓」で描かれています。

キャパが撮影したベトナム戦争での海岸の写真を参考に、スティーブン・スピルバーグ監督は、映画「プライベート・ライアン」のオープニング・シーンを撮影しました。

その他に親しい友人として、ヘミングウェイ、パブロ・ピカソとの関係も出てきます。

ハリウッドに渡ったキャパは、腕はいいのになかなか仕事にありつけない写真家たちに仕事を紹介するため、また写真家の著作権を守るために、写真家組織団“マグナム”を結成します。多くの写真家が登録し、この組織を通して、彼らは広く活躍することができるようになりました。キャパは「おやじ」として仲間の面倒を見、写真家としてではなく、経営者として働きます。

キャパは日本にも来たことがあり、戦後の日本の市民たちの生活を、温かい眼差しで撮影しています。子どもを撮影するときは、ひざをかがめ、子どもの目線になってシャッターを押しました。

1954年、日本で仕事をしているときに、雑誌「ライフ」からインドシナ戦争に行って欲しいと依頼され、ベトナムに向かいます。身を守るため、常に兵士たちと行動を共にしていましたが、少しだけ離れたときに地雷を踏み、帰らぬ人となりました。映画では、地雷を踏む直前まで撮影していたモノクロの写真が紹介されます。その直後に彼が亡くなったのかと思うと、感慨深いものがあります。

キャパは、居住した地域でも、撮影した場所でも、考え方でも、生きた文化でも、まさにグローバルでした。この映画を見ていると、キャパの生き方や考え方のすばらしさに感動するとともに、彼が生きた20世紀の世界を知ることができ、歴史が意味することを語る貴重なフィルムになっていることに気づきます。キャパの偉大な働きの結果である戦争の写真をとおして、キャパが求めていた平和への思いも伝わってきます。

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