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 ドバルダーン! エレファント

2003年7月

こんにちは、ぞうさん!

ドバルダーン!

  • 監督:門田得三
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  • 撮影:押切隆世
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  • 出演:瀧原愛、鈴木陸、内藤舞、内藤慧、田島栄次、
         加瀬三郎、八代真吾、パッチ・アダムスと楽しい仲間たち
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  • ナレーター:余 貴美子
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  • 音楽:つのだ たかし

2003年 日本映画 102分


「ドバルダーン! エレファント」とは、クロアチア語で「こんにちは、ぞうさん!」の意味です。この映画は、旧ユーゴの内戦の影響で、クロアチアのオシエク動物園に象がいなくなったことを知った日本の子どもたちが、象をクロアチアの子どもたちに贈ろうとした活動を撮影したものです。門田監督自身が、愛情と力を込めて、この活動のために働きました。

ことの発端は、盲目の折り紙作家・加瀬三郎さんの「折り紙の動物園」にあります。旧ユーゴの内戦のとき、クロアチアのオシエク動物園では、戦乱を避けて、ハンガリーへ動物たちを疎開させました。疎開の様子を取材したフォトジャーナリストの田島栄次さんから、動物のいない動物園の話を聞いた加瀬さんは、オシエク動物園で、折り紙による動物園を開くことにしました。加瀬さんの作った300種類の動物は、多くの子どもたちに喜ばれました。その中でも人気のあったのが、象の折り紙でした。

その後、日本に帰った田島さんと加瀬さんのもとに、クロアチアの子どもたちが描いた象の絵が300点、送られてきました。その絵には、「ほんものの象が見たい!」「象さん、おいで!」というメッセージが書かれていました。クロアチアの子どもたちは、絵本やテレビでしか、象を知らないのです。

田島さんと加瀬さんは、学校を回っては、「折り紙で動物園」のことや象を待っているクロアチアの子どもたちのことを話しました。その話を聞いた子どもたちとそのお母さんたちの中から、「クロアチアの子どもたちに、象を贈ろう」という草の根キャンペーンが、1999年に始まりました。そして、この動きをフィルムにおさめることにしました。

かつて日本でも、第2次世界大戦の後、インドのネール首相から、日本の子どもたちに象が贈られたことがありました。象のインディラは日本の町々をめぐり、戦争に傷ついた子どもたちの心を癒しました。そのことを覚えている大人の人たちは、今、戦いで傷ついているクロアチアの子どもたちを、きっと、人間が好きでやさしい象によって、いやされるだろうと思ったのでした。

高校生の瀧原愛と手塚透(八代真吾)は、インディラを見た人たちに、当時の話を聞いて歩きます。その歩みの中で、広島の火を、今も大切に持っている男性に出会います。火は、原爆で燃えていた家の残り火から取ったものでした。その男性の辛い話を聞きながら、透は、この火をクロアチアに届けることが、自分の平和への祈りだと思い、その火をもらい受けます。

クロアチアに象を贈るという活動は、4年間で全国に広がり、多くの署名と募金が集まりました。子どもとおとなたちの代表は、象の国スリランカに行き、大統領に象を贈ってくださいとお願いしました。

大統領からの許可がおり、大学生になった愛、小学生の鈴木陸と内藤舞、舞の兄で中学生の慧、田島さん、加瀬さん、そしてフリーターの透は、スリランカに渡ります。孤児の象の中からクマリーとミヒンドゥの2頭が選ばれ、クロアチアまでは、4名の象使いなどスリランカから8名の専門家が付いていくことになりました。

ドバルダーン!

象は集団で暮らしているので、その中から2頭を引き離すのは、大変なことでした。いよいよ出発の日、クマリーとミヒンドゥはきれいに飾ってもらい、パレードが行われました。

愛たち一行は、クマリーとミヒンドゥより一足先に、セルビアに渡りました。彼らは、ただ象を贈るのではなく、セルビアからドナウ川にそってクロアチアに入り、オシエク動物園までの200kmを、象と一緒に歩いて行くことにしたのです。「エレファント・ロード」です。

しかし、セルビアに着いた一行は、クロアチアが象の輸入を許可しないので、スリランカから2頭を送り出すことができない、という知らせを受けます。落胆する一行。田島さんは、クロアチアの政府にかけあおうとしますが、一度決まったら、無理だと言われます。

しかし、これであきらめるわけにはいきません。「今は難しいかもしれないけれど、いつかきっと……」という希望を抱いて、一行は「自分たちだけでもエレファント・ロードを歩こう」と出発します。

国境を越え、美しい草原を進みます。しかし、そこにはボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアの痛ましい戦いの跡が随所にありました。途中、アメリカ人の医師のパッチ・アダムスと楽しい仲間たちも加わります。

ついに、彼らはオシエク動物園に着き、クロアチアの子どもたちやおとなたちの大歓迎を受けます。一行は、クマリーとミヒンドゥの飾りをかぶり、2頭のために用意された囲いに入っていきます。いつか、きっと本物の象が来ることを願いながら……。

 

内戦の銃弾が残る廃墟で、透が携帯カイロに入れて大事に持ってきた火がランプに灯され、その前で、パッチ・アダムスさんがつくったパフォーマンスが披露されます。原爆を落とした国、また、今も戦争をしかけている国の人として、パッチ・アダムスさんは、広島の火の前にぬかずきます。印象深い姿でした。そして、透が日本からスリランカを経てクロアチアまで保ってきた火は、パッチ・アダムスさんに手渡されます。

戦争で傷んだ心に受けた優しさを、今度は、他の子どもたちへ……と、平和のために心を尽くす人たちの姿に、真の平和への歩みとはこういうものだと教えられる思いがしました。一人ひとりの平和を求める心が集まらなければ、平和を築くことはできません。

パッチ・アダムスさんは、あいさつの中で、次のように言いました。「自分本位になりがちな世界の中で、愛と寛大な心を伝える映画を作ることは、とても難しいことです。政府間のやり取りではなく、一つの国の人が、他の国の人のために働くという、人と人との関わりを描いたこの映画をとおして、愛を伝えるためのこのプロジェクトが伝わりますように。」

今回は象を届けることはできなかったけれど、この映画をきっかけにして、いつか実現しますようにと願いました。

音楽は、女子パウロ会からCDを出しているアンサンブル・エクレジアのリーダー、つのだたかし氏です。

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