お薦めシネマ
ホストタウン
2004年4月
- 監督・製作・編集:小栗謙一
- 製作総指揮:細川佳代子
- 音楽・作曲・編曲:井上鑑
- 登場人物:エイミー・パーセル、リンジー・パーセル、
パディ・パーセル、梅澤花美、中川美季、末吉恵理子
2004年 日本映画 101分
2003年、スペシャルオリンピックス夏季世界大会が、アイルランドのダブリンで開かれました。大会に参加した日本人選手たちは、ホストタウンであるニューブリッジという町で、大歓迎を受けました。この町に住む18年のダウン症の女の子が、この映画の主人公です。彼女の生活、家族を中心に、世界大会の様子を交えたドキュメンタリー映画「ホストタウン」が、完成しました。海外で、日本人がこのように暖かく迎えられていたことをはじめて知り、うれしくなりました。
「ホストタウン」の公開を前にして、主人公のエイミーと家族が来日し、製作総指揮者の細川佳代子さんと監督の小栗謙一氏、日本の体操選手の梅澤花美さんも加わって、記者会見が行われました。
細川さん、小栗監督とエイミー一家、花美さん
▼細川佳代子さんのあいさつ
スペシャルオリンピックスをとおして、スポーツに触れることをとおして、意識革命運動をしている。映画で多くの人に伝えたいと思い、「エイブル」第2弾として製作しました。障害者は暗くない、支え合えればこんなに明るいんだということを見ていただきたい。
▼小栗謙一さんのあいさつ
3か月という時間を費やして撮影してきた。エイミー一家の中に入り込んで撮った映像の中に、兄弟姉妹とのかかわり、両親とのかかわりが見えてくるだろう。この映画の中で、エイミーの妹のリンジーの存在が大きかった。障害者とともに生きる社会が、この先どう変わっていくのか、見続けていきたい。
物語
アイルランドの首都ダブリンの郊外にある小さな町、ニューブリッジに住むエイミーは18歳。知的障害を伴うダウン症だが、がんばり屋でいつも明るく愛情深い女の子だ。陸軍軍曹のお父さんと優しいお母さんには12人の子どもがいて、エイミーは9番目の子どもとして生まれた。エイミーが生まれたころ、お父さんはアルコール依存症だった。エイミーの次に生まれたリンジーも、生後10か月で脳性麻痺と診断された。母さんはエイミーとリンジーを育てることに不安だったが、お父さんに頼ることができず、子どもたちに支えられて2人を育ててきた。今は、頼りがいのあるたくましいお母さんだ。
エイミー | リンジー |
2年前、養護学校から普通学校に編入したエイミーは、セクレタリーになることを夢見て、トレーニングセンターで電話受付の訓練をしている。しかし、電話の取り次ぎは難しく、何回同じことを言われても対応の仕方を覚えることができず苦労している。
反対にリンジーは、普通学校に通っていたが、今は養護学校に通っている。普通学校で辛い目にあったリンジーは、障害を持つ仲間といるほうが、心がつうじあえて安心なのだと言う。そんなリンジーは、エイミーの思いを伝える役目をしている。
エイミーは、スペシャルオリンピックスで活躍する体操選手だ。2003年6月に開催される第11回スペシャルオリンピックス夏季世界大会に出場することをめざして練習してきたが、選考からはずれてしまった。ちょっと落ち込んだが、すぐ元気を取り戻し、選手たちをサポートする側にまわった。
この大会で、エイミーの町は、日本のホストタウンとなった。町が一つになって、日本人選手を迎えるために準備がはじまった。エイミーの家は大家族なので、ホストファミリーになることはできなかったが、エイミーと同い年でダウン症のケビンの家では、水泳選手の美希と恵理子が宿泊する。
ニューブリッジの町に、日本とアイルランドの国旗が飾られ、歓迎ムードが高まっていく。大会を数日後にひかえたある日、2台のバスに乗った日本人選手たちが到着し、町をあげての歓迎会が開かれた。エイミーは体操選手で、同じダウン症の花美とすぐ仲良しになった。
花美さん
エイミーとリンジーは、開会式を見るため、家族と一緒に列車に乗ってダブリンにやってきた。はじめて見る世界大会に、エイミーは夢中になった。体操の演技をする花美を力を込めて応援した。言葉は通じなくても、心はすぐ通じ合えるのだ。
大会が終わり、日本の国旗も片づけられた。今日も、エイミーは受付に座って、電話の応対をしている
自分に自信を持って毎日を過ごしているエイミーの優しい笑顔に接しながら、障害って何だろうと思いました。記者会見が終わって、記者たちに向けてビデオカメラを回すエイミーと、車椅子を押してもらっているリンジーを見ながら、2人とも家族からとても愛されている……と感じました。
2005年の2月、アジアではじめてのスペシャルオリンピックス世界大会が、長野で開催されます。花美さんたち選手は、世界大会を目指して、今日も練習を重ねています。