home>シスターのお薦め>お薦めシネマ>プリンス&プリンセス
お薦めシネマ
プリンス&プリンセス
2004年7月
Princes et Princesses
- 監督・脚本:ミッシェル・オスロ
- 音楽:クリスチャン・メイル
- 日本語吹替:原田知世、松尾貴史
1999年 フランスアニメーション映画 70分
- 文部科学省選定
- 2001年シカゴ国際児童映画祭 成人審査員賞・児童審員査賞受賞
昨年の夏、話題となったアニメ「キリクと魔女」のミッシェル・オスロ監督が作った、6つの国のプリンスとプリンセスの物語。「キリクと魔女」と同じく、繊細な影絵と光の美しさが、子どもばかりでなく大人の心にも、想像の世界を広げます。グリム童話やアンデルセン童話など、すでに昔から広く語り継がれているプリンスとプリンセスの物語ではありません。男の子と女の子が、たくさんの物語を知っている映写技師のおじさんといっしょに、6つの物語を作っていきます。
「いつの時代に行こうかね」
「どの国にしようかな」
「どういう、プリンス、プリンセスがいいかな」
映写技師のおじさんの質問に答えながら、子どもたちは、登場人物の服装や物語の背景を決めていきます。
たとえば、エジプトという国の古い時代の話にしようとすると、「当時のプリンセスは、こういう服装でこういうヘアスタイルをしているよ」と、映写技師はエジプトの壁画に描かれている当時の絵を見せます。それを参考にして、男の子と女の子は、主人公のスタイルを決めていきます。想像力を働かせて、楽しい物語を考えます。そもそも、この作品は、一話づつ放送のテレビドラマとして作られたものです。
映写技師のおじさんが尋ねます。
「準備はいいかな」
子どもたちは、ワクワクしながら、大きな声で答えます。
「はい!」
さあ、物語のはじまり、はじまり。
物語
いくつかをご紹介しましょう。
第1話:プリンセスとダイアモンド
魔法をかけられた美しいプリンセス。彼女は砂時計を持ったまま、動くことができません。彼女の魔法をとくには、草原の中にちらばった111個のダイヤモンドを探し出さなくてはなりません。制限時間は3分。失敗すれば、アリになってしまいます。一人のプリンスがやってきました。プリンセスは、ダイヤにさわってはいけないと伝えます。迷うプリンス。しかし、彼はダイヤに手をのばしました。
プリンセスは尋ねます。
「なぜ、さわったの?」
「あなたを助けたい!」
ひとつ、ふたつ、……。ああ、時間が迫ってきます。彼も、アリにされてしまうのでしょうか? そのとき、思いもよらぬことがおきました。
第2話:少年のいちじく
舞台は、古い時代のエジプト。一人の少年がイチジクの木に住んでいました。そのイチジクの木が、冬だというのに実をつけました。少年は、このめずらしいイチジクの実を、プリンセスに食べてもらおうとお城へでやってきます。わがままなプリンセスは、少年がうやうやしく差し出すイチジクを取って食べました。「なんと、おいしい!」 プリンセスは、少年にたくさんのほうびをあげました。次の日も、イチジクの実が熟しました。さらにおいしいイチジクに、プリンセスは、さらにほうびをあげました。次の日も、次の日も……。たった一つのイチジクの実でたくさんのほうびをもらう少年をねたんだ行政官は……。
第3話:魔女
第4話:泥棒と老婆
葛飾北斎の赤富士の絵を見た映写技師と2人の子どもは、次のお話に舞台を、日本の江戸時代にします。
ある夜、一人の泥棒が、通りかがった家から聞こえてくる2人の女性の話を盗み聞きします。どうやら、その家を訪ねてきているおばあさんの、たいそう美しい肩掛けについて話しているようです。泥棒は、その美しい肩掛けが欲しくなりました。泥棒はおばあさんの美しい肩掛けを盗もうとして、おばあさんに声をかけ、西宮まで帰るというおばあさんを背負っていくことにします。「なんとやさしい!」お婆さんは、力強い青年(泥棒)に背負われます。
泥棒は肩掛けを奪おうと、さみしい道に入ります。しかし、背負われているおばあさんは、「遠回りだよ」と言い、すごい力で泥棒の胸を足でしめつけます。悲鳴をあげる泥棒におばあさんは言います。「こんな年になっても、まだまだ元気だよ。首をしめることだってできるんだよ」
泥棒はおばあさんの足にけられ、あちらに走りこちらに走りと、夜じゅう、おばあさんを背負ったまま走らされます。おばあさんの家にたどりついたときは、夜明けになっていました。そのとき、家に入るおばあさんの肩にかかっている肩掛けが美しく輝きました。そして、おばあさんはその肩掛けを……
第5話:冷酷なプリンセス
第6話:プリンス&プリンセス
6つのお話を見ながら、「私もお話をつくってみようかな……」と、楽しくなってきます。
昔のお話、未来のお話、その中に、人間の真実が語られています。プリンセスの魔法をとくのは……、悪名高き魔女の心をときほぐすのは……、人をだましてほしいものを手に入れようとする人に、人を助けることの尊さを教えるのは、冷酷な心で人殺しをする氷のように美しいプリンセスの孤独な心を見抜くのは……、人間のやさしく純粋な心でした。むしろ大人の人に見ていただきたい奥の深いアニメ映画です。