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 父と暮せば

2004年8月

 父と暮せば

      
  • 監督:黒木和雄
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  • 原作:井上ひさし「父と暮せば」(新潮社刊)
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  • 脚本:黒木和雄、池田眞也
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  • 音楽:松村禎三
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  • 出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

2004年 日本映画 1時間39分

  • 文部科学省選定
  • 厚生労働省社会保障審議会特別推薦
  • 青少年映画審議会推薦、日本PTA全国協議会推薦
  • 日本映画ペンクラブ特別推薦
  • 東京都知事推奨、広島県知事推奨、長崎県知事推奨
  • 長崎県教育映画等審議会特別推薦、広島市長推薦、長崎市推薦
  • 日本原水爆被害者団体協議会特別推薦

昨年、ご自分が体験した少年時代をもとに映画化した「美しい夏キリシマ」を発表した黒木和雄監督の、「戦争レクイエム三部作」の完結編「父と暮らせば」の上映が、岩波ホールではじまりました。「父と暮せば」は井上ひさし氏の戯曲で、父親役をすまけい氏が演じ、これまで何回も上演されてきました。

図書館の玄関と自宅というシンプルな場面展開で、登場人物もたった3人。舞台の雰囲気が、幽霊となって現れる父と、自分だけ生きていていいのだろうか思い悩みながら生きている娘の心を、より鮮明に伝えています。父の、「死んだ自分の分も生きて、次の世代に生命を伝えてくれ」という思いは、そのまま、戦争で亡くなった日本の犠牲者たちの願いを代弁しているようです。

黒木監督は、原爆の熱線によって溶けたガラスビンや、トゲトゲにささったガラスの破片、原子雲や、丸木依里・丸木俊夫妻の「原爆の図」を折り込みながら、戦争の悲惨さを次の世代へと語り継げています。

物語

原爆投下から3年後の広島市。原爆で父親を亡くした美津江(宮沢りえ)は、図書館での仕事を終え、夕立の中を走り家に飛び込んだ。雷が大嫌いな美津江は、稲光に脅え、柱の影に身を屈める。すると、「押入の中に逃げ込め」という父親(原田芳雄)の声が聞こえる。防空頭巾を被って押し入れの下の段に逃げ込むと、上の段から父親が話しかけてきた。数日前から、父親が現れているのだ。父親は言う。「お前がドンドロさんにおびえるようになったのは、あのピカのときからだ。」

父と暮せば

父親は、毎日美津江の前に現れては、一日の出来事を聞き出していく。美津江は、原爆の資料を探しに図書館にやってきた青年・木下(浅野忠信)に一目でひかれていたのだが、「うちは幸せになってはいけんのじゃ」と、淡い恋心を消そうとする。亡くなった友人の母親から言われた「なひてあんたが生きとるん」という言葉が、美津江を幸せから遠ざけていたのだった。そんな美津江の心を、父親はどうにかして開こうとする。

美津江は、庭にある父にそっくりの地蔵の顔を見ながら、あの日の朝のことを思い出す。

 

主人公を演じる宮沢りえさんはとても可憐で、命のかよわさ、大切さを身体全体で表現しています。見終わった後、今、自分が生きている“いのち”が、貴重なものだと感じました。

「わしの分まで生きてちょんだいよ~」と言う父の願いから、どうにかして子を幸せにしたいという親の思いが伝わってきます。生きている者には、生かされていることへの使命があるのですね。

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