お薦めシネマ
ニュースの天才
2004年12月
SHATTERED GLASS
- 監督:ビリー・レイ
- 製作総指揮:トム・クルーズ
- 原案:バズ・ビッシンジャー(ピュリッツァー賞受賞作家)
- 出演:へイデン・クリステンセン、ピーター・サースガード、
ハンク・アザリア、クロエ・セヴィニーニ
2003年 アメリカ 94分
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー受賞
- 全米映画批評家協会賞助演男優賞受賞
- ゴールデン・サテライト賞主演男優賞、脚色賞受賞
- ボストン映画批評家協会賞助演男優賞受賞
- サンフランシスコ映画批評家協会賞助演男優賞受賞
- トロント映画批評家協会賞助演男優賞受賞
- オンライン映画批評家協会賞助演男優賞受賞
- カンザスシティ映画批評家協会賞助演男優賞受賞
「何が真実か」は、報道の世界では常に問題になることです。視聴率を高めるために“やらせ”が行われたり、スクープを取るために強引な取材を行ったり、販売数をふやすために、憶測でトップ記事の見出しをつけたり……。若いジャーナリストを描いた「ニュースの天才」は、実際にあった話です。
アメリカ大統領専用機に置かれている唯一の雑誌、「THE NEW REPUBLIC」。1914年に創刊されたこの雑誌は、権威ある政治雑誌として、アメリカ国内で認められていました。1998年、25歳のスティーブン・グラスは、15人のエディターの中で最年少でしたが、優秀なジャーナリストとして認められていました。彼が書いたスクープ記事41タイトルの中で、27タイトルが捏造(ねつぞう)だったことがわかたのです。この映画は、仲間からも称賛され、自信を持ってスクープ記事を書いていた若きジャーナリストと、彼の記事の信憑性を追い、読者の前に正直にその実態を発表した編集長という、2人のジャーナリストの姿を描いた作品です。
物語
1998年。「THE NEW REPUBLIC」の編集部には、15人のアソシエート・エディターがいた。編集長マイケル・ケリー(ハンク・アザリア)の下で、活発な編集会議が行われ、エディターたちの中で、最年少のスティーブン・グラス(へイデン・クリステンセン)は、だれも思いつかないような切り口で取材テーマを提案し、特ダネをものにしていた。同じ政治の話でも、スティーブンは身近な話題や財界のゴシップなどを、体当たりの取材で記事にし、注目されるようになっていった。ケイントリン(クロエ・セヴィニーニ)など、仲間からの信頼もあった。
そんな中、会長と対立していた編集長マイケルが解任され、グラスたちの同僚のチャック・レーン(ピーター・サースガード)が新しい編集長となった。マイケルを慕っていたエディターたちは、チャックを歓迎していなかった。
ある日、スティーブンは、大手コンピュータ・ソフト会社とハッカー少年に関する「ハッカー天国」という記事を発表した。ネット・バブルの最盛期の中、記事は反響を呼び、スティーブンは話題の人となった。しかし、ネット・マガジン誌の「Forbes Digital Tool」は、なぜ専門雑誌でない「THE NEW REPUBLIC」が、業界でだれも知らなかったこの事件を知っていたのかと疑問に思い、グラスの記事を調査しはじめた。その結果、問題のハッカー少年が、実は存在していないことがわかった。次々と出てくるウソ。チャックは、「Forbes Digital Tool」の編集長から電話を受けた。
「Forbes Digital Tool」からの取材を受けているスティーブンの態度に不信をいだいたチャックは、スティーブンを調べていく。しかしそれは、雑誌社として、世間に知られたら命取りになる事だった。ケイントリンは、チャックからスティーブンのことを打ち明けられるが、信じることができなかった。調べた結果、記事の内容はすべてスティーブンが作り上げたものだと分かり、スティーブンもそれを認めた。ケイントリンも、事実が飲み込めた。チャックは、スティーブンが今まで書いたすべての記事を調べはじめた。その結果は驚くものだった。
スティーブンの記事について、チャックから打ち明けられたケイントリンは、「彼を今クビにしたら、ダメになってしまう」と、ジャーナリストとしては、本末転倒の答えをしてしまいます。スクープをものにしたときの味をしめてしまったスティーブンは、真実と虚像の区別がつかなくなっているのでしょうか。編集部をクビになっても、スティーブンは言います。「ピューリッツアー賞なんて、簡単にとれるさ!!」スティーブンのこの姿は、病的であり、哀れささえ感じます。話題を作り出していくことに夢中になっているスティーブンに対し、リスクを負っても真実を追い求めるチャックの姿が印象に残ります。