お薦めシネマ
バーランド
2005年1月
Finding Neverland
- 監督:マーク・フォスター
- 脚本:デイヴィッド・マギー
- 音楽:ヤン・A・P・カチュマレク
- 出演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、
フレディ・ハイモア、ラダ・ミッチェル、
ダスティ・ホフマン
2004年 アメリカ・イギリス 1時間40分
- ゴールデン・グローブ賞 5部門ノミネート
作品賞<ドラマ部門>・主演男優賞<ドラマ部門>・
監督賞・脚本賞・音楽賞 - ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀作品賞受賞
「ネバーランド」は、夢と希望を与えてくれる冒険物語、童話「ピーターパン」のお話ができたいきさつを描いた映画です。そこには、小さくして両親を失うという厳しい現実を突きつけられた兄弟たちが、大人たちに助けられて両親の死を乗り越えて大人になっていく姿と、子どもたちを温かく見守る大人たちの深い愛情が描かれています。母親の死という悲しく辛いできごとがありますが、愛が満ちあふれている、宝物のような映画です。
大人たちの「お父さんは、きっとよくなる」と言うと言葉を信じていたのに、ある日突然、お父さんは死んでしまった。「もう、大人たちの言うことは信じない!」と心を閉ざし、父親の死を受け入れようとしない少年ピーター。そんなピーターに劇作家のバリは言います。「信じてごらん」と。
物語
1903年。劇作家ジェームス・バリ(ジョニー・デップ)の新作公演の初日とあって、ロンドンの劇場は着飾った紳士淑女で埋め尽くされていた。しかし、評判はよくなかった。翌日の新聞に載った劇評も、厳しいものだった。落胆したバリは、犬を連れて公園に散歩に出る。
公園には、未亡人のシルヴィア(ケイト・ウィンスレット)が、4人の息子たちを連れて遊びに来ていた。3人の男の子たちは、騎士ごっこに夢中になっていたが、3男のピーター(フレディ・ハイモア)だけは、兄弟たちの中には入っていなかった。ひとりぼっちのピーターを見たバリは、犬とダンスをしたりして子どもたちの喝采をあびる。このひとときは、バリに、沈んだ気持を忘れさせてくれた。バリは、また会おうと約束して一家と分かれる。
心が明るくなって家に帰ったバリは、妻のメアリー(ラダ・ミッチェル)に、公園で出会ったシルヴィア親子たちのことを伝える。シルヴィアの母親が社交界の名士であることを知っているメアリーは、シルヴィアの母親に近づくために、シルヴィアたちを食事に招くことを提案する。
バリは、感受性の強いピーターに、自分の小さいころの姿を重ねる。バリは、シルヴィアの家にも遊びに行くようになり、次第に親しくなっていく。子どもたちとごっこ遊びをしたり、楽しい想像の世界へと招く。子どもたちは、バリと過ごすことによって、母親からは得られない大人の男性からの影響を受けていく。バリとシルヴィア親子のことは、うわさになっていく。一方、メアリーは、バリの心が自分から離れていくのを感じ、他の男性とつきあうようになり、ついには家を出ていく。
バリは、ピーターたちとの遊びによって、新しい劇作りのアイデアが浮かび、仕事も充実していく。そして、新しい劇の主人公にピーターの名をつけることを思いつく。
町のうわさからシルヴィアと息子たちを守るため、バリは、母子を自分の別荘につれていく。その別荘で、ピーターははじめて書いた脚本をみなの前で披露する。しかし、ピーターが語りはじめたとき、シルヴィアが突然咳き込み、その後床につくようになる。
バリの新しい劇が上演される日が来た。バリは劇場に、25名の子どもたちを招く。シルヴィアと息子たちも招かれるが、シルヴィアは病が重く、子どもたちも劇場へ行くことができなくなった。代表してピーターだけが劇場へと向かう。幕が開いた。着ぐるみの犬が出てきたとき、大人たちはあっけにとられ不機嫌な顔をするが、子どもたちは笑い出す。子どもたちの笑い声が劇場に響き、やがて大人たちも童心に返っていく。バリの新作劇「ピーターパン」は、大成功に終わった。
なおらない病と知ったシルヴィアは、バリと語り合う。そして、バリは、あることを思いつく。
子どもは、いつ大人になるのでしょう。少しずつ、少しずつ……、ある日気がついたら大人になっているのでしょうか? あるいは、何かがきっかけとなり、ある日突然、責任ある判断を求められる……そのとき、大人になるのでしょうか?
「ネバーランド」に登場する4人兄弟にも、大人になった日がありました。今まで、母の愛に守られて、子どもたちは安心していました。しかし、母の命が危ないとわかったとき、長兄ジョージは変わります。娘と孫に自分の考えを押しつけようとする祖母に対し、「言いなりにはならない。ぼくたちの家族だ!」と、自分の考えをはっきりと言い表すのです。長兄として、母を守ったのです。その威厳ある姿に、祖母も納得し、ホッとした表情を見せました。
大人を信じることができなくなっていた3男のピーターは、ピーターパンの劇を見て、これは自分たち家族のために書かれたものだと分かったとき、「信じてごらん」という呼びかけに答えることができるようになり、自分の中にある壁を打ち壊し、大人への道を歩みはじめました。「子どもってスゴイ!」と思う瞬間でした。
自分たちを守ってくれていたただ一人の人、母親が死んでしまうということは、ともて辛いことです。しかし、「母に甘える子ども」としてではなく、「自分たちは大丈夫だから、お母さん、安心してネバーランドに旅立っていいよ」とお母さんを送りだすことができるほど成長したのです。自分を愛してくれる人の愛を感じることができたとき、子どもは強くなれるのですね。