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 北の零年

2005年1月

YEAR ONE IN THE NORTH

北の零年

  • 監督:行定勲
  • 脚本:那須真知子
  • 音楽:大島ミチル
  • 出演:吉永小百合、豊川悦司、渡辺謙、柳葉敏郎、石田ゆり子、
          香川照之、石原さとみ

2005年 日本映画 2時間48分


幕末の内乱の結果、淡路島の稲田家は、明治政府から北海道への移住を命じられた。家臣と農民たち546名は、3陣に分かれて出発することになった。明治4年、小松原志乃(吉永小百合)と娘・多恵らを乗せた第一陣の人々が、長い船旅を終えて北海道・静内の地に辿り着いた。そこには、先遣隊として、志乃の夫・英明(渡辺謙)ら、稲田家の家臣たちが待っていた。すでに開墾をはじめていた英明らは、山から木を切り出して開拓小屋を建て、今は、この地の中心となる殿の屋敷を建てているところだった。殿は、翌年の春に、第3陣とともにやってくることになっていた。

第一陣の家臣たちも加わって、開墾作業は一段と力を増した。山に入って木を切り倒し、その木を山から引き出すために、多くの人の力が一つになることが必要だった。「この地に新しい国をつくるのだ!」という希望に満ちた夫の姿に信頼し、志乃や多恵たちも手にクワを持ち、稲田家の農民たちの中に入って、土地を耕した。「今までとは違うのだ」そこには、淡路にいたときとは違う関係がはじまっていた。武士も農民も皆が一つになって力を出し合い、大自然と戦っている姿があった。しかし、農作物はなかなか根付かず、苦労の日々が続いた。雪を知らない四国の人々の前に、寒さと雪に覆われた北の国の苛酷な冬が待ち受けていた。

北の零年
(C)2005「北の零年」製作委員会

ある日、花を摘んでいる多恵の目の前に、突然クマが現れた。アイヌのアシリカ(豊川悦司)がクマを撃って多恵を助けてくれたことが縁で、志乃母子は、アシリカとアイヌの老人モノクテから、北の地での生き方を学んでいく。

淡路島から来た薬売りの倉蔵(香川照之)が持ってきた国元からの書状により、第2陣の船が遭難したことを知った。亡くなった人の名前が読み上げられると、家族を失った人々は力を落とし泣き崩れた。

やがて春になり、待ちに待った殿を迎えた。しかし、英明たちが精魂込めて立てた屋敷に入った殿の言葉は、「廃藩置県が行われ、情勢が変わった。第3陣はやってこない」というものだった。そして殿は、そのまま馬に乗り帰っていってしまった。唖然とする家臣たち。「自分たちは、見捨てられたのだ!」英明は叫んだ。これからどうしたらいいのか。しかし英明は、この地で生きていくことをあらためて決意し、刀を置き、脇差しで髪の結いを切った。他の家臣たちも次々にそれに倣い、結いを切り、ともに生きていくことを誓った。彼らは、刀ではなくクワを手にした。

ある日役人が来て、「この地は政府開拓使の支配する所となった。米を配給する。」と告げた。自分たちが苦労して開拓した土地を、だまって政府に取られることにがまんできない英明は、米の配給を断った。しかし、稲は実らず、このままでは冬を越せない状況になっていた。人々の依頼で、英明はこの地でも実りをもたらす苗を買い付けるため、単身、札幌へと旅立った。志乃はいつもともにいるしるしとして、英明に鈴を渡した。

半月で戻ると約束したにもかかわらず、英明は戻ってこなかった。多恵は、毎日道へ出て、父の帰えりを待った。しかし、いくら待っても父の姿は見えなかった。札幌で女性と馬車に乗っていたなどのうわさが流れ、また英明を責める人々の言葉もあった。土地の顔役になった薬売りの倉蔵は、米を融通して一儲けしようとたくらみ、この地に入ってきた。ある日、倉蔵に言い寄られた志乃は、あやういところをアシリカに助けられる。アシリカは、同じような状況で妻と子を亡くしたのだと打ち明ける。

夫を信頼し続けていた志乃は、英明を探す旅に出ることを決意する。志乃の家を訪ねたアシリカが、察して後を追うが、志乃親子を見つけることはできなかった。深い雪中、猛吹雪にあった志乃は、多恵を抱きかかえたまま力つきて倒れてしまう。

北の零年
(C)2005「北の零年」製作委員会

どのくらい時間がたったのだろう。真っ白な雪の中、遠くに鈴の音が聞こえた。そして、5年の歳月が流れた。家臣たちの暮らしは、変わっていた。

北の零年
(C)2005「北の零年」製作委員会


 

抜き差しならない状態に追い込まれ、そこで見捨てられた人々。しかし、それを権力者のせいにも、時代のせいにもすることはできません。人は生きていかなくてはいけないのですから。そのとき、人はどうするのでしょう? ある人は、生きるために権力者に盲従し、反対にある人は抵抗してみじめな生き方をします。ある人は物質的な豊かさを求めて自らを売る生き方をし、ある人は自分の信念を貫きとおします。私だったらどうするのだろうか……。私はどう生きるかという信念を持っているか、または、自分の信念を生き抜くことができるか、ということだと思います。

「殿のために」と主君を頂点として築いていたピラミッド型の人間関係の中で、みなが一つになって力を出し合い、助け合っていました。しかし、明治時代に入り、その関係は崩れます。賢い者、ずる賢い者が、力を得ていきます。階級や主従関係が崩れ、人が自分の力で道を切り開いていくことができる時代になりました。幕末から明治維新へ。この時代がいかに大変な変化のときだったのかとうことを、淡路島から北海道へと移民した人々から知ることができました。

2時間48分という長い作品ですが、ひきつけらて見てしまいました。

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