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お薦めシネマ
アイ・アム・デビッド
2005年2月
I AM DAVID
- 監督・脚本:ポール・フェイグ
- 原作:アン・ホルム (角川書店刊)
- 出演:ベン・ティバー、ジョーン・プロウライト、ジム・カヴィーゼル
2004年 アメリカ映画 93分
- モナコ映画祭最優秀女優賞、最優秀新人賞
- サンディエゴ映画祭最優秀作品賞、最も有望な俳優賞
- カンザスシティ映画祭最優秀作品賞、最優秀監督賞、
最優秀俳優賞、最優秀女優賞 - オースティン映画祭観客賞
- ハートランド映画祭クリスタルハート賞>
- ダマー映画祭アチブメント賞
第2次世界大戦直後、ブルガリアの強制収容所で育った少年がいました。「ここにいてもいずれ死ぬ。だったら、危険を冒しても脱出を試みたい」そんな周囲の大人たちの思いが、ひとりの少年を脱出させました。数々のアクシデントも、人々の暖かい助けによって乗り越え、少年は「生きる」道を歩み続けます。アメリカの子どもたちの間で人気のある小説の、待望の映画化です。
物語
「この手紙をデンマークへ持っていけ。しかし、決して手紙を開けてはいけない!」この言葉を胸に、12歳の少年デビッド(ベン・ティバー)は、強制収容所から脱出した。教えられたとおり、収容所の外にある木の下に隠されていたカバンを探し出したデビッドは、北を目指して歩き出した。
第2次世界大戦直後のブルガリアでは、戦争が終わったにもかかわらず、共産主義が圧力をかけ、罪のない人が強制収容所に捕らえられていたのだ。デビッドのそばには、いつものヨハン(ジム・カヴィーゼル)がともにいて、いろいろと教えてくれた。「ここで、一生終わりたくない」と言っていたヨハンが、デビッドの脱出を企てたのだ。
デビッドは、たびたび思い出す場面があった。何者かに連れて行かれる母の姿と、デビッドを寝かしつけた母が、笑顔で部屋から出て行く後ろ姿だった。
デンマークを目指して北に向かって歩きはじめたデビッドは、収容所でのことを思い出す。「壁の外には、収容所で育ったお前が全く知らない世界がある。」こう語ったヨハンはデビッドに生きる希望を与えてくれたのだ。しかし、看守の机からせっけんを盗んだデビッドの身代わりとなり、ヨハンは銃殺されてしまった。
ギリシャからはイタリア行きの船にひそかに乗り込み、イタリアへ渡る。そこには、デビッドには想像できない豊かな生活があった。親切なパン屋では、祈ることと笑顔でいることを教えられる。しかし、「人を信じてはいけない」というヨハンの言葉を思い出し、警察に突き出されそうになったあやういところを逃げ出す。
畑道を歩いているとき、農家の小屋の火事を見つけ、小屋の中に取り残されていた少女マリアを救い出したことから、その家に数日間滞在することになる。幸せな家族の中で落ち着いた数日を過ごすデビッドだが、子どもの一人旅を不信に思った主人の言葉に身の危険を感じ、夜中にこっそり抜け出す。
託された手紙は、いつしかボロボロになっていた。開けてはいけないと言われていた手紙を、デビッドは開ける。中には、女性の写真が貼ってある身分証明書が入っていた。
スイスとの国境が見える山にたどり着いたデビッドは、そこで絵を描いている老婦人ソフィー(ジョーン・プロウライト)と出会う。ソフィーは息子を亡くし、国境を越えたスイスで一人暮らしをしていた。絵のモデルを頼まれたデビッドは、彼女の車に乗りスイスに入る。
デビッドの目に深い悲しみがあることを見たソフィーは、「人間は善であり、人を信じることが大切だ。この町の人はみな安心できる」と教える。やさしく包みこむソフィーに安心したデビッドは、いろいろと話したいが、今は話すことができないとソフィーに抱きつき、泣く。
次の日、ソフィーと町に出たデビッドは、本屋のカウンターに置いてある白い本に目を留める。『旅と悲しみ』というその本は、イタリアの町の本屋にもあったし、マリアの家の書棚にもあった。ソフィーは著者について説明しはじめる。デビッドは本の裏を見て驚く。そこに載っている著者の写真は、デビッドがたびたび思い出した母だったのだ。
デビッドが脱出するために、手紙やカバンを用意してくれた人は、いったいだれなのでしょうか。デビッドが旅の途中で思い出していく収容所でのできごとをとおして、次第に明らかになっていきます。このようにちょっとサスペンス的要素もあり、また暖かい人間愛の話もあり、ハラハラしながらのデビッドの旅です。最後は、デビッドの姿にこちらも幸せな気持ちになって涙が……。よかったねデビッド。人の温かさを感じる、すてきな映画です。
ヨハン役のジム・カヴィーゼルは、この映画での演技が認められ、映画『パッション』のイエス役を射止めたとか。デビッド役のベン・ティバーのかわいらしさと、ジム・カヴィーゼルの抑えた演技を、じっくりとご覧ください。