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 チャレンジ・キッズ

2005年5月

未来に架ける子どもたち

チャレンジ・キッズ

  • 監督・製作・撮影:ジェフリー・ブリッツ
  • 出演:ハリー・アルトマン、アンジェラ・アルニバル、テッド・ブリハム、
         エイプリル・デジデオ、ニール・カダキア、ヌ-プル・ラーラ、
         エミリー・スタッグ、アシュレー・ホワイト
  • 音楽:ダニエル・ハルサイザー
  • 製作補:ロニー・アイゼン
  •  
  • 製作:HBO シネマックス

2003年 アメリカ映画 97分

  • 文部科学省選定(少年・青年・成人・家庭向け)
  • アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート
  • IFPロサンゼルス映画祭観客賞・審査員特別賞 など、多数受賞

世の中には、優れた能力を持った子どもたちがいます。全国漢字テストで一番だったり、全国暗記大会で優勝したりする子です。米国にも、「スペル暗記大会(スペリング・ビー Spelling Bee)」という、英語の単語のスペルの正しさを競う、16歳以下の子どもたちの大会があります。第1回全米スペル暗記大会は、1925年にワシントンD.C.で開催されたという歴史ある大会です。最初の参加者はたったの9人でしたが、チャンピオンになった子どもは大統領に会うという名誉が与えられるようになってから大会の権威が高まり、国民の関心も高まっていきました。

「チャレンジ・キッズ」は、1999年に行われた第72大会に出場した8人の子どもたちを追ったドキュメンタリー映画です。子どもたちの日常と、両親、兄弟姉妹、そして担任の先生たちへのインタビュー、そして、ワシントンD.C.で行われた決勝大会での様子を追っています。そこには、日本とはちょっと違った空気が、流れています。

チャレンジ・キッズ
(C)2002 Blitz/Welch Productions

前半は、大会に臨む8人の子どもたちの家庭や学校での姿を追っていきます。「スペル暗記大会」は、参加者全員がステージに並び、一人ずつ順番にステージの中央に立っているマイクの前に進みます。単語はステージ脇にいる出題者から口頭で出され、参加者は、その単語のスペルを口頭で回答します。一つでもアルファベットを間違えると、非情なベルが鳴り、即、退場となります。子どもたちは、大人でも普段使わないような言葉を、正しいスペルで答えていきます。地方の大会を勝ち抜いて決勝大会に臨みます。決勝大会に進むというだけでもとても名誉なことで、新聞にも載るほどです。

後半は、決勝大会の様子を中心に、子どもたちと応援する家族を追っていきます。ワシントンD.C.で開催される決勝大会の10回戦あたりからは、全米に放映されます。白熱してきたステージに、こちらもドキドキしてきます。

チャレンジ・キッズ
(C)2002 Blitz/Welch Productions

出場者は、単語の語源や意味、使い方や発音、単語を用いた例文を質問することができます。「もう一度、言ってください」「語源は、ラテン語ですか?」「例文を言ってください」習ったことのない単語が出題されたとき、「わからない!」と簡単にあきらめはしません。はじめて聞く言葉でも、いろいろなところに触手を延ばしてなんとか答えようとするのです。この作業をしている子どもの顔は真剣です。「スペル暗記大会」は、暗記の能力だけではなく、総合的な学習能力が求められるのです。

テレビで「全米スペル暗記大会」の決勝大会を見ていた監督のジェフリー・ブリッツは、やり直しのきかないスリルと緊張感に満ちたこの競技に釘付けになりました。必死になって決勝大会まで来た子どもたちが、どういう生活をし、どんな夢を持っているのかに興味を持ちました。「出場者の数だけ、物語があるはずだ」そう思った監督は、ドキュメンタリー映画という形で、出場者たち個人の物語を作ろうと考えこの映画ができました。

テキサス州、コネチカット州、ニュージャージー州、カルフォルニア州、フロリダ州……などから出場した8人の子どもたちの中には、インドやメキシコからの移民や、シングルマザーの子、貧しい家庭環境の子もいます。学校では、クラスの子と話があわず、友達がいなかった子も、ここでは、自分と同じように考える子がいて、仲間ができ生き生きしています。民族差別を受けていた子も、この大会ではアメリカ人として受け入れられ、自信をもつようになりました。知識の取得だけではない他のもっと重要なものを、この大会は与えているようです。監督は、大会に向けて準備する子どもたちの日常を映すことによって、アメリカ社会の現状を描き出しているようです。

大会を終えた子の父親は言います。「一つのことに挑戦し、持っている力を最大限に発揮し、あきらめずに挑戦すること。このことが、何にでも役立つはずです。」

勝利を得るために、全力を出し切って挑戦する子どもたちの姿や、戦いの後のさわやかな笑顔、子どもたちを愛情深く支えている家族の姿に、精一杯生きることの喜びを見て、こちらも元気をもらってうれしくなりました。

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