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お薦めシネマ
そして、ひと粒のひかり
2005年10月
MARIA FULL OF GRACE
- 監督・脚本:ジョシュア・マーストン
- 主演:カタリーナ・サンディノ・モレノ、イェニー・パオラ・ヴェガ、
ギリード・ロペス - 配給:ムービーアイエンタテインメント
2004年 アメリカ・コロンビア映画 1時間41分
- 世界各地の映画祭にて、堂々46部門ノミネート、24部門受賞!
- 2005度アカデミー賞主演女優賞 ノミネート
- ベルリン国際映画祭 主演女優賞 新人監督賞
- ドーヴィル映画祭 グランプリ 国際批評家賞 観客賞
- サンダンス映画祭 観客賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞 第一回作品賞
- ロサンゼルス映画批評家協会賞 新人賞
- サンフランシスコ映画批評家協会賞 外国語映画賞
- ワシントン映画批評家協会賞 外国語映画賞
- シアトル映画批評家協会賞 外国語映画賞
- トロント映画批評家協会賞 第一回作品賞
- インディペンデント・スピリット賞 主演女優賞 第一回脚本賞
- ゴッサム賞 ブレイクスルー監督賞 ブレイクスルー女優賞
- 他、数多くの賞を受賞
受賞の数を見てください。名のある数々の映画祭で受賞しています。主役のマリアを演じたカタリーナ・サンディノ・モレノ(1981年生)は、800人以上のオーディションの中から選ばれたコロンビア人ですが、デビュー作品となる本作品で、アカデミー賞最優秀主演女優賞にノミネートされるという快挙を成し遂げました。素顔もチャーミングで美しく、若さの中にもしっかりとしたものがあり、これは大女優になるぞ……という感じがします。黒い瞳が、とても魅力的な女優さんです。
カタリーナ・サンディノ・モレ | 監督のジョシュア・マーストン |
監督は、アメリカ人のジョシュア・マーストンで、コロンビアからやってきた移民の女性から聞いた話をベースにして脚本を書きました。この映画のようなことが、実際にコロンビアとアメリカの間で行われているのかと思うと、恐ろしくなります。自分の命を危険にさらす、女性の「運び屋」の姿を追っていく迫力と、新しい命を守るために、少女から母へと成長していく女性の姿に、引き込まれてしまいました。
物語
コロンビアの小さな町に住むマリア(カタリーナ・サンディノ・モレノ)は17歳。小さな家に一家5人で住んでいる。マリアは家計を助けるために、朝早くからバラ園で働いているが、出荷するバラのトゲ抜きという短調な仕事にあきあきしていた。家には、姉が子どもを連れて戻ってきていて、マリアのすることに何かと口を出してうるさい。ボーイフレンドのホアンとつきあっているが、ガールフレンドの役をしているだけで、愛しているわけではない。デートしてもドキドキすることもなく、彼には物足りなさを感じている。バラ園で一緒に働いているブランカ(イェニー・パオラ・ヴェガ)だけが、話の通じる親友だった。
ある日、仕事中に気分が悪くなったマリアは、がまんできずにその場で吐いてしまう。大切な商品のバラが汚れ、それをとがめる上司と口論をし、とうとうマリアは職場を辞めてしまう。マリアは妊娠していたのだ。相手はホアンだった。
家族のためにお金を稼がなくてはいけないマリアは、パーティーで知りあったフランクリンから、「旅に関する仕事」をしないかと誘われる。しかしその仕事の実体は、ミュール(運び屋)だった。ミュールは、麻薬を胃袋の中に入れて密輸するという危険な仕事だった。マリアは最初は断るが、一回5000ドルという魅力的な報酬のために、引き受けることにする。
ミュールたちは、ヘロインが詰め込まれた親指ほどの小さなゴム袋をたくさん飲み込み、飛行機でニューヨークまで運ぶ。もし、お腹の中でゴムの袋が破けたりしたら、それは死を意味していた。マリアは、ミュ?を何回か経験しているルーシー(ギリード・ロペス)からいろいろな注意点を教わる。マリアは飲み込む練習をするが、最初の1個がなかなか飲み込めない。何回も何回も飲み込む練習をし、そして、とうとう飛行機に乗る日がやってきた。マリアは、前日にホテルに入り62個のゴム袋を飲み込んだ。ニューヨーク行きの飛行機に乗り込んだ4人のミュールの中には、ベテランのルーシーと親友のブランカがいた。 ニューヨークに着いたら、62個のゴム袋が全部出るまで、ホテルに監禁されるのだ。
フランクリンは、心配することはないと言ったが、危険がやってきた。マリアは腹部に違和感を覚え、トイレに入った。ゴム袋が一つ出てきてしまった。きれいに洗い、慌てて飲み込もうとするが、飲み込めない。やっと飲み込んでトイレを出ると、ドアの外にはルーシーが今にも倒れそうな様子で立っていた。
ニューヨークの飛行場に着くと、税関がマリアを疑い、呼び止めた。運び屋ではないと言い張ったが信用されず、X線撮影をされることになる。しかし、マリアが妊娠していることがわかり、釈放される。ホテルに移り、男性たちに監視されながら、ゴム袋が全部排出されるまで時間を過ごす。翌朝、マリアは、バスルームが血だらけになっており、ルーシーと男性たちがいなくなっているのを知る。マリアは、身の危険を感じ、自分の体から排出されたゴム袋を全部持ち、ブランカの手を引っ張って、ホテルから逃げ出した。
言葉が通じないはじめての土地で、ルーシーからもらっていたルーシーの姉の住所を頼りに、マリアは歩きはじめる。
ニューヨークの落ち着かない生活の中で、体が心配になったマリアは産婦人科に行きます。そこで超音波診断を受けてお腹の子の姿を見たときのマリアのまなざしが、とても感動的でした。母親であることを自覚した瞬間でした。
今までの私は、もう終わった。
これからは、新しい私、これからは本当の私を生きていく。
何が来てもこわくない。……
映画のラストで流れる歌です。人生を選び取り、大人として一歩を踏み出したマリアの出発に、エールを送りたくなりました。責任をもって人生を選び取るときの、人間の強さと輝きを見ました。印象的な作品です。