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 美しき運命の傷痕

2006年4月

美しき運命の傷痕

  • 監督・脚色:ダニス・タノヴィッチ
  • 脚本:クシシュトフ・ビェシェヴィッチ
  • 原案:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ビェシェヴィッチ
  • 出演:エマニュエル・ベアール、カリン・ヴィアール、マリー・ジラン、
          キャロル・ブーケ
  • 配給:ビターズエンド

2005年 フランス・イタリア・ベルギー・日本合作映画 102分


人を愛するとはこんなにも苦しく辛いことなのか……。女性の愛の生き方を、赤裸々に描いた作品です。監督は、ボスニア軍とセルビア軍の戦いを描き、2001年に世界の数々の映画祭で受賞した映画「ノーマンズ・ランド」のダニス・タノヴィッチ監督です。戦争のやりきれなさを描いた社会派の作品とはうってかわって、「美しき運命の傷痕」では、男女の愛の姿を描きましたが、「ノーマンズ・ランド」と同じように、人間の心情の深いところにあるかっとう。シンボルを巧みに使いながら愛を描いている、奥の深い作品です。

物語

母親に手を引かれた女の子が、建物の中に入ると、父のいる部屋に向かって走り出した。ドアを開けると、背中を向けた裸の少年と、少年に向かい合って立っている白衣を着た父がいた。後から追いついた母親は、あわてて女の子の目を手で覆った。

刑期を終えた一人の男性が出所した。巣から落ちたひな鳥が草むらの中にいるのを見つけた男は、ひな鳥をそっと巣に戻すと歩き出した。

32歳のセリーヌ(カリン・ヴィアール)は、地方の病院にいる車いすの母親(キャロル・ブーケ)の世話をするため、電車で通っている。母親の顔はいつも厳しく、いろいろとセリーヌに小言を言う。セリーヌは、男性を拒否しているようなところがあり、孤独な生活をしている。彼女には、姉のソフィ(エマニュエル・ベアール)と妹のアンヌ(マリー・ジラン)がいるが、今は音信がない。

美しき運命の傷痕 美しき運命の傷痕

ソフィは結婚していて、ふたりの子どもがいる。しかし夫に愛人がいるらしい。嫉妬にかられたソフィは、夫を尾行し、愛人と密会している部屋を突き止める。夫は、もうソフィを女性として見ることができないと言う。

妹のアンヌは聡明な大学生。しかし、彼女の大学の教授と不倫の関係にあった。ある日、教授から別れようと告げられるが、アンヌは彼への感情を抑えることができない。アンヌは親友の家を訪ね、その苦しい思いを打ち明ける。そこへ親友の両親が帰宅する。アンヌの愛する相手は、親友の父親だった。

刑務所を出た男は、家族の元へ帰ってきた。しかし、妻は夫をかたくなに拒否する。「子どもたちに、一目だけでも会わせてくれ」と懇願するが、妻は聞き入れない。争ううち、妻は壁の鏡に頭をぶつけ、気を失ってしまう。自分の思いを妻に伝えることができなかった男は、窓から身を投げ死んでしまう。幼い3人の姉妹は、ふたりを見ていた。

美しき運命の傷痕

夫を告発したのは3姉妹の母親だった。母は子どもたちを守るために、父親と必死に戦ったのだ。しかしある日、セリーヌは、一人の男性から意外な事実を知らされる。

 

3人の姉妹と母親の、裏切られ傷ついた愛は、どのような結末を迎えるのでしょうか。幼いときに両親から受けた深い傷は、癒やすことができるのでしょうか。傷を乗り越えて、再び愛し愛されることができるのでしょうか。両親の離婚や家庭内の暴力が多くなっています。「美しき運命の傷痕」は、現代社会がかかえる問題を考えるための問題提起となることでしょう。

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