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 ヒョンスンの放課後

2006年4月

A State of Mind

ヒョンスンの放課後

  • 監督・プロデュース・脚本・ナレーション:ダニエル・ゴードン
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  • オリジナル音楽:バーナビー・テイラー
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  • 配給:シネカノン

2004年 イギリス映画 94分

  • 2004年プサン国際映画祭正式招待作品
  • 2004年ピョンヤン国際映画祭特別賞・音楽賞受賞
  • 2004年トライベッカ映画祭 国際ドキュメンタリーコンペティション正式出品
  • 2005年メルボルン映画祭正式出品
  • 2004年シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭正式出品
  • 2005年国際ドキュメンタリー映画祭アムステルダム正式出品
  • 2005年エーテボリ映画祭正式出品
  • 2005年DocPoint ヘルシンキドキュメンタリー映画祭正式出品
  • 2005年フェスティバル・ブラック・ムービー・スイス正式出品
  • 2005年ニュージーランド映画祭正式出品
  • 2005年シンガポール国際映画祭正式出品
  • 2005年シドニー映画祭正式出品

ドキュメンタリー「奇跡のイレブン」を制作したイギリスBBC放送のダニエル・ゴードン氏と撮影チームに、北朝鮮当局から万能通行証が渡されました。平壌市内でも「あの『奇跡のイレブン』を作ったチーム」ということで、彼らが撮影したい場所はどこでも入ることができました。統制の強い北朝鮮にあって、異例のことです。

主人公には、学校の体操クラブに所属しマスゲームに参加している二人の少女が選ばれました。少女たちの日常生への8か月の密着取材によって撮影された「ヒョンスンの放課後」は、「奇跡のイレブン」に続くBBCのドキュメンタリー第2弾として、ベールに隠れた北朝鮮社会の一般の人々の生の声を聞かせてくれるとても興味深い映画です。

物語

ヒョンスンは13歳。体操が大好きだ。学校でヒョンスンと同じ体操クラブに属しているソンヨンは11歳。体操はまだ上手ではないが、苦手なところはヒョンスンに教わっている。二人は大の仲良しだ。

ヒョンスンの放課後

ヒョンスンは将軍さまの前で開催されるマスゲームのメンバーに選ばれるために、一生懸命練習している。練習は厳しい。マイナス20度の冬の朝だって屋外で練習する。「足が痛くなったりする。でも、将軍様の前で演技を披露できるのはとてもうれしい。晴れの舞台で、将軍様の前で踊ったときはドキドキして、足が震えて緊張したが最高に幸せだった。また、将軍様の前で踊りたい」。

ヒョンスンの放課後

北朝鮮では、マスゲームが盛んである。マスゲームでは個人の自由を没し、全体の中で他といかに協調していくかが問われる。共産主義の精神を育てるのに有意義なものだ。マスゲームは、金日成の記念日や、金正日総書記の誕生日など年数回開催される。

北朝鮮には3つの階級がある。知識階級、労働者階級、農民である。しかし、この3つは平等である。ヒョンスンの父は労働者である。両親、祖父母と暮らしている。ソンヨンの父は大学の助教授で知識階級である。両親、祖父母、2人の姉と暮らしている。

ヒョンスンは、9月の金正日総書記の誕生日で行われるマスゲームのメンバーに選ばれた。それもヒョンスンがあこがれていた最前列で踊るという栄誉を得たのだ。一日2回の公演が6日間続いた。しかし、将軍様は一度も顔を出さなかった。

ヒョンスンの放課後


 

ヒョンスンとソンヨンの家族へのインタビューはとても興味深いものです。金日成が亡くなった後3年続いた飢饉のときの配給の話や、イラク情勢に対する話など、カメラの前で一般市民が直接語っています。厚く覆われたベールの中で、北朝鮮の人々は、世界をどう見、何を感じ、何を考えて生きているのかが見えてきます。「将軍様のため……」をのぞけば、わたしたちと同じ、ごく普通の家族、ごく普通の少女たちでした。

体操の先生の「1、2、3、4」というテンポの速いかけ声が耳に残ります。映画を終わって席を立って歩きだそうとしたとき、いつもよりも背中をピンと伸ばし、スタスタと規律正しく歩いていることに気づき、驚きました。人は、なんと影響されやすいのでしょう。

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