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 プルートで朝食を

2006年6月

Breakfast on Pluto

プルートで朝食を

  • 監督:ニール・ジョーダン
  • 脚本:ニール・ジョーダン、パトリック・マッケーブ
  • 原作:パトリック・マッケーブ「プルートで朝食を」(ブッカー賞ノミネート)
  • 出演:キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン、スティーブン・レイ、
         ルース・ネッガ
  • 配給:エレファント・ピクチャー

2005年 イギリス映画 127分


大人の身勝手で強いられた辛いはずの人生を、明るく前向きに生きていく少年パトリック。彼は、誰にも言えないある願いをじっと持ち続けていました。その一途さは、観客の涙をさそいます。「こんな辛いことを、子どもに押しつけてはいけない」、そんな思いがわいてくる映画です。それなのに、彼はなんて人間にやさしいのでしょう。彼の心は純粋で、そのやさしさは映画の中だけでなく、見ている者の心をも癒やしてくれます。まさに彼は天使のようです。そう、彼は自分のことを“キトゥン=聖天使”と思っているのです。では、その少年をご紹介しましょう。

物語

少年の名は、パトリック・ブレイデン(キリアン・マーフィ)。1960年代の後半、時代が大きく変わろうとしているとき、北アイルランドの小さな町で生まれたが、母親が育てることを拒否し、教会の司祭館の扉の前に、かごに入れられて置き去りにされた。かごを置いたのは母親で、家政婦として教会で働いていたが、リーアム神父(リーアム・ニーソン)との間に子どもができたことにショックを受け、育てる気はなく、生まれた子を神父におしつけてパトリックから離れて行ったのだ。かごに入れられた乳飲み子を見たリーアム神父は驚き、自分の子どもであることを隠して、信者の家庭に養子に出してしまう。

パトリックは、小学校へ通うようになって、自分が他の男の子と違っていることに気がついた。美しいものが好きで、外では遊ばず、家の中で過ごし、座り方も女性のように座った。お化粧にも興味があり、養母の留守に、彼女の服を身につけ、口紅をぬった。パトリックは、ときどきファンタジーの世界にはいりこんでしまう。そんな彼を理解してくれたのは、黒人の少女チャーリー(ルース・ネッガ)、ダウン症の少年ローレンス(シーマス)、野心的で反抗的な少年アーウィン(ローレンス・キンラン)だった。しかし、アーウィンはIRAの活動に興味を持っており、そのことが原因で、パトリックとの間で口論が絶えなかった。

    *IRA:Irish Republican Army、アイルランド共和国軍
         アイルランド独立闘争を行ったカトリック系の武装組織

高校に入ったパトリックは、家庭科の授業を受けたいと希望した。裁縫の腕もあがり、周囲が理解してくれない分、ますます想像の世界へと入り込み、自分をキトゥン(=聖天使)だと思いこんでいく。そんな姿に怒った養母は、彼が養子であるともらしてしまう。

彼の母親をロンドンで見たと言うことばを耳にしたキトゥンは、母親を捜すためにロンドンへ旅立つことを決心する。危険に満ちた彼の旅の中で、暴走族、ロック歌手、マジシャン、刑事などがキトゥンにひかれていった。キトゥンのやさしさとほほえみが、彼らを癒していたのだ。キトゥンも彼らを大切にした。

はたしてキトゥンは、母親を見つけることができるだろうか。キトゥンに幸せはやってくるのだろうか。

 

キトゥンは言います。「悲しかったから、その悲しみに負けないために、いつも笑っていた」と。親に捨てられたキトゥンですが、彼のほほえみが人々を癒やしていきます。人を恨まず包み込むキトゥンのやさしさが心に残ります。まさに、愛の映画です。

キトゥンのファッションがとてもステキでカッコイイのです。キトゥンを愛らしく演じるキリアン・マーフィは、いやみがなくとてもきれいです。軽快に街を歩くキトゥンのファッション、そして、流れる音楽もお楽しみください。

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