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 ゆれる

2006年6月

ゆれる

  • 原案・脚本・監督:西川美和
  •   
  • 企画:是枝裕和
  •   
  • 音楽:カリフラワーズ
  •   
  • 出演:オダギリ ジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、
         真木よう子、蟹江敬三
  •   
  • 配給:シネカノン

2006年 日本映画 119分

  • 2006年カンヌ国際映画祭監督週間正式出品作品

同じ血が流れ、小さいころから一緒に育った兄弟。相手のことは充分知っていると互いに思っていた。しかし……。ある事件をきっかけに、兄弟の関係が崩れる。相手に対して疑いを持ち出したら、どんどん反対の方へ向かってしまった。兄弟の関係が壊れたとき、人はそれを再び取り戻すことができるでしょうか。どのようにし取り戻していくのでしょうか。

物語

東京でカメラマンとして活躍している早川猛(オダギリ ジョー)は、母の一周忌のために田舎に帰る。法事に遅れた猛を、父の勇(伊武雅刀)はいさめる。兄の稔(香川照之)がいろいろと気を遣って父との間をとりなし、猛を受け入れる。稔は父と二人で暮らし、家業のガソリンスタンドをやりくりしていた。稔は、ガソリンスタンドで働いている智恵子(真木よう子)を大切にしていた。智恵子は猛の幼なじみだった。法事を終えた猛は、智恵子の勤務が終わるのを待って彼女のアパートに入っていった。真夜中に家に帰った猛は、座敷で洗濯物をたたむ兄の背中を見た。

翌日、稔と智恵子は久しぶりに帰郷した猛を誘い、渓谷へやってきた。はしゃいで川に入っていく稔を見ながら、智恵子は猛に「東京に一緒に行って、新しい人生をはじめたい」と告げる。しかし、猛はその答えをはぐらかす。

稔はそのころ、一人山道に入り、吊り橋を渡りはじめていた。智恵子と離れた猛が河原からふと目を上げると、吊り橋にいる稔のそばに智恵子がいた。次の瞬間、稔が智恵子に近づいた。二人は激しく言葉を交わしているのが見えた。もめているようだが、何を言っているのか遠くで聞こえない。次に猛が見た光景は、吊り橋の上に智恵子の姿はなく、ひざまずいて手を川に向けて伸ばしている稔の姿だった。

智恵子が川に転落したことは、事故として片づけられた。しかし、ある日、別のいざこざで警察に連れて行かれた稔は、吊り橋で智恵子を突き落としたと言ってしまう。稔は捕らえられる。

ゆれる

猛は、東京で弁護士をしている父の兄の早川修(蟹江敬三)に、稔の弁護を依頼する。久しぶりに家に帰った伯父。だが、家のことを自分に押しつけて東京へ出て行き、好きにしている兄の修に対し、父の勇は、長い間抱いていた胸の中にうずまく不満をぶつけ、けんかとなってしまう。

同じ思いが、稔にもあった。面会にやってきた猛に対し、稔は「お前はいいよな~」と今までの思いをぶつける。いつも自分をかばってくれたやさしい兄の中にある不満と、法廷での稔のしらじらしい態度を見た猛は怒りにかられたまま、法廷の証言台に立つ。「兄はまじめな人で、あんな嘘をつく人ではなかった。昔の兄を取り戻すために、ほんとうのことを言います……。二人はもみ合いになり、智恵子さんは兄に突き落とされました。」

稔は7年間の刑に服した。ある日、稔の不在の間ガソリンスタンドを守ってくれている洋平(新井浩文)が、猛のもとへやって来る。明日、稔が出所するというのだ。そして、稔を自分たちに返してくれと訴える。

猛は、稔を迎えに行くつもりはなかった。しかし、自分たち兄弟の小さいころを撮影した8ミリテープを見て、ハッとする。そこには、岩をよじのぼろうとしている自分に、手をさしのべて助けてくれている幼い稔の姿があった。猛は、あの吊り橋の上での、稔と智恵子の姿を再び思い出していた。

 

微妙にゆれる人間の心情と、人間の関係性を描いた映画「ゆれる」は、32歳という若さの女性が監督した作品です。人間の複雑な深層心理に迫り、結局は自分の心の変化で、一つの出来事の見方がまったく変わるということを見事に描いています。「わたしはいったい何を見ているのか……」と、自分のことを描いているようで、ちょっと怖くなります。でも、人の心は、ちょっとしたことで、いつも右へ、左へとゆれているのかもしれません。

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