お薦めシネマ
酒井家のしあわせ
2006年12月
- 監督・脚本:呉美保
- 音楽:山崎まさよし
- 出演:森田直幸、友近、鍋本凪々美、ユースケ・サンタマリア
- 配給:ビターズ・エンド
2006年 日本映画 102分
- 文部科学省選定(少年・青年・成人むき)
- サンダンス・NHK国際映像作家賞2005日本部門受賞
物語
関西の小さな町に住む次雄は中学2年生、母と妹と父の4人家族だ。どこにでもいる普通の家族だが、実は、次雄の父は事故で亡くなり、今の父・正和は、母・照美の再婚相手で、妹の光は正和の子という、結構複雑な関係の中で生きている。東京生まれの正和とはなかなか打ち解けず、父親と認めたくない気持ちもあり、相手も、ある距離を置いているようで、お互い顔色を伺っている微妙な関係だ。母は、いろいろと口うるさく、妹は5歳でまだ幼い。次雄は、こんな家庭環境を“うざい”と感じ、何をやってもおもしろくない。部活のサッカーでも、情熱を傾けることができなでいる。
お盆に照美の家へ家族で出かけても、正和だけが、一人浮いている。若くして両親を亡くした正和は、「親や家族の“うざさ”が、いまいちわからない」と言う。照美の家でのわだかまりが、帰ってきても解消せず、なんとなく重い空気がただよう。
そんなある日、正和が荷物をまとめて家を出て行った。照美が言うのは、好きな人ができたという、それも相手は男性だ…と。次雄はますますいろいろなことにむしゃくしゃして親友と喧嘩し、けがをさせてしまう。あやまりに言ったとき、照美の前でつぶやいてしまう。「親を選びたかった」と。驚く照美。友人の母から「子どもが親を選べないように、親も子どもを選べないない!」と言われる。
亡くなった父の実家を訪ねる。叔父が、ぼけ始めた祖父の面倒をみて暮らしていた。そこで次雄は、叔父から亡くなった父と照美のことを聞く。
天神祭の夜、次雄は正和を見かけたが、目があった正和は逃げ出してしまった。次雄は、正和と一緒にいた同僚が「病院に見つかる前に帰ろう」と言っている言葉を耳にする。
友近さんのがとても自然で、そのパワーで家族が言いたいことを言い、いらだつときは反抗し…と、等身大の家族を描いています。前の夫と死別した照美を思いやる正和の愛、素直に表現されないので、なんとも歯がゆくなります。ぶつかり合い、慰め合い、いたわり合う家族。日ごろ気がつかないすごしている家族のあたたかさを味合わせてくれる映画です。