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 サンジャックへの道

2007年2月

Saint Jacques... Ka Mecque

サンジャックへの道

  • 監督・脚本:コリーヌ・セロー
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  • 出演:ミュリエル・ロバン、アルチェス・ド・バンゲルン、
       ジャン=ピエール・ダルッサン、マリー・ピュネル、
       パスカル・レジティミュス、マリー・ビュネル、
       マリー・クレメール、ニコラ・カザレ、エメン・サイディ
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  • 配給:クレストインターナショナル

22005年 フランス映画 112分

  • 2006年 フランス映画祭上映作品

世界でも有名な巡礼の道「サンティアゴ・デ・コンポステッラ」。9世紀にイエスの弟子である12使徒の中の一人、聖ヤコブのお墓が見つかり、その場所に立てられた教会が聖ヤコブ教会です。「サンティアゴ」は、スペイン語で聖ヤコブの意味。フランス語では「サン・ジャック」となります。人々は、祈りと願い、また感謝を込めて、聖ヤコブ教会に向かう道を歩くようになりました。巡礼の道には、巡礼者のための宿泊所が設けられており、現在は、巡礼ノートにスタンプを押してもらい、歩んだことを記録していきます。道中は、ホタテ貝の印が、巡礼者たちの行く手を示します。沿道の人々も、巡礼者をやさしく迎えてくれます。

フランスから聖ヤコブ教会へ向かう道は4つのルートがあります。今回コースとなるのは、南から2つ目のコースで、フランス南東部の街、ル・ピュイを出発し、ピレネー山脈を越えて西へ西へと向かう1500キロ、約2か月の道のりです。4つのコースの中では、一番景色がきれいだとか……。フランス側の巡礼路とその道にあるすべての建物も、1998年に世界遺産に登録されました。

物語

3人の兄弟がいました。会社経営と家庭内のストレスで、数種類の薬が手放せない兄のピエール(アルチェス・ド・バンゲルン)、頑固できつい教師のクララ(ミュリエル・ロバン)、職がなく酒浸りで家族に逃げられお金のない弟のクロード(ジャン=ピエール・ダルッサン)。彼らはまったくつきあいがなく、ののしり合っています。3人は、ある日弁護士から呼ばれ、ひさしぶりに顔を合わせます。母親の遺言で、3人がそろってサンティアゴ・デ・コンポステッラの道を歩いたら、莫大が遺産を受け継ぐことができるという話でした。信仰と関係のない生き方をしている彼らは、初めはこの話をバカにしていたのですが、結局は巡礼に向かうことになります。

サンジャックへの道

巡礼には、ガイドのギイ(パスカル・レジティミュス)、3人の他に、ガイドが募集した巡礼ツアーの人々が加わります。楽しい山歩きと思って参加した女の子のエルザ(フロール・ヴァニエ=モーロ)とカミーユ(マリー・クレメール)、カミーユを追ってきたアラブ系移民の少年サイッド(ニコラ・カザレ)、従兄弟のサイッドに、メッカへの巡礼だとだまされて参加したラムジイ(エメン・サイディ)、いつもスカーフで頭を覆っている静かな女性マチルド(マリー・ビュネル)。こうして、年齢も境遇も動機もまったく違う9人の長い旅がはじまりました。

巡礼のはじめは、坂道です。大きな荷物をしょって歩くきつい登り道で、さっそく、兄弟の大げんかが始まりました。道の厳しさに任せて、不満がたらたらと出ます。日常生活をそのままリュックの中につめこんでやってきたピエールは、さまざまなものが重くて歩くことができません。やがて、高価で便利なものであっても捨てるようになります。残るのは最低限必要なものだけ。荷物が少なくなっていくように、心の中のいろいろなしがらみが取り去られていきます。ただただ歩くだけの毎日。しかし、歩き始めの辛い時期を通り過ぎると、歩くことによって何かが変わっていきます。食事を分かち合い、宿泊所でともに過ごし、互いのことを知り合うようになると、彼らへの思いやり生まれていきます。やがて、彼らは一つの家族のような心の一致を感じていきます。

 

サンティアゴ・デ・コンポステッラの巡礼は、カトリック信者なら、いつかは歩いてみたいあこがれの道です。ここに登場する9人には、純粋な意味での“巡礼”巡礼の心はありませんでした。そういう彼らがやっと到着した聖ヤコブ教会。そこには、彼らのような巡礼者がたくさん集まっていました。「この道を歩きとおすことができた!」この感激と興奮は、彼らの心に何を生むのでしょうか。

一つの最終目的地に向かってのびている道を、ひたすら歩み続ける巡礼の旅。それは、まさしく人生の旅なのでしょう。何回でも見て、味わいを深めたい、そんな映画です。

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