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お薦めシネマ
明日、君がいない 2:37
2007年4月
- 監督・脚本・共同編集・プロデューサー:ムーラリ・K・タルリ
- 撮影監督・共同編集・プロデューサー:ニック・マシューズ
- 音楽デザイン:レスリー・シャッツ
- 出演:テレサ・パルマー、フランク・スウィート、サム・ハリス、
チャールズ・ベアード、ジョエル・マッケンジー、
マルニ・スパイレイン、クレメンティーヌ・メラー - 配給:シネカノン
2006年 オーストラリア映画 99分
- 2006年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品
- 2006年トロント国際映画祭正式出品
- 2006年メルボルン国際映画祭正式出品
- 第19回東京国際映画祭コンペティション公式出品
現代の高校生が持っている悩みや問題を追った、ドキュメンタリー映画のように深刻な迫力がある作品です。友人を自殺で失い、自らも自殺しかけたという体験をもとに、ムラーリ監督(1984生)が19歳のときに製作しました。独学で映画制作を学び、シナリオの第1稿は、37時間で書き上げ、少ない予算でも、その10倍の経費をかけたように見える映画を目指しました。そんな、すごいエネルギーのかかった作品で、実際、エネルギーを感じます。
7人の高校生を演じているのは、演劇を学んでいる人はいるものの、ほとんどが演技経験のない若者たちです。監督も含めて彼らは、同じ年代でなければ描くことのできない心の中の苦悶を、素直にしかし深く描き出しました。「だれにも言えない。けっして言わない」という彼らの告白は迫力があります。2006年度カンヌ国際映画祭「ある視点」の部門で上映され、20分間も拍手がなりやまなかったという作品です。
日本でも、いじめによる自殺が後を絶ちませんが、親に気を遣って学校の状況を言えなかったり、仕事で親が家にいないために打ち明けることができなかったりで、彼らを守り育てていく大人たちに、強烈なメッセージを与えています。
原題の「2:37」は、一人の高校生が自殺した時刻です。映画では、最後までだれが自殺したのかはわかりません。登場するのは7名の高校生たち。彼らが朝、登校するところから、だれかが自らのいのちを断つ2:37までの一人ひとりの行動を追っていきます。
いつものようにはじまった一日。カメラは、一人ひとりを追っていきます。そこに彼らへのインタビューが入っていきます。家族関係や、自分の今までの歩み、性格、将来の夢などが語られていきます。テンポの速いカメラワークが、臨場感を出していきます。見る者は、彼らのとなりにいるかのように感じていきます。
一人ひとりを追っていきながら、次第に彼らの関わりが見えてきます。そして、みな孤独であることも……。
ときどき出てくる、太陽の光をあびた葉っぱの揺らぎが、不安定な若者の心を表現しています。どの高校生も、大きな、時には、大人でも背負い切れないような苦しみを抱えていました。この現実を、両親や家族、学校の先生たちだけでなく、社会の大人たちがしっかりと認識していく必要性を感じました。この映画をとおして若い監督がつきつけているメッセージを、しっかりと受け止めたいと思います。映画の内容とともに、ムラーリ監督の描き方を、ぜひご覧ください。