お薦めシネマ
日本の青空
2007年5月
- 監督:大澤豊
- 原作・脚本:池田太郎
- 監修:星野安三郎
- 出演:高橋和也、藤谷美紀、田丸麻紀、加藤剛
- ナレーション:山本圭
- 企画・製作:「日本の青空」製作委員会・有限会社インディーズ
2006年 日本映画 123分
今年は、「日本国憲法」施行60周年にあたります。この期間、日本は戦争をすることなく歩んでくることができました。しかし、これからもそうだとは、言えない状況になっています。安倍内閣は、着々と改憲に向けて歩み、自衛隊が公に「軍」となる危機感を感じます。改憲の理由の一つとしてあげられるのが、「日本国憲法」は、米国の押しつけである。自分たちの憲法を……という動きです。
「日本の青空」は、平和憲法を守りたい、「日本国憲法」ができたいきさつを正しく知ってもらい、その上で改憲について考えてもらいたい……という映画人たちの厚い思いから映画化された作品です。
物語
憲法学者・鈴木安蔵(高橋和也)は、1904年、福島県に生まれました。京都帝大文学部哲学科に入りますが、社会の矛盾に対抗するため経済学部に転部します。在学中に「治安維持法違反第一号「学連事件」で検挙され、退学します。学生として一緒に活動していた俊子(藤谷美紀)と結婚し、2女の父となります。。
戦争が終わると、待っていたかのように知識人たちが民主主義を目指し、大日本帝国憲法に変わる憲法を作る動きが起きました。安蔵は、高野岩三郎(加藤剛)、杉森孝次郎、森戸辰男、室伏高信、岩淵辰雄、馬場恒吾らとともに「憲法研究会」に参加し、新しい時代にふさわしい憲法の草案作りに徹します。メンバーは、いろいろな国の憲法を研究し、天皇について表現、戦争の放棄、思想の自由、女性の地位についてなど、苦労し対話を重ね煮詰めていきました。
1946年12月26日、「憲法研究会」は憲法草案をGHQと日本政府に提出し、草案の内容は各新聞で大きく取り上げられました。その後、日本政府をはじめ、いくつかのグループが憲法草案が提出されましたが、安蔵たちの提出した草案は、民主的であるとGHQから高く評価され、GHQの憲法草案に大きな影響を与えました。こうして、1946年11月3日、「日本国憲法」が公布され、翌年の1947年5月3日に施行されました。
GHQと話し合う内閣終戦事務局次長の
白州次郎(中央)、右端はベアテ・シロタ
戦争が終わると、待っていたかのように知識人たちが民主主義を目指し、大日本帝国憲法に変わる憲法を作る動きが起きました。安蔵は、高野岩三郎(加藤剛)、杉森孝次郎、森戸辰男、室伏高信、岩淵辰雄、馬場恒吾らとともに「憲法研究会」に参加し、新しい時代にふさわしい憲法の草案作りに徹します。メンバーは、いろいろな国の憲法を研究し、天皇について表現、戦争の放棄、思想の自由、女性の地位についてなど、苦労し対話を重ね煮詰めていきました。
日本国憲法では、女性の地位が大きくとりあげられています。その背景には、安蔵の妻・俊子とGHQの職員として憲法草案に参加していたベアテ・シロタの厚い思いがありました。
映画は、ある雑誌で「憲法特集」をすることになり、そのために企画を考えている中で鈴木安蔵の存在を知った新人女性編集者・中山沙也可(田丸麻紀)が、「日本国憲法」成立に深く関わった鈴木安蔵という憲法学者がいたことをつきとめ、彼をとおして日本国憲法の成立のいきさつを知っていくという形をとっています。女性記者と同じようにして、映画を見る者も少しずつ戦後の日本に入っていきます。
戦争で苦しみ、男性社会の中での女性の存在の低さにもがいていた一般市民や女性たち。当時の人々の視点に立ったとき、「日本国憲法」の公布は、明るい社会を約束されたような大きな喜びだったことでしょう。彼らの思いを忘れないためにも、当時のことを知ることは大切だと思います。今の日本を築いてくれた安蔵たちの思いを、忘れてはいけないと思いました。