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 魔笛

2007年7月

The Magic Flute

  • 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
  • 監督・脚本:ケネス・ブラナー
  • 脚色:スティーブ・フライ
  • 音楽監督・指揮:ジェイムズ・コンロン
  • 演奏:ヨーロッパ室内管弦楽団
  • 出演:ジョゼフ・ガイナー、エイミー・カーソン、
        リューボフ・ペトロヴァ、ベン・デイヴィス、ルネ・パーペ、
        ユーリィ・イツコーフ、ダーリヤ・レスニコーワ、ニコライ・レウトフ
  • 配給:東芝エンタテインメント

2006年 イギリス映画 2時間19分


有名なオペラ「魔笛」が、時代を第一次世界大戦のイギリスに移して、すばらしい歌唱力とカメラワーク、CG(コンピュータグラフィックス)技術が結集してできた、壮大な作品となりました。

物語は、愛娘を暗黒卿に連れ去られた“夜の女王”(リューボフ・ペトロヴァ)が、娘を取りもどすために美しい青年を選び、彼がいろいろな試練に遭いながら敵陣に乗り込み、助け出して二人は結ばれるというお話なのですが、ちょっとひねってあるのが、彼の依頼者である夜の女王の敵である暗黒卿ザラスト(ルネ・パーペ)が、実は人民から慕われて、平和を求めているよき指導者であり、娘のパミーナも尊敬している人であるということに青年が気づき、反対に夜の女王の攻撃にたち向かっていくというところです。

魔笛
タミーナとパパゲーナを囲む“夜の女王”の3人の使者

“夜の女王”から青年に遣わされる3人の従軍看護婦のハーモニー、彼の歩みを助ける3人の少年たちのボーイソプラノ、そして群衆の歌声は迫力があります。さらに、画面転換の早さ、衣装などの色彩の美しさ、広大な風景は、まるでアニメの世界を見ているようです。そこから聞こえてくるアリアは、出演している歌手のレベルの高さに裏打ちされていて、聞き終わった後に、オペラの舞台を見た後のような、ステージと観客が同じ時を過ごしたという一体感を味わいます。

一目見たときから惹(ひ)かれ合う青年タミーナ(ジョゼフ・ガイナー)と娘パミーナ(エイミー・カーソン)ですが、二人が結ばれるまで、タミーナと彼に同伴するパパゲーナ(ベン・デイヴィス)にはいろいろな試練が課せられます。

魔笛
パミーナとタミーナ


 

オペラは難しくて好きではなかったのですが、この「魔笛」に主演している夜の女王役のリューボフ・ペトロヴァと、娘役のエイミー・カーソンのソプラノは、のびのある高音と艶がある声質の持ち主でで、その声にうっとりと聞き惚れてしまいました。そして「美しい歌声は、心をいやしてくれる」ということを実感しました。とろけてしまいそうで、すばらしいのひと言です。いつまでも聞いていたい心地よい声でした。

さてこの歌劇、重要なメッセージが打ち出されています。「平和」です。ザラストたちが平和を求めて歌うバックに、亡くなった兵士の墓碑が映し出されます。そこには、あらゆる国の言葉で兵士の名が刻まれているのですが、日本人の名もありました。「魔笛」は、タミーナとパミーナのラブストーリーだけではなく、平和を求める映画だったのです。

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