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 包帯クラブ

2007年9月

  • 監督:堤幸彦
  • 脚本:森下佳子
  • 原作:天童荒太『包帯クラブ』(筑摩書房刊)
  • 音楽:ハンバートハンバート
  • 出演:柳楽優弥、石原さとみ、貫地谷しほり、 田中圭、関めぐみ、佐藤千亜妃
  • 配給:東映

2007年 日本映画 118分

最初から単行本ではなく、手にしやすい新書版の形で出版された天童荒太氏の『包帯クラブ』が、さっそく映画化されました。天童荒太氏は『孤独の歌声』『永遠の仔』『家族狩り』で、変わっていく大人の社会の中で傷ついている子どもや若者たちを、彼らの視点から描くことに定評のある作家です。この原作をもとに、大人には見えない子どもたちの世界を堤監督がどう描くのか、また、若手実力派の俳優として活躍している柳楽優弥、石原さとみ、貫地谷しほりらを集めた作品としても、公開前から話題になっていました。その期待は裏切られることなく、心にしみる映画に仕上がりました。

物語

高崎市に住む高校生3年生のワラ(石原さとみ)は、母と弟の3人暮らし。両親は離婚し、母親は弁当工場で働いてワラと弟を養っているが、疲れて帰宅するとすぐ寝てしまい、子どもたちと話す時間もない。手が滑ってナイフで手首を切ったワラは、治療を受けに行った病院の屋上で、入院患者のディノ(柳楽優弥)というちょっと変わった高校生から声をかけられる。下手な関西弁を話すディノは、ワラの手首の包帯を見て「リスカ」と決めつける。先入観で判断されることに抵抗したワラの気持ちに、ディノは意外と素直に謝ってくれた。風でほどけたワラの包帯を、ディノは屋上のフェンスに巻いた。「手当や」と応えるディノの言葉に、ワラは自分の疲れ傷ついた心を癒してもらった気がした。


(C)2007『包帯クラブ』製作委員会

親友タンシオ(貫地谷しほり)の失恋話を聞いたワラは、タンシオのために思い出の場所に包帯を巻いてみた。このことがきっかけになり「包帯クラブ」がはじまった。傷を受けた人々のために、傷つけられた場所に包帯を巻いて癒してあげるのだ。タンシオのメル友で浪人生のギモ(田中圭)が加わり、「包帯クラブ」のサイトが立ち上がった。子どもから大人まで、包帯を巻いてほしいさまざまな人から依頼が寄せられ、ワラたちはその場所に行って包帯を巻き、それをデジカメで撮影し画像をアップして依頼者に知らせた。ワラとディノたちの、人々を癒す「包帯クラブ」の活動は広がっていった。

ワラは小学校のとき、タンシオと一緒に「方言クラブ」を作っていたが、その仲間だったリスキ(佐藤千亜妃)とテンポ(関めぐみ)のことが気になり、クラブに誘うことにする。飲食店で働いているリスキは喜んで参加してくれたが、いい暮らしをしていい高校に通っているテンポには、「バカみたい」と冷たくあしらわれてしまう。

そんなとき、「あなたたちのやっていることは偽善だ」という投書がサイトに送られた。また、包帯を巻いている活動が警察沙汰になり学校で問題となってしまう。


(C)2007『包帯クラブ』製作委員会

 

是枝監督の映画「だれも知らない」で、日本人初・史上最年少でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞して話題になった柳楽優弥君が、たくましくなって主人公のディノを野生的にしかし繊細に演じています。つっぱっているがやさしい石原さとみ演ずるワラともバランスがよくなかなか存在感がありました。堤監督は、若い6人の心の動きを繊細に描いています。

人に見える表現と彼らの内側の心は違っていても、仲間にはちゃんと伝わっています。自分一人では癒すことのできなかった心の傷を、仲間がいてくれることで乗り越えることができる、そんな心のやさしさをじっくり見つめさせてくれる作品です「包帯クラブ」のやさしさが、今の時代には必要です。このやさしさが、映画を見る人から周囲の人へと伝わっていけば、この世の中、ちょっとは変わるのではないでしょうか。

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