<

home>シスターのお薦め>お薦めシネマ>サルバドールの朝

お薦めシネマ

バックナンバー

 サルバドールの朝

2007年10月

ITALIANETZ

サルバドールの朝

  • 監督:マヌエル・ウエルガ
  • 脚本:ルイス・アルカラーソ
  • 出演:ダニエル・ブリュール、トリスタン・ウヨア、
          レオノール・ワトリング、
          レオナルド・スバラグリア、
          イングリッド・ルビオ
  • 配給:CKエンタテインメント

2006年 スペイン映画 135分

  • 第59回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品作品

1970年代の独裁政権末期の、スペインで起きた事件をもとに映画化された作品です。殺人犯として死刑を宣告された青年サルバドールを軸に、さまざまな立場の登場人物それぞれの心情が鮮やかに描かれています。正義を貫き、人間の尊厳を守るということはいかに難しいことか? 極限状態に置かれたとき、人間としてどういう行動をとったらいいの……と考えさせられる作品です。

物語

サルバドール(ダニエル・ブリュール)は、1948年、6人兄弟の3番目としてバルセロナで生まれた。父親はカタルーニャの政治運動家で、死刑の宣告を受けながらも恩赦で釈放された経験を持っていた。手に負えない生徒として学校を追い出されたサルバドールは16歳から働いていたが、友人たちとフランコ政権に抵抗するグループを作り、労働者階級の解放を目指して戦う決意をしていた。しかし、活動資金は乏しく、銀行強盗をしては生活費を得ていた。やがて彼らは犯罪者として追われ、家族とも別れて地下にもぐって暮らしていた。

ある日、仲間と会うために向かったカフェで、見張っていた刑事たちとの間で激しい銃撃戦が起き、敵味方が入り交じった中で、サルバドールの撃った弾が、一人の若い警官に当たってしまう。またサルバドールも瀕死の重傷を負い、病院に担ぎ込まれた。

サルバドールは一命を取り留めるが、警官は亡くなりサルバドールは彼を撃った犯人として逮捕される。サルバドールの弁護に当たったアラウ(トリスタン・ウヨア)は、サルバドールに死に当たる罪を見いだせず、また、亡くなった警官の体からは、サルバドールが撃ったのとは別の弾が見つかったという情報を得るが、警察はこの事実を抹殺し、サルバドールは死刑を宣告される。それも、もっとも残酷な処刑方法と言われている「ガローテ」と呼ばれる鉄環(てっかん)絞首刑だった。

なんとかしてサルバドールを救いたいと願うサルバドールの姉妹と弁護士アラウが、世論を動かし極刑回避のため働くが、おり悪くフランコ首相暗殺の事件が起こる。反政府組織への報復のため、みせしめとしてサルバドールの死刑がすすめられていく。

絶望に沈む父親、最後まで希望を捨てず恩赦の電報を首相に送る姉妹たち、同僚を失った恨みでサルバドールを見つめる警察官たち、久しぶりの「ガローテ」刑に、いやなことははやく終わらせたいと鉄環を組み立てていく処刑人、さまざまな思いが錯綜し、人々の目がサルバドールに向けられていく。そして、1974 年3月2日の朝がやってきた。

 

ゆがんだ社会の中で、サルバドールは、真実を求めるための十分な裁判を受けることもなく、力を持っている人々の悪意を一身に受け、まるで人々の恨みのはけ口のように死刑にされていきます。サルバドールが課せられた運命は、今も世界のどこか起こっており、未来の日本にもやってくる可能性があります。

「サルバドールの朝」をとおして、一人ひとりが大切にされる社会を作り守るために、人間としての善の感性のバランスを保ち続ける必要を感じました。

▲ページのトップへ