お薦めシネマ
アヴリルの恋
2007年11月
Avril
- 監督・脚本:ジェラール・ユスターシュ=マチュー
- 出演:ソフィー・カントン、ミュウ=ミュウ、ニコラ・ドゥヴォシェル、
クレマン・シボニー、リシュ-・ヴァル、ジュヌヴィエーヴ・カジル - 配給:シネカノン
2006年 フランス 96分
フランスの山間にひっそりと建っている古い修道院。10人ほどの修道女たちが、静かに祈りの生活を送っている。その中に、修道女になるための修行をしていることを示す白いベールをかぶった若いシスターがいた。彼女の名はアヴリル(ソフィー・カントン)。赤ん坊のときに、修道院の前に捨てられていた彼女は、シスターたちに育てられ、修道院の中だけで暮らしてきた。絵を描くことが好きで、個室に入り隠れるようにして描いていた。画用紙の入手も困難なアヴリルは、祈りの本のページを白く塗って使っていた。そんなアヴリルを知っているシスターベルナデット(ミュウ=ミュウ)は、修道院を出て絵の勉強をするようにと勧めた。
ある日、院長(ジュヌヴィエーヴ・カジル)は、祈りの後全員を集め、シスターアヴリルに誓願を立てる許可を与えると告げる。その前に2週間、小さな聖堂にこもるよう命ずる。
神のものとなる日を願い続けていたアヴリルの目は輝いた。私物を土に埋めて聖堂に入ったアヴリルに、聖堂の壁をきれいにするようにとバケツが与えられた。それをとおして心を清めるのだ。入口には鍵が掛けられた。翌日、目覚めたアヴリルは、早速壁の掃除にとりかかった。しかし、食事を運んできたシスターベルナデットは、ドア越しに驚くことを告げた。「あなたといっしょに、男の子が捨てられていたの。その子は、孤児院に引き取られていった。この2週間の間に彼を探しなさい。」シスターベルナデットは、入口の鍵をあけて去っていった。シスターベルナデットが再び聖堂に行ってみると、アヴリルの姿はなかった。
山道でお腹がすいて立ち上がることができないアヴリルは、通りかかった一台のトラックに助けられた。画材を配達する仕事をしている青年ピエール(ニコラ・ドゥヴォシェル)は、孤児院に行ってくれた。さらに、アヴリルの兄が預けられたという里親を訪ねると、彼は恋人と南フランスにバカンスに言っているという。兄が戻ってくるのを待とうとするアヴリルに、ピエールは一緒に南フランスまで行こうと誘う。
ピエールの車に乗りながら、アヴリルは新しい世界に触れていく。やがて二人は太陽がまぶしく輝き、海風が吹きつける地中海の海岸に着いた。ピエールに励まされ、アヴリルは勇気を出して兄と恋人がいる小屋に近づく。中をのぞくと……。
明るい太陽、絶えず吹く風、打ち寄せる波、レコードから流れる軽快な音楽、釣った魚を焼いた食事、手作りの白いキャンパスと顔料……。アヴリルはピエール、兄とその恋人との日々を過ごしながら、心も体も解放され新しい世界を体験していきます。小さなノートに描いていたアヴリルの絵は、彼女が体験する新しい世界にそって、またピエールの助けによって大きく変わっていきます。
小さいときは親の保護の元で過ごしますが、それは親が描く制限のある世界の中で生きることでもあります。しかし、人はいつかアヴリルのように、親の保護から離れ、自分の力で世界に出て行くときを迎えます。「アヴリルの恋」は、大人への道のすばらしさを示しているように思いました。
映画は主観で自由にとらえていいのでしょうけれど、それでも、なぜ修道院を舞台にしたのか、なぜ主人公がシスターなのかは、監督に聞いてみたいところです。