お薦めシネマ
再会の街で
2002年12月
Reign Over Me
- 監督・脚本:マイク・バインダー
- 音楽:ロルフ・ケント
- 出演:アダム・サンドラー、ドン・チードル、リヴ・タイラー、
ジェイダ・ピンケット=スミス、ドナルド・サザーランド - 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2007年 アメリカ映画 2時間4分
- 第20回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品作品
ニューヨークで歯科医として活躍し、妻・ジャニーン(ジェイダ・ピンケット=スミス)と二人の娘との生活も安定しており、幸せな人生を送っているアラン(ドン・チードル)。しかし、仕事にも家庭生活にも、どこか満たされないものを感じていた。
ある日、街で大学時代のルームメイトだったチャーリー(アダム・サンドラー)を見かけた。声をかけるが、声は届かなかったようだ。原付スクーターに乗ったチャーリーは、すぐに見えなくなってしまった。チャーリーは、9.11で妻子を亡くし、その後消息が分からなくなっていたのだ。今の彼はぼさぼさの頭で、歯科医をしていている感じではなかった。
その後、再び街でチャーリーと出会ったアランはチャーリーに話しかける。しかし彼はアランのことを覚えていないと言う。それどころか、目はうつろで落ち着きがなく、言葉もはっきりしなかった。チャーリーのアパートを訪れたアランは、さらに驚く。物が散乱した部屋には大きなモニターがあり、彼はテレビゲームに夢中になっているのだ。台所は改装中のようで、部屋には古いレコードが散在していた。確かに彼は変だ。チャーリーは亡くなった妻の両親を極端に避け、家族の話に触れようとすると怒り出し、荒れた態度になった。
人との関係を閉ざし、孤独の中で生きているチャーリーを心配したアランは、同じビルで開業している精神科医のアンジェラに相談する。なんとか、元のチャーリーになってもらいたいと思うアランに、次第にチャーリーと過ごす時間が増えていった。家庭よりもチャーリーを大切にするようなアランの姿に、ジャニーンの不満が強くなる。チャーリーは夜中もかまわずアランを誘い出し、スクーターに乗って夜のニューヨークの街を走り続けた。
チャーリーをなんとか精神科医のもとに連れていこうとするアランなのだが、チャーリーは敏感に反応し、怒りを発して言った。「放っておいてくれ。なぜ、みんな、思い出せというのか!」
一度に愛する家族を亡くしてしまった人の心の傷の深さは、計り知れないものがあります。アランと出会ったことで、今までだれとも関わらなかったチャーリーは、少しずつ固く閉じた扉を開いていきます。そんな彼の口からこぼれる言葉から、次第に心の中で何が起こっているのかが分かってきます。チャーリーを助けるためにと思って動いていたアランが、実は、チャーリーから癒されていることに気づいていきます。
再び築いたアランとの信頼関係の中で、チャーリーが辛い自分の状態を語っていくそのとき、この映画のすごさが分かります。