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 歓喜の歌

2008年1月

歓喜の歌

  • 監督・脚本:松岡錠司
  • 原作:立川志の輔(新作落語「歓喜の歌」)
  • 音楽:岩代太郎
  • 出演:小林薫、安田成美、伊藤淳史、由紀さおり、浅田美代子
  • 配給:シネカノン

2008年 日本映画 112分


年末になると、日本各地で、アマチュアからプロまでがベートーベンの「第九」を歌う姿は、年末行事としてすっかり日本に定着し、歌う方も聴く方も楽しみなコンサートになっています。ママさんコーラスも日本各地で活発に行われ、全国大会も盛大で、こちらも趣味の域を超えた本格的なグループ活動になっています。このママさんコーラスのメンバーと、彼女たちがコンサートをする会場の文化会館の職員の奮闘をコミカルに描いたもので、立川志の輔さんが創作した新作落語「歓喜の歌」を映画化した作品です。

物語

どこにでもありそうな地方都市のみたま町。この町にある2つのママさんコーラスグループが、それぞれ大晦日に、みたま文化会館のホールを予約しました。12月30日、確認の電話を受けた主任が似たような名称だったことから両者を同じ団体だと思いこみ、ダブルブッキングになっていることが明らかになります。

「みたまレディースコーラス」は、毎年大晦日にコンサートを開催しており、市長夫人もメンバーとして入っていて、趣味の時間をゆったりと持てるハイクラスの奥様たちのグループです。もう一つの「みたま町コーラスガールズ」は、まだできたばかり。今回はじめてコンサートを開くおばちゃんたちのグループです。彼女たちは、パートで働いたり、家族で家業をやっている人々で、忙しい仕事の中で時間をやりくりして練習しているグループです。

いえ実はこの電話を、もし若い職員の加藤(伊藤淳史)が受けていたら、間違うことはなかったでしょう。しかし、のらりくらりと仕事をしている主任の飯塚(小林薫)が受けたことが悲劇のはじまりです。さらに、「何とかなるだろう。どうせ暇つぶしのオバサンたちのコーラスなんだから……」という安易な考えが、飯塚を窮地に陥れます。ホール料金を無料にして時間を変更してもらおうと思いましたが、どちらも一歩もゆずりません。「みたま町コーラスガールズ」のリーダー五十嵐(安田成美)が、一緒に歌えないかと提案しますが、「みたまレディースコーラス」のリーダー松尾(由紀さおり)は、両方の招待客をホールに収容しきれないと、この案を退けます。

困り果てた飯塚にさらに困難がやってきます。ママさんコーラスグループの対応に時間を取られた飯塚は、別居中の妻(浅田美代子)との関係を修復するために用意したディナーに遅れてしまい、彼女を怒らせてしまいます。そこに携帯電話が鳴ります。いきつけの飲み屋で入れ込んだ外国人ホステスの情夫から、ツケの支払いを催促してきたのでした。

何もかもうまくいかず頭を抱える飯塚は、昼食に注文したラーメンとタンメンが間違えて届けられ、運んできたアルバイトに今までのうっぷんをぶつけて怒鳴ってしまいます。文句を言いながら食べていると、お詫びの餃子が届けられます。母親から言われて餃子を持ってきた女の子から、ラーメン店と母親の話を聞いた飯塚は、「オレには、この餃子が足りなかったのか!」と悟ります。飯塚の中で、何かが変わりはじめました。

歓喜の歌


 

官と民との関係をユーモラスに描いた志の輔さんの落語は、庶民の喜怒哀楽をみごとに描いています。映画の最後に映し出されるコンサートの場面は圧巻で、本格的な歌声を披露します。多くの人と醸し出すハーモニーのすばらしさ、その音色は、コーラスのために協力してくれる職場の同僚、家族とのハーモニーから出るものでした。みんなを幸せにする歌。歌うことは、彼女たちの生きる力となっているのでした。

ステージには、由紀さおりだけでなく、お姉さんの安田祥子がコーラスのメンバーとして登場します。また、どんなことにも明るく立ち向かっていく五十嵐を魅力的に演じている安田成美の指揮者姿もステキです。人々が一つのことに力を合わせることのすばらしさ、歌うことの楽しさがしみじみと伝わってくる感動の作品です。

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