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 潜水服は蝶の夢を見る

2008年2月

LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON

潜水服は蝶の夢を見る

  • 監督:ジュリアン・シュナーベル
  • 原作:ジャン=ドミニク・ボビー
         「潜水服は蝶の夢を見る」(講談社刊)
  • 脚本:ロナルド・ハーウッド
  • 出演:マチュー・アマルリック 、エマニュエル・セニエ、
        マリー=ジョゼ・クローズ
  • 配給:アスミック・エース

2007年 フランス=アメリカ映画 1時間52分

  • 2007年第60回カンヌ国際映画祭監督賞、高等技術賞受賞
  • 2008年第65回ゴールデン・グローブ賞監督賞、脚本賞、外国語映画賞ノミネート
  • 2008年第80回アカデミー賞で監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞にノミネート
  • 第64回ヴェネチア国際映画祭グッチ・グループ賞受賞
     

世界各地の映画祭で、それはそれはたくさんのかぞえきれないほどの賞をいただいた作品です。2007年のカンヌ国際映画祭で監督賞、高等技術賞を受賞し、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞でもノミネートされ、世界各地の27の映画賞45部門で受賞またはノミネートされています。衝撃的な内容です。原作は、フランスの世界的なファッション雑誌「ELLE」の編集長として活躍したジャン=ドミニク・ボビー(通称ジャン=ドー)が書いた自伝の映画化です。

有名雑誌の編集長として人生の絶頂期にいたジャン=ドーが、別れた子どもと過ごすためにスポーツカーで出かけ、運転中、突然脳卒中で倒れ、数日の昏睡の後、意識を取りもどしたところから映画ははじまります。

物語

目を開けたジャン=ドー(マチュー・アマルリック)は、ぼんやりとした景色に自分のいる場所が把握できず、とまどいます。次第に視界がはっきりしていく中で、自分が病室に寝かされているらしいことが分かってきます。声をかけてくれる医師や看護師に対して、返事をしたり、手を動かしたりしたいのですが、伝わりません。手や足ばかりでなく全身どこも動かないのです。声も発することができません。こちらの意志を伝えるすべがないのです。動くのは目だけでした。

やがて医師のことばから、全身が麻痺しているロック・インシンドローム(閉じ込め症候群)だと知ります。重く水圧のかかった海の底にいるようで、身体がまるで潜水服に閉じ込められているみたいだと感じます。ベッドの周囲に来る人にいろいろなことを感じ、伝えたいのに分かってもらえない……、ジャン=ドーは暗くなっていきます。

数日後、言語療法士のアンリエット(マリー=ジョゼ・クローズ)がやってきます。彼女は、唯一動く左目を使って、ことばを伝達する訓練をはじめるのです。「yes」はまばたき1回、「no」はまばたき2回、アルファベットを一つずつ言っていき、単語を完成させていくのです。最初はなかなかうまくいかないのですが、やっと一つの文章ができました。ジャン=ドーが伝えた最初のことば、それは「死にたい」でした。

何もできないジャン=ドーが、他者とコミュニケーションできる手段を得たことに喜びを感じていたアンリエットは、怒りをぶちまけ、病室から出て行ってしまいました。

潜水服は蝶の夢を見る

周囲の人々が自分のために親身になってくれていることを知ったジャン=ドーは、「自由になるものが3つある。左目と記憶と想像力だ! これで潜水服から出ることができる。想像力でどこへでも行ける」と、次第に生きる気力を取りもどしていきます。

潜水服は蝶の夢を見る

やがて、妻(エマニュエル・セニエ)や愛する3人の子どもたちとも時を過ごすことができるようになります。ジャン=ドーは、倒れる前に、自分の半生の本を出版する契約を交わしていたことを思い出し、執筆に挑戦します。高齢の父親とのこと、恋人とのこと、妻とのさめた関係、愛する子どもたちのこと、気の置けない友人たち、今まで見えなかったことが見えてきます。そして、彼は倒れた日のことを思い出すのでした。

潜水服は蝶の夢を見る

 

 

目だけで演技するマチュー・アマルリックは、本当に大変だったことでしょう。しかし、人の手を借りなければ生きることができない状態になって、彼は人生について考える時を過ごします。編集長だったときの彼の活躍に好意を持っていた病院の女性たちは、彼が生きていくことに愛を持って協力します。人のするままに自分を委ねるしかなくなったとき、人はどう生きていくのか。人と人との関わりを考えさせられる映画です。

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